メルボルンで8回観た映画
『ドライブマイカー』ご覧になりましたか?
私は2月と3月で合計8回、映画館で観ました。
3回目くらいまでは「西島秀俊カッコいいわー」「もう3回も見ちゃったよー」「お尻痛いー」等自ら進んで話題にしていましたが、今はちょっと人には言えません。8回なんて言えやしません。言うのが恥ずかしい。なんでだか恥ずかしい。この恥ずかしさのミナモトってなんでしょうね
コロナ以降、映画館が空いています。
3回目の『ドライブ』だったか4回目の『ドライブ』だったか
場内はなんと私一人しか観客がおらず、ふわふわと解放感に満ち溢れ、靴でも脱いじゃいますかねー!と思ったとたん、3人連れが入ってきた。
あろうことか、私のすぐ後ろの席に座った。なんでまた。
ギョッとしたことには
え。声が子供。
お母さんと小学生くらいの子供2人か・・・??
説明しよう!
『ドライブマイカー』は、性的な描写があるため、オーストラリアでは「MA15+」つまり15歳以上しか鑑賞できない、制限付きの映画なんであります。
子供が「ねえ、お母さん、ホントにここで合ってんのー?」と聞いていて、お母さんは「大丈夫大丈夫、もうすぐ始まるからー」なんて答えてる。もしかして今予告だと思ってるのか。
はたと思い当たることには、この劇場、人手不足で、受付にしか人がいないのです。それも1人か2人。
フロアにも、各上映室入り口にもスタッフがいない。それぞれの扉に、映画のタイトルも示されていない。
つまり、観客はチケットに記された番号だけを頼りにシアターにたどり着くのですが、これがまたクセモノで、部屋と部屋の「間」に番号が付いてたりする。こちらの運と洞察力を試してくるという、こしゃくな映画館なのです。
その親子連れが入ってきたのは、15歳未満閲覧禁止のラブシーンが始まる2分前。危機的状況です。もはや「後ろ」が気になって気になってしょうがない。
あと1分。
お母さん、なんかこれ違うかもと思い始めたのか、それでものんびりした口調で「ちょっと受付で聞いてくるわー。ここで待ってて」と子供を置いて出て行った。お母さん、貴重品お忘れですよー!
後ろでは子供たちが相変わらず「なんだろーね。面白くないねこれ。どこの言葉だろ?」とかこそこそ喋ってる。
そのあどけないイノセントな会話を聴きながら、頭を抱えた。太陽が地球に衝突するのをなすすべもなく悲痛な面持ちで眺めるしかない人類の気持ちであります。
3,2,1・・・。
子どもたち、「Oh…」
と一瞬の沈黙ののちにクスクス笑い始めた。お互い肘でつつきあいながら(見えないけどそんな感じ)くすくす笑いが止まらない。そうだよね、そうですよね、ごめんね!なんでか分からないけど謝りたくなる。
お母さんー、ハヤクカエレ!ハヤクカエレ!昔の人はこういう気持ちでカタカタ電報を打っていたんだろうな!
その時、バフッと防音ドアが開閉する音がして、お母さん帰ってきた。
「ごめんごめん、やっぱちが」
と入ってきて、息をのむ。大画面に映し出された全裸の男女を見て、息をのむ。「息をのむ」音って実際に聞こえるものなんですね。
あとは終始無言で子供を連れてばたばた竜巻のように出て行きましたとさ。
手に汗握る展開でした。あんまりドキドキさせないでください。
映画はひとりで見たいです。(映画館を独り占めしたいというのではなく)
ひとりだと「自分 VS 映画」でシンプルに向き合えるんだけど、誰かと行くとその人の視点でも見てしまうんですかね、きっと。テレビのラブシーンなんて、ひとりで見てるとなんてことないのに、誰かと一緒に見てるとやたらとそわそわ恥ずかしい。昔、義姉は内容を知らずに『私の男』を義父(自分の父親)と見に行ってしまい、気まずさで咳払いしたり座りなおしたり、やたらとポップコーンを口に入れてむせたり、ジュースをがぶがぶ飲んだり、誤作動起こしたみたいになって大変だったそうです。