子どもたちの落とし物(その3)繰り返し、繰り返す。
2年前の夏休みのこと。
数日間暑い日が続いていましたが、その日は朝から雨が降っていて、昼間でも少し薄暗かった。夏休み中にかなりの数のカブトムシやクワガタムシを集めた長男は、子ども部屋となっている和室で昆虫図鑑を読んでいました。
薄暗い部屋の中、昆虫図鑑を眺めていた長男からのちょっとした質問から会話が始まります。
「カブトムシって、卵生んだら死んじゃうんだって。人間は、赤ちゃん生んでも死なないけど何で?」
「んー、人間の赤ちゃんはすぐに大人にならないから、こどもを育てるために死なないんじゃないかな。」
「ふーん。そうか。でも人間もいつかは死んじゃうんだよね。」
「いつかは、死んじゃう。」
「パパはすぐに死なない?」
「たぶん、すぐには死なないと思うよ。」
「そうか、、、わかった。」
ここで会話が終わると思っていたのですが、長男は話し続けます。
「カブトムシのお母さんが死んでも、卵を生んで、赤ちゃんが生まれるから、生まれ変わるみたいなものだね。」
「うん。人間も同じなんじゃないかな。」
「ママから○○(長男の名前)が生まれて、いつか結婚して、こどもが生まれて、、、その子からまたこどもが生まれる。。。その繰り返し。」
「そう、繰り返し。」
「繰り返し」という言葉が腹に落ちたのか、長男は少し満足したような顔をして、再び昆虫図鑑に目を向けまた何かを調べはじめました。
何気ない会話でしたが、私はこの出来事を忘れてはいけないと思って、その日の日記に書き留めました。
忘れるのは嫌だなーと思って書き留めたけど、書き留めた手帳を無くしてしまうかも。そう思ったら、ちょっと寂しくなりました。
でも、こんな経験を、私の子ども、そして孫たちもきっと経験するのだろう。それが繰り返していくだけのこと。息子とこんな時間を共有することができただけでも、私はたぶん、幸せなんだろう。
そう考えたら、私の寂しさも消えた気がしました。
長男と二人きりの会話から、そんな想いを巡らせた、真夏の雨の日でした。
サポートいただけたら、デスクワーク、子守、加齢で傷んできた腰の鍼灸治療費にあてたいと思います。