ただ「友達」がほしかった
のーこ、今年33歳。女。彼氏はいるが独身。
現在、友達が0人である。
子供の頃はちゃんと友達がいた。
大人になり、一気に0人となってしまった。
それには大きな理由が二つある。
まず、22歳の時にお付き合いしていた人からの合意のない性行為を無理やり受けたことにより、妊娠と中絶を経験した。
私は今までもこれからもずっと、この過去と向き合っていく。
でもこの経験から、私は友達にどんな顔をして会えばいいのか分からなくなってしまった。
罪悪感から顔向けができないのだ。
もう一つの理由は、私が23歳の時に乳ガンを経験したことにある。
ホルモン治療というものを五年間続けたのだが、この治療の影響により妊娠ができない可能性があった(現在は妊娠できる可能性は戻りました)。
これくらいの年齢の女友達は、みな結婚・出産ラッシュ。
LINEを開くと、友達の子供のアイコンが並んだ。
私はガンで、妊娠できる可能性がなくなるかもしれなくて、死ぬかもしれない。
そんな中、友達の子供は、みんな本当に本当に可愛くて。
可愛くて可愛くて、その幸せが羨ましくて妬ましくて。
ボロボロと涙が出た。
彼女たちと私は、何が違うんだろうなって。
何でこんなに違うのかなって。
そして私は自分の心を守るために、誰にも何も言わずにLINEのアカウントを削除した。
それ以来、私には友達がいない。
彼氏は仕事が多忙のため、ほとんど一人で過ごしている。
昔は一人でもよかった。寂しくも何ともなかった。
でも最近は年齢のせいなのか、友達がほしいという気持ちが強くなっている。
その重い腰は中々上がらないけれど。
まだ友達がいた頃。
私は周りの評価から、「しっかり者ののーこ」として存在していた。
のーこはしっかりしてる。
のーこなら大丈夫。
のーこなら安心して任せられる。
のーこは出来るからすごいよね、私には出来ないもん。
こんな言葉ばかりが私に向けられた。
それならば私が頑張ろう。
他の人の分も、私が頑張ればいい。
頼ってくれてる、だから助けよう。
ずっとこんなふうに生きてきてふと、私を助けてくれる人はいないことに気づいた。
友達から「死にたい」と連絡が来れば一生懸命励まし。
愚痴があれば聞き、アドバイスを求められれば答えて。
嫌ではなかった。「死にたい」は嫌だったけど。友達だから、助けるのは当然である。
でも、私が同じような状況になった時、誰か助けてくれたっけ?
死にたくなることは何度もある。
でもそれを友達には言えなかった。
困らせたくなかった。
でも乳ガンになってからは、精神的にずっと不安定だ。
治療中に父が自ら命を断ち、それもあって私は立ち直ったり立ち直れなかったりしながら過ごしている。
私の状況を知っている元友達は何人もいる。
でも、誰も何も言ってくれなかった。
私は強がりな性格だから、死ぬのが怖いとかそんなことを言わなかったので、自業自得な自覚はある。
でもさ、友達みんなが結婚・出産で幸せそうでさ。
そんな友達に「死ぬのが怖い」なんて、言えるわけないじゃん。
だからずっと平気なフリをして。
怖いけど平気なフリをして。
無理して笑うでもなく、いつも通りの飄々としたのーことして過ごして。
気づけば一人だった。
何かあれば私を頼り、助けを求め、でも私のことは見てくれなくて。
辛かった。寂しかった。
私も助けてほしかった。
ただ、「友達」がほしかった。
一緒にお茶して、くだらない話で盛り上がって。楽しいねって笑って。
お互いが辛い時には慰め合って。
そんな存在が一人もいない私は、いつも世界に一人だけ取り残されている。
ただただ、「友達」がほしいだけの女の話。