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愛したモノ達は、僕を勝手に語り始めるという話


モノはある意味、自己が投影された、物言わぬもう一人の自分。
そう思っている。

唐突ですが、そんなテーマで少し話してみようと思う。

僕の過去のブログやインスタを見てくれている方はよくご存じかと思うが、おそらく人並み以上に、色々なモノを手に入れ、使い込み、偏愛して、人生を大いにムダに過ごしてきた自負がある。

僕はモノそのものの、ストーリー、込められたクラフトマンシップ、佇まい、工業製品としての完成度、そんなものが大好物だったりする。
そして、そのモノは所有者のイメージを勝手に作り上げてくれる。という副次的な効果も少しだけ人生に活用してきたのかもしれない、と最近ふと思ったりする。今風に言うと、セルフブランディングとでも呼ぶのだろうか。

例えば、あなたと初対面でホテルのラウンジでお会いしたとしよう。

leica m10-R/Noctilux 50mm f1.2 original

僕は、古びたRIMOWAのスーツケースを持っている。
ルフトハンザ航空の別注モデルで、フランクルト空港やミュンヘン空港に立ち寄らない限り、入手は難しい、少々珍しい代物だ。

角を中心に凹みがあり、あちこちに世界各国で手に入れたであろうその土地のステッカーや航空会社のセキュリティチェックやPriorityのカラフルなシールがいくつも無造作に貼られている。ただ、そのステッカーはピカピカではなく、色褪せ、リモワのリブの凸部分が擦れて破れてしまっている。よく見るとハンドル部分だけ新しい。

おそらく、多くの人はこう思うだろう。
「この人は、旅が好きな人だ。」 
「海外に携わる仕事をしている人なのかもしれない。」

もっと観察力と洞察力がある人は、さらにこう思うかもしれない。

古びたRIMOWAのスーツケース
→良いものを長く使う人なのか

凹んだスーツケース
→実際に使い込んでおり、高い頻度で旅をしている人なのだろう

世界各国のステッカーや航空会社のセキュリティチェックやPrioritiyシール、リブの凸面に沿って擦れたステッカー
→世界中色々な地域を訪れている。 
→航空会社のステータスランクを保持している
→空港からベルトコンベアーを通じ、航空機に搭載される際に現れる独特な擦れ方。飛行機での移動頻度が高いのか。

新しいハンドル
→修理をして新しい部品に交換されている。良いモノを補修しながら長く使い続ける人なのだろう。


僕はあなたに、僕のバックグラウンドを何も説明した訳ではない。
パスポートのイミグレのスタンプ欄を見せた訳でもない。

でも、出会って数秒で、あなたは飛行機で世界を旅するグローバルな印象を僕に勝手に重ねてくれる。

こんなに便利な自己紹介ツールはない。 
モノの力は偉大だ。
だからこそ、身につけるモノには気をつけるべきだと常に意識している。
相手の観察力、洞察力、習熟度具合で様々な僕の人物像が鏡のように相手に投影される。

by leica Q2 “Reporter”


カメラだってそうだ。

もし僕がピカピカのM11に、ズミルックスASPHの35mmをつけていたとしよう。(実際は持っていないが)

カメラに興味がない人はこう思うだろう
「おしゃれでレトロなカメラだな。クラシックなモノが好きな人なのかもしれない」

カメラ好きな人はこう思うかもしれない
「相当、写真に対し覚悟がある人なのだな」
 「金銭的な余裕がある人なのか」 
「不便なカメラをよく使うな」
 「ブランドモノが好きな人なのだな」

ライカが好きな人はこう思うかもしれない
「最新のライカ、羨ましい」
「この組み合わせは、最高の画質の絵を叩き出してくれる勝利のセオリーだ」
「最近、ライカを始めた人なのかな」

僕は何も話していない。

でも、モノは勝手に僕を形づくり、雄弁に語り出す。

だからこそ、持ち物は慎重に吟味するし、手に入れたものには僕のストーリーを刻み込むのだ。

そして良いモノは、良い人の縁を呼び込んでくれる。
これは、常々実感していることだ。

昔、ブログに載せた一枚のRIMOWAのスーツケースの写真がきっかけとなり、
海外のマガジンBという雑誌より依頼があり、そのRIMOWA特集に、僕の撮ったシンガポールのチャンギ国際空港の写真と、英語で寄稿した内容が掲載された事がある。

また乗っていたビンテージハーレーがきっかけとなり、某国民的ダンスグループのMVにバイカーの演者の一員として出演させて頂いたこともある。
これもモノが繋いでくれた小さなご縁だったりする。

ただ、モノに人生を刻み込むには時間が必要だ。自分も気づけば、人性折り返しといえる
年齢に差し掛かった
もっと、我儘に人生に寄り添う相棒を
選んでもよいだろう

手元にあるズミルックス35mm スチールリムの
オリジナルを愛でながら、
そんな妄想に耽る日曜日の夜なのでした。









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