テスラ、好決算を発表、2025年に向けた大胆な野望を明らかに
Tesla Delivers Blowout Quarter, Lays Out Bold Ambitions for 2025
情報がとても多い記事です。テスラの株価は、2週間前のサイバーキャプ発表時の株価低迷から一転し、好感されました。
記事のポイントは次の通り。
いくつかかいつまんでコメントします。
…その前に以前から思っていることですが、数年内に、
なぜなら、そのことが路上の安全性に直結するようになるからです。
…これは間違いのない方向性だと考えます。詳しくは後述しますね。
さて、いくつかコメントしていきましょう。
①ライドシェアサービスに参入
現状すでに、テスラ所有者はFSD(フルセルフドライビング)を使いながらドライバーとしてライドシェアを行っているケースが判明しています。
マスク氏がこの状況を見逃す訳がありません。テスラが自社の車両を使ってライドシェアサービスを提供すれば、ドライバーたちはウーバーやリフトでテスラ以外のクルマを使うより、FSDを搭載したテスラ車両の方を使いたがるのは明白です。
理由は簡単、ドライバーにとっては”運転状況を監視するだけで良いため、疲れにくい”からです。運転状況の監視さえ怠らなければ、安全性は人間だけでドライブするよりも高いものになると推測します。
② 低価格ラインナップ計画(モデル2と噂された)は事実上サイバーキャブへ置き換わった
仮にもしカローラと同価格のテスラが登場したところで、さほどインパクトはないでしょう。
それよりも、”行き先を告げるだけで、どこへでも運転して連れて行ってくれるクルマ”が、カローラくらいの値段で登場したらどうでしょうか?
マスク氏が狙っているのは、完全自律運転機能付きのクルマを、カローラくらいの価格で出すことです。これはかなりインパクトがあります。他社の技術では到底不可能でしょう。
③トランプが当選し、ホワイトハウスで「政府効率化部門」という役職に就いたら、連邦政府による自動運転車の承認の道筋を作る
まず、背景から述べないといけません。
現在マスク氏はトランプ政権を支持していますが、かつてはバイデン政権を支持していました。
ところが、バイデン政権はEV普及にあたり、懇談する場にGMやフォードのトップを呼びながら、マスク氏を呼ばなかったという経緯があります。米国で最もEVを販売しているのはテスラですから、このことは明らかにおかしな話です。なぜこのようなことになったのかは明らかではありませんが、これにより、マスク氏はトランプ支持に鞍替えしたと言われています。
そして今回、マスク氏は「ホワイトハウスで政府効率化部門という役職に就いたら、連邦政府による自動運転車の承認の道筋を作る」と発言しました。
仮にもし、テスラが連邦政府の承認を受けて、米国全土で完全自律運転の認可を受けたらどうなるでしょうか。
GMやフォードなどのメーカーが大打撃を喰らうことになるでしょう。なぜなら、彼らの自動運転車両はテスラと比較してどうしても高額になってしまい、テスラほど売れないとわかっているからです。
ではなぜ高額になるかというと、自動運転技術の着想がそもそも違うからです。
テスラの自動運転技術は、車両の全周囲にカメラを配置し、そのカメラから入った情報をAIで認識して完全自律運転を実現するというもの。
GMとフォードなどの自動運転技術は、車両の全周囲にカメラとLiDAR(レーザーで周囲の状況を把握する技術(※1))を搭載し、AIで完全自律運転を実現するというもの。
一見すると、GMとフォードの運転技術の方が凄い感じもします。
しかし、両者をコスト面で比較すると、テスラの自動運転技術は、カメラとAIを搭載したコンピュータだけで制御するため、非常に安く生産できて、販売上有利なのです。(※2)
そのような背景もあり、マスク氏はトランプに近づき、全米で自動運転車の承認を得られるよう動いているのです。
※1 LiDARについては、以下に詳しいです。
※2 実は今から7年以上前、テスラもLiDARを使って完全自律運転を実現する検討を行っていました。しかし、マスク氏が主導して『カメラのみ』で完全自律運転を実現する研究開発方向に舵を切りました。当時、社内では論争になったようで、LiDARを支持するエンジニアたちは強硬に反対して、テスラを退社しました。
そして、マスク氏は自身の主張を実現するために、完全自律運転車両の開発にエネルギーを注ぎこむことになります。紆余曲折を経て、現在ようやく今の形になってきたようです。マスク氏はビジョナリストであり、技術者という側面を持ちます。彼の技術選択眼が真に正解だったかどうかは、これから試されることでしょう。
④ CO2規制クレジットを除外した第3四半期の自動車粗利益率は17.1%で、アナリストの予想を上回り、14.6%だった前期から上昇した。
これにはサイバートラックが寄与しているのでしょう。高級ラインナップは粗利益率が高いです。それと、FSDのサブスク(FSDはソフトウエアであって、使用料は月額99ドル・約1万5000円)も寄与しているはずです。
ちなみに、私は買取でFSD使用権を保有しているのですが、現在日本で認可されていないため利用できません。すでに7年近く経過してしまっています(汗)。
⑤ 生産方式に非箱型製造技術を採用する
これは専用エリアで部品を同時に組み立ててから最後に全てを組み立てるというもの。ボディを生産ラインに流して、そこに部品を組み込んでいく生産方法とは異なる方式のようです。これ以上詳しいところは、私にはまだわかりません。
⑥ ”完全”自律運転は既存の車両ラインナップでも実現できる予定
現在米国では、Supervised FSD(ドライバー監視下での自動運転)は認可されて、走行しています。これは既存のテスラオーナーが利用できるものとなっています。
これに加えて、今後、完全自律運転(ドライバー監視が必要ない自動運転)がリリースされる予定となっています。この時に、既存のテスラでもこの完全自律運転が使えるというものです。
このことは現在のテスラオーナーにとっては朗報でしょう。
テスラの自動運転のキモとなるのが、その運転学習をするAI学習用スーパーコンピュータ『Dojo』(日本語の”道場”にちなんで付けられた)です。全世界のスーパーコンピュータのランキングで上位に入る性能と言われます。Dojoは世界中を走るテスラ車両からデータを取得して運転を学習しています。
スーパーコンピュータによって学習が進めば進むほど、自動運転の精度は向上します。テスラの”完全”自律運転は、おそらく数年内に人間の運転の技量を上回るでしょう。
この『Dojo』によって得られた学習成果は、最新のFSDとして各テスラ車両にソフトウエア配信によって搭載される予定です。
たとえて言えば、現在路上を走るテスラの頭脳が、免許取り立てホヤホヤくらいの危なっかしい運転技量をもつとすれば、今後ソフトウエア・アップデートによってその頭脳がプロの運転手か、それ以上の技量をもつことになるということです。
仮にもし、
プロ運転手以上のスキルのAIを搭載するカローラと、
初心者若葉マーク程度のスキルのAIを搭載するフェラーリだったら、
カローラの方がよほど価値がある
と言えるかもしれません。
(※フェラーリには骨董品的価値がつくかもしれませんが)
つまり、車の価値は搭載するコンピュータの賢さで決定するようになるのです。
⑦ エアタクシー(空飛ぶ車)を検討していることを示唆
マスク氏の興味深い発言です。
私個人は、人やモノを運ぶ際のエネルギー効率からみたら、テスラにとってエアタクシーはプライオリティのトップには入らないように考えています。
でも、仮にもしスペースXで培われた技術を使って移動する手段が出来そうだったら(例えば、超小型のロケットエンジンとか?)、可能性はゼロではないのかもしれませんね。
…以上です。