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二人称  #1

「君はそういう人なんだね」
初めて会ったばかりなのに、そんな事を言われて、私は面食らった(後日談だけれど、「そういう切り取り方をする人なんだね」という意味だったらしい)。私に対しての突然の感想にどう答えれば良いかわからなかったので、まずは黙っていた。彼は返事が帰ってこない事をある程度予測していたみたいで、せせら笑うとも、ため息ともつかない音を出して私にサインした。

私は、私達は新宿を歩いていた。新宿と言っても雑多で粗野で息苦しい街ではない。あの辺りはいくら刺激を求めていたとしても苦手で、
ものの数十分もいられない。
前回のnoteでは東京を撮ると断言しているくせに繊細でビビりなのだ。     ビリビリ。

あれは住宅街。塾帰りの子どもが歩いていたり、保育園のお迎えを終えた母親と子どもが自転車で通り過ぎたりするようなそんな時間の新宿。都会の真ん中にいながら流れるのは「お手本のような生活的時間」だった。
家々のドア、ビルの窓の数だけ人の営みがあるのだと考えるとうんざりする。それと同時に津波的郷愁と、美しさが見えてくる。撮らない訳にはいかない。「あなたはどうして写真を撮るのですか?」と聞かれたら、少し考えるフリをしてそう答える。含みながら、でもまっすぐに。

彼は言葉の種類が少なく、話の真意がどこにあるのか、常に探らなくてはいけなかった。
私の撮る写真に文句を言う訳ではないが、「君が決めたんだから」とか「良いかどうかは自分で」なんて言われると、ムムム、となる。
「ムムム、じゃあ、ちょっと縦でも撮ってみようかな、一段絞って(F値)みようかな、もう少し空を入れてみようかな、、ムムム。」
意志があるのかないのか、あるのにないような、、、。俺は柔軟、俺は柔軟。ふにゃふにゃでぐにゃぐにゃ。

色々と言われて、やはり疲れてきた。
前に一緒にいた奴は無口だったから、余計にそう感じる。
もうお手本生活的新宿は日暮れだ。
道には仕事帰りの人が増えてきて、家には灯がともり始めていた。

二人称#2へ続く

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