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もう一人の《小さなエリザベス》〜女王陛下との数奇な巡り合わせ

Anne of Windy Willowsアンの幸福” に登場する ”little Elizabeth小さなエリザベス” がアン・シャーリーと同じ誕生日と置かれていることを手がかりに、アンの誕生日(3月15日)がシャーロット・ブロンテ(3月31日)とその夭折した次姉エリザベス・ブロンテ(6月15日)のそれぞれの命日から取られているとの推論を、『赤毛のアン ヨセフの真実』第2章3節「アン・シャーリーの誕生日」に記しました。
little Elizabeth小さなエリザベス” とエリザベス・ブロンテには名前の一致だけでなく、 ”little Elizabeth小さなエリザベス” の設定年齢と、エリザベス・ブロンテの享年(補章その2を参照。)がともに10歳という共通点があります。
2022年5月31日追記:そして、ジョージ・エリオットの名作 ”Middle March” のタイトルから連想されるMarch(3月)のMiddle(半ば)をアンの誕生日とするためにも、エリザベス・ブロンテの命日はうってつけでした。(詳しくは『アンの誕生日はなぜ”Middle March”?』をご参照ください。)

さて、「小さなエリザベス」にはもう一人の実在のモデルがいると考えられます。
それは、現英国女王のエリザベス2世です。
1926年4月21日生まれのエリザベス女王がまだ10歳だった1936年に、モンゴメリの ”Anne of Windy Willowsアンの幸福” が出版されました。
little Elizabeth小さなエリザベス” はこの物語の中で8歳から10歳までの3年間を過ごしており、少女だったエリザベス女王の当時の年齢と一致しています。

モンゴメリが晩年になって描いた ”Anne of Windy Willowsアンの幸福” で、二人の実在した少女エリザベスの像(イメージ)を重ねたと思われる ”little Elizabeth小さなエリザベス” 。
これはモンゴメリのいつものやり方であり、マリラもアヴォンリーもメイフラワーも、二重三重に重ねたイメージの中から浮かび上がった像なのです。(マリラは『赤毛のアン ヨセフの真実』第1章2節と3節補章その3を、アヴォンリーは同第4章補章その1、『アン・シリーズは続くよどこまでも』の2021年7月8日追記を、メイフラワーについては『アン・シリーズのメイフラワー』をご参照ください。)

少女エリザベスは数奇な運命の元に、モンゴメリが亡くなって10年後の1952年に英国女王エリザベス2世となりました。

モンゴメリが ”Anne of Windy Willowsアンの幸福” を書いていた時分には、エリザベスの父であったジョージ6世は当時の国王ジョージ5世の次男であったため、国王になる予定はありませんでした。(参考:『婦人画報』2012年11月号 わたなべ・みどりさんの記事より)
兄のエドワード8世が1936年1月に国王となりましたが、その11ヶ月後、突然王位を捨ててアメリカ人の平民女性と駆け落ちしてしまったため、弟のジョージ6世は1936年12月に急遽、国王に即位。
Anne of Windy Willowsアンの幸福” が出版されたのは1936年の7月〜8月であり、その執筆は1935年8月12日から11月25日にかけて、校正は翌年の1月27日に終わったと日記にありますから、モンゴメリはジョージ6世の即位を知らずに ”Anne of Windy Willowsアンの幸福” を描いたことになります。

Anne of Windy Willowsアンの幸福” の出版当時はまだ10歳の少女だったエリザベスが、その16年後には男子のいなかったジョージ6世の後を継いで英国の女王になるという、まるで『赤毛のアン』の写し鏡のような出来事がこれから起こることが、モンゴメリにはヴィジョンとして見えていたのでしょうか。
それとも時代を超える名作には、不思議なシンクロニシティはつきもの?

実は、モンゴメリがアン・シャーリーの元型としたシャーロット・ブロンテの誕生日も、エリザベス女王と同じ4月21日なのです。
モンゴメリのことですから、もちろんこの事実も知っていたはず・・・だから、晩年に ”Anne of Windy Willowsアンの幸福” を描く中で、アン・シャーリーと ”little Elizabeth小さなエリザベス” の誕生日が同じであると置いたのでしょう。

♪ 拙記事のアイディアを参考にされる場合は、参照元のご明記を・・・♪

その他のnote記事より
*『白ゆり姫はシャロットの姫』はこちらからどうぞ♪
*「『赤毛のアン』と『マーミオン』〜後編」
*「『赤毛のアン』と『マーミオン』〜前編」
*『アン・シリーズのメイフラワー』




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