それ因果ないケーススタディ③ アンチフェミニズム

皆さまフェミニズムはご存じだろうか。
どうやら原点をたどると必ずしもそうではないらしいが、ざっくりいうと女性の権利を主張する思想である。

学校の教科書で、昔は女性には参政権はなかったんだとか、選挙権を与えても被選挙権は与えないとか、日本でも青鞜という雑誌が出て女性の権利主張活動をしていたとか、そういうことを勉強した記憶があるかと思うが、そういうものだ。

厳密な定義やらなんやらに触れるときりがないし、正しいと言い切れる情報を手に入れることも難しいから、これ以上は触れないが、今回はそんなフェミニズムを現代のSNS上でプロバガンダしている方々の話である。

問題となる投稿

類似したものが同時多発的に上がってきていたので、二つほど紹介する。

ことの発端は、とある女性研究者が「私は都合の良い時だけ「女」である事を喧伝するからフェミニストが嫌いだ」と発信したことである。 これに多くの反応が寄せられ、 当然フェミニスト側からのバッシングもあったわけである。
その中での意見の一つが上記のものになる。
これらの意見、書かれていることが事実なのかどうか判断できずとも、誤った推論をしているところがある。

主張の整理

大きく二つ、事実→意見 の流れがある。
提示されている事実は

  • フェミニストが頑張ったおかげで、その恩恵を享受し、今あなたは政治参加できたり、仕事ができたりする。

  • 当時からフェミニスト散々批判されていたが、今となってはその主張が正しかったと分かる

そしてそこから以下のような推論をしている。

  • そのような事実を知らないから、フェミニストを批判しているにちがいない

  • そうでないのだとしたら、フェミニストのおかげで現代の女性が得られている参政権などの恩恵を手放せ。

  • 歴史同様に、私たちも批判されているが、時間がたてば結果的に正しかったと証明されるに違いない

さてもう述べるまでもなさそうだが、誤謬は大きく2つある

① 嫌いであることと恩恵に預かることは関係ない

そもそもの話をしてしまえば、この人が嫌いと言っているのは現代のSNSにおける、都合のいいときだけ女であることを喧伝する人たちのことであって、フェミニストを名乗る人にそういう人が多いから、フェミニスト全体が嫌いになった、という趣旨なので、思想そのものに対する批判ではない。
にもかかわらず、思想への批判ととらえ、さらに過去の実績ととらえ、女性全体ととらえているのだから、この二人の中では、自己と”フェミニズム”という思想を同一化している節があるように見える。

坊主憎けりゃ袈裟まで憎いというが、恐らくこの二人はそういうタイプの人なのだろうと思う。 が、感情の上でそれは理解できると同時に、別に論理的な必然性は一切ないのだ。

一般化するなら、嫌いであることとその恩恵に預かることは関係ない、という話で、例えば中国な嫌いな人がラーメンも嫌いでなければならないわけではないし、環境破壊が嫌いでも、石油製品や、森林伐採によって確保された農地で栽培された野菜を、選択の余地な使ったり食べたりしているのだから、

② 批判されているから正しいわけではない。

こう書いたらそりゃ当たり前の話なのだが、意外と良く間違える推論である。

事象Aのあとに事象Bがあった、 という観測結果から、事象Aの後には、かならず事象Bが続く、または事象Bが続く可能性が高い、と推論していまうケースである。

これは本当に良くある。統計検定などをしたことがある人からすると当たり前の話なのだがその傾向を測るためには、ちゃんとカルノー図を描いてその確率を比較しないといけない。 つまり今回のケースで言うなら、

  • 当時批判されていたが、正しかったケース

  • 当時批判されていて、正しくなかったケース

  • 当時批判されていなくて、正しかったケース

  • 当時批判されていなかったが、正しくなかったケース

の4パターンで、どこが多いのかを見る必要があるということである。
なお、統計的な話をするとそのサンプル数は最低でも300個とか必要になるわけだが、すくなくとも”Aならば絶対にB”という結論が、統計的な(すなわち経験則を拡張した)手続きから出てくることはまずないのだから、AならばBという推論は、”別にそうとは限らないでしょ”となるのだ。

ガンジーも、”歴史を学んで分かるのは、今まで歴史で起こったことのないことが、未来永劫起こらないとは限らないことです。”と言っているらしいが、まさにである。

おわりに

特に②は、よくある誤謬である。自分を勇気づけるために、逆境に打ち勝つことができるのだということを言い聞かせるなどという使い方をする分には良いのだが、他者に対する説明能力は皆無であるということを理解しておきたい。


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