開戦前夜

 気づけば2021年も終わり、あと数時間で二回目の本厄も終わりを告げようとしている。疲れが溜まっていたのか、どうにか勝ち取った年末年始の休みは寝転がってSwitch弄ってたら溶けた。それはそう。

 キツい一年だった。ただ、去年の苦労は必要な苦労だったことは現状手元にあるものから解る。意味のある苦労だった。意味がある苦労は苦労とは呼ばない。初めてかもしれない、リターンが釣り合った苦労は。

 新しいことをたくさん始めて、今の所それは順調に回っている。もしかしたらさらに肩書が増えるかもしれないが、上等だ。全部ひとつとして捨てる気も諦める気もない。出来る出来ないで動ける年齢は過ぎた。やるんだよ。全部やるんだ。成功か失敗か。出来そうだったけど無理しないとか勿体なさすぎる。

 去年、親しい友人がうっかりした酒の飲み方をして亡くなった。

 その才能とそれを活かす努力を怠らなかった、まるで二次元からやってきたような怪人。クリエイター、モデル、パフォーマー、色々肩書はあったろうけど。俺にとっては愛すべきゲーマー仲間で、ポンコツおじさんだった。

 彼については色んな顔を知っているし、一時期はお互いクソみたいな状態でなんとか立て直して、お互い面白爺さんになろうって話をしていた。まさか勝ち逃げされるとは。古い友人の家で酒呑んでそのまんま苦しみもせずってホントふざけんなって思う。必ず殴りに行くからそこに居ろ。涅槃と地獄を分かつ辻で絶対文句言ってやるんだ。

 その友人から言われた言葉。

「オーカミさんはいつでも病んでいつでも倒れてるけど、後ろに倒れたところだけは見たことがない」

 その言葉が今の自分を生かしている。
 男が腹見せていいのは自分のツレだけだ。戦場でそんな倒れ方するのは死ぬ時だけだ。今でもそう信じている。

 今日の日付変更線を越えれば、本厄が終わる(数えだから年越したら終わってるのかもだけど、油断できねえんだよ人生経験からさ)

 コロナは終息に向かいつつある。見えるところ見えないところで風向きは変わってきた。それなりに肩書がついたので、視野はアップデートされている。スキルもそう。実は体調もそう。まさかストレス原因の内臓疾患全部消えてただ太ってることを健康診断で指摘されるだけになるとは。コンディションについても加齢とオーバーワークによる摩耗以外は何も懸念はない。

 もう、変に色々周りを見てしょっぱい気配りや我慢をしなくてもいいんだってふと思って。この腹の中にある煮えたぎる何かをぶちまける時が来たことを認識した。

 太陽は何度も上って沈んでいくけれど、それを厭うことはない。所詮六等星の器だと自覚はしているが、それでも、太陽の真似をすることくらいはいいだろう。もう一度本気で、全力で、燃えてみようかと思っている。

 後厄が控えている。来るであろう厄は去年俺が死ぬ気で切り開いた世界からの贈り物だ。

 全部燃やす。

 自分の薪に変えてやる。
 自分の手足、言葉、歩いていく道、すべてに炎を宿したい。

 "タイラアツシ"が死んで"ノブ=オーカミ"となって。もうそんなのは懲り懲りだって思っていた。もう疲れるのは嫌だって思っていた。これまでの貯金でヘラヘラしてればそれでいいじゃんかって思っていた。違ったらしい。また泣き言を言うだろうしもう嫌だってわめくかもしれない。っていうか多分する。自分のことだから解る。

 でも。
 もうそんなのは嫌だっていうのは、嘘だ。
 自分でよくわかっている。それは嘘だ。

 ずっと自分を燃やしたいって思っていた。燃えることに意味がないっていう諦念や絶望がそう思わせていただけで、燃えるように前に進むことは諦められなかった。認める。諦めようとした。出来なかった。そうさせようとしたのは周りだっていう物言いも嘘だって認める。

 俺が自分で決めたことだ。

 もう止める。自分にも周りにも嘘は付かない。大人なんてクソ喰らえだ。不惑とか笑わせんな。惑わずして何が人間だ。俺は人間だ。全部抱えて泣き言言いながら生きてやる。なあ美少女さん。あんたは俺に人間を見てくれたんだろう。人間のことがよくわからないって言ってたけど、あんたは俺の歩みに人を見ててくれたんだよな?俺は勝手にそう思ってるよ。

 ちょっと遠くなったけど、あんたが見やすいようにせいぜい派手に燃えるさ。あんただけじゃない、此処に俺が居るということを示さないといけない相手は結構居る。今の俺が燃えた時見えた炎がもし綺麗だったら、それはきっと俺みたいなクズに縁を結んでくれた人たちの優しさだよ。その炎が消える時、夕焼けみたいに綺麗なものを見せてやりたい。あんな大人が居るんなら、悪くないよな年取るのもって思ってもらえるように。俺が自分を赦せるように。もう一度燃えることにするよ。だからそこで見てろ。

 そんな感じです。
 今年もよろしく。

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