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IRの97%はカジノではない

「カジノではない。IRだ。」
これは我々のIRに関する第1回の記事のタイトルである。

IRとはIntegrated Resort(統合型リゾート)の略であり、ゲーミング施設(カジノ)と複数種類のノンゲーミング施設を統合することで成立するリゾート施設である。多くの人はIR聞くとカジノを思い浮かべることであろうが、それだけでは視野が狭まり適切な議論ができない。日本の規制では、ゲーミング施設はIR施設全体の面積に対して3%以内に抑えなければならない。つまりIRの97%はカジノではないのである。

とは言ってもギャンブル依存症の懸念が拭えない人も多いことだろう。またシンガポールのIR施設では、カジノはIR施設における床面積の割合は3%に満たないが、売上高は全体の78%となっている。決してカジノの存在を無視していいわけではない。そこで我々はギャンブルに関しても議論を重ね、記事を作成した。

その上で全体の床面積の97%を占めるノンゲーミング施設は、もはや施設全体の印象を左右しかねない。ノンゲーミング施設をカジノ同様に無視できないことは同意いただけるだろう。そこで、この記事ではノンゲーミング施設についての議論を行いたいと思う。

■ノンゲーミングの一例

・MICE施設

MICE(マイス)とは、Meeting(会議・研修)、Incentive(招待旅行)、Conference(国際会議・学術会議)Exhibition(展示会)の4つの頭文字を合わせた言葉で、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称だ。

参加者の滞在日数が一般の観光に比べて長く、しかも公費が使えるため、消費額が増える傾向にあり、一般的な観光に比べて1人当たりの経済効果が大きいと言われている。

日本にも既にMICE施設は存在し、代表的な物として東京ビッグサイトや東京国際ファーラム、横浜のパシフィコ横浜などが挙げられる。しかし宿泊施設が分散していたり、周辺に余暇を過ごすスペースが無いなど使い勝手が悪い面があり、大規模なMICE開催に対応できないケースがあるようだ。


・エンターテイメント

IR施設はどうしてもカジノのイメージが強くファミリー層などからは敬遠される場所だった。そこで世界のIRでは家族でも楽しめるようなエンターテイメントを導入し、ファミリー層を招くことに成功している。例えば、ラスベガスでは世界でここでしか見られないショーを作り上げた。結果、元々のカジノの暗いイメージを払拭し、そのショーを目的に施設を訪れる人多く現れた。

このエンターテイメントはファミリー層だけでなく、多国籍の人々を呼び込むことを可能にするだろう。例えばマカオのIRでは言葉が分からなくても楽しめる。水を多用したショー「ザ・ハウス・オブ・ダンシング・ウォーター」は多くの人の度肝を抜くショーになっている。

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・ショッピングを中心とした商業施設

さらに多くのIRでは商業施設なども多く取り入れられていて、観光客だけではなく、近隣の住民なども日常的に楽しめるようだ。ハイブランドからローカルフードまで、老若男女を飽きさせない多様な店舗が存在し、現代アートや最新テクノロジーの展示などを点在させるようなショッピングモールなども存在する。

また消費活動が活発になるMICE施設への訪問者によって、多くの経済効果が得られるだろう。

■IRのノンゲーミングだからできること

さて日本に設置される3ヶ所のノンゲーミング施設では、どんな可能性を秘めているのであろうか。

まずIRの収益構造にも着目すると、カジノの収益が大きな割合を占めている。カジノという最強の収益装置を有している分、ノンゲーミング部分の機能に関しては、単独では実現が難しいようなチャレンジングな提案が可能になる。

次に着目したいのは施設の97%をノンゲーミングが占めているという点である。これは建物のほとんどの部分がノンゲーミング施設としてデザインされるということである。建築のデザインは、少なからず機能によってデザインが左右される部分もあるかと思う。

IRという大規模な施設が設計されるとなれば、ユニークかつ世界でも類を見ないような名建築が残る可能性がある。例えばマカオの統合型リゾート「シティ・オブ・ドリームス マカオ」内には、故ザハ・ハディドが設計した「モーフィアス」が2018年にオープンしている。

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この大胆で見慣れない建物のデザインには賛否両論があるかもしれない。しかし見たこともない建物が「実現」している。これはIRにチャレンジングな建築を受け入れる度量があり、これは経済的・物理的規模の大きさに基づく。IRの誘致は後世に残るような名建築が生まれる大きなチャンスでもあるのだ。

これ以外にチャレンジングな建築を受け入れる機会はそう多くない。日本ではオリンピックという大規模な国家的プロジェクトの機会に恵まれ、そのメイン会場のデザインは正式なコンペティションで選定された、とてもチャレンジングな提案だった。その絶好の機会を前に、経済的理由が原因の一つとなり提案は棄却された。

ご存知のとおり、その設計者は「モーフィアス」の設計者ザハ・ハディドである。

■長崎の提案

ここで過去の記事同様に、本記事でも勝手に1つの候補地を推してみたい。

本記事で推す候補地は「長崎」である。

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まず前提として「横浜、和歌山にIRを誘致する」前回と前々回の案を採用している状況で考えるものとする。

長崎がIRの敷地の候補としてあげているのがハウステンボス内である。すでに有名なテーマパーク内にIRが誘致されるとなると、これまでに見られないノンゲーミング施設が提案でき、他のIRと差別化されるのではないだろうか。特にエンターテイメント部門において、既に存在するエンターテイメントとの相乗効果は期待するところである。

建物の面でも、テーマパーク内に設置される建築のあり方は、より自由であるかもしれない。また既にテーマパーク内に存在する建物との関係性に着目した設計などもありえるだろう。

さらに元々、ある程度管理された場所だったこともあり、入場者のコントロールや監視などは比較的容易に実現可能な場所であることが想定される。ギャンブル依存症や治安悪化に対する対策も最も期待できる候補地なのではないだろうか。

(文責:佐藤)

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