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「勝手にスポーツ大臣」15 小林信也 スポーツベッティング合法化の議論を
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現在のスポーツ国家予算の20倍近い財源が確保できる!?
第2回「年間スポーツ予算1兆円を確保する」でも少し触れたが、スポーツベッティングの導入は、日本のスポーツ財源を劇的に増加させる可能性が高い。3年前、ミクシーの社長に取材した時には、「日本で導入すれば年間7兆円の売上が見込める」との試算だった。もし「売上の10%をスポーツ財源に還元する」と決めれば、年間7000億円のスポーツ財源が生まれる。現状の約362億円の20倍近い予算を組むことができるのだ。この財源があれば、中学部活動の地域移行は小学校、高校も含め、全面的な地域移行、つまりは地域クラブの創設・推進も可能になるだろう。また「勝手にスポーツ大臣」が提案している「全国にスポーツ遊びのできる公園を作ろう」も現実化する。
ギャンブルには抵抗があるけれど、世界の現実は
スポーツの普及振興財源を「ギャンブルに頼る」のは内心忸怩たるものがある。もっと真っすぐ、国家予算を多額に投入してもよい、それほどスポーツの効果は高いと「勝手にスポーツ大臣」は感じているが、現状の政治家や国民世論はそれを理解できていないので、すぐに「防衛予算から1兆円回して!」と言っても実現性が薄い。となれば、独自に財源を生み出す方が現実的だ。その切り札のひとつがスポーツベッティングだ。
当初抵抗のあった僕が、なるほど、と心を開いた理由は、ミクシーの社長に教えられた「現実」だった。2018年にアメリカでスポーツベッティングが合法化され、すでに40近い州で人気を得ている。G7加盟国で導入していないのは日本だけ。つまり、潤沢なスポーツ財源を得た先進各国に比べ、日本は桁違いの低予算で今後の国際大会を戦うことになる。それだけでなく、すでに海外のスポーツベッティングでJリーグが賭けの対象にされ、1兆円とも2兆円とも言われる売上がある。しかも、そのうちの2~3000億円は日本人が海外に口座を開いて参加しているというのだ。totoの売上が1000億円ちょっとしかないのに、その2倍以上の額が海外に流れている。Jリーグも海外のマーケットで利用されている。こんな愚かな状況を放置するのはおかしいんじゃないか。ミクシーはじめIT企業の担当者の説明に僕はなるほどと思わされた。
日本でもようやく実現に向けた準備ができつつある
日本にはtotoがあるけれど、海外のスポーツベッティングとは決定的な違いがある。日本の既成のギャンブルはすべて試合前に賭けが締め切られる。海外のスポーツベッティングは「インプレーベッティング」と呼ばれ、試合が始まっても賭けに参加できる。例えば野球なら、「ここで大谷選手は打つか、凡退か」とか、「このイニングでドジャースは得点できるか」とか細かな予測が賭けにできる。その設定こそが、各ベッティング業者の腕の見せ所。参加するベッティング・プレーヤ―は野球に関する見識や読みの深さを発揮できるから、試合観戦の妙味が倍増する。スポーツベッティングを通じて、競技の深みを多くのファンが学び、スポーツを楽しむレベルが向上する可能性もある。
すでにtotoでは、ワールドカップサッカーで優勝チームや各試合の点差を含む勝敗予想を実施した。これはtotoの規定の範囲内でできることをやったわけだが、海外同様のインプレーベッティングを実施するには法改正が必要だ。いまこれを推進する団体として、『スポーツエコシステム推進協議会』があり、すでに一般社団法人化している。会員は118社。新聞社、テレビ局、通信社、商社、IT関連各社、金融、不動産関連など大手企業が名を連ねている。ずっとこのスポーツベッティングに反対していた読売新聞も会員として参加、山口寿一社長も評議員に名を連ねたから、実現に向けた大きな障壁はひとつ解消されたと見ていいだろう。
スポーツマネジメントのエキスパートを養成する仕組みづくりも重要だ
当面は、配当金の割合を押さえ、ギャンブル性よりゲーム性の高い方向性で着地しそうだとの流れを聞いた。totoを少し発展的に改正する程度かもしれないが、着実に実現に向けた動きは進められている。
インプレーベッティングの導入で、スポーツを見る楽しみが深まることも楽しみだし、その財源がスポーツを支える重要な土台になればいいと思う。
ただそうなれば、また妙な利権構造ができ、私腹を肥やそうと目論む輩がたかる懸念も想定される。プロフェッショナルなスポーツマネジメントのエキスパートを養成する必要も重要だ。
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