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「勝手にスポーツ大臣」3 小林信也   全国に「スポーツで遊べる公園」を作る

小林信也スポーツライター塾、開講! 詳しくはHPをご覧ください。
https://nobuya2.wixsite.com/mysite/blank

1兆円のスポーツ予算で何をするか?

スポーツ財源が1兆円確保できたら、何から始めるか?
ひとつは、「スポーツで遊べる公園を全国津々浦々に作る」
いまキャッチボールができる場所がない。草野球なんてとんでもない。身近に野球ごっこやスポーツ遊びのできる場所がないのだから、いくら大谷翔平が活躍しても、WBCで日本が優勝してメディアやファンが盛り上がっても、野球人気が復活するなんて、絵空事だ。やる場所がないんだから。
それは野球に限らない。サッカーだって、道端でボールを蹴るのは日本じゃ無理。サッカーボールならまだ公園で怒られる確率は野球より低いけれど、サッカーゴールの置いてあった近所の公園からサッカーゴールが撤去されて久しい。よちよち歩きの幼な子が遊ぶ住宅街の公園で、ボールを持った小学生の肩身は狭い。だから、思い切りキャッチボール、草野球、草サッカーほか、スポーツごっこで遊べる公園を作ろう!
 

箱物批判をする人は多いけれど

税金でスポーツ施設を建設すると、「無駄な箱物行政だ」「建設業者への利益供与だ」と批判する人が大勢いる。でも実際に、市区町村が管理する体育館やスポーツ施設の稼働率はかなり高い。僕の住む市の体育館だけでなく、コミュニティセンター(公民館)の小さな部屋に置いてある卓球台は、中高年の愛好者たちで行列ができているという。
ヨネックス現会長の米山勉君は高校の同期で、いまも親しく交流がある。数年前、「バドミントンの指導施設を作る予定はないのか」と尋ねたら、「テニスクラブみたいな民間のバドミントンクラブは成立しないよ」と笑いながら言われた。なぜなら「公立の体育館が充実しているし、すごく安い料金で教室もやってもらっているから、高い施設を作っても誰も来ないよ」と言うのだ。安い費用でバドミントンができる。わざわざ高い料金を払う必要がない。体制批判をする人たちが口を揃えて叫ぶ箱物批判は必ずしも的確じゃない。実際には、スポーツを楽しむ一般の人たちの大切な環境を提供しているのだ。そして現状でもまだ足りない。
それでも過剰な税金投入は抑えられた方がいい。スポーツベッティングで確保したスポーツ財源なら、批判を受ける心配もない。スポーツ界が独自に捻出した予算なら、誰に気兼ねもなく、スポーツ施設の建設・管理に使える。

ただ本当は、箱物より先に「自然なスポーツ環境の整備」が基本

中高年のスポーツ施設利用率は高いと書いたが、それはすでにスポーツにのめり込んでいる人たちの場合だ。普段の生活にスポーツとの接点がなく、すっかり身体を動かす習慣をなくした人たちがスポーツを始めるハードルは高い。自宅から一歩出たところから始まるフィットネス環境作りはもっと大切だ。それは散歩、ジョギング、自転車乗り、ワンちゃんとの散歩でもいい。
いま東京では、散歩さえしにくい。自転車は走りにくい。
道が狭いから、お互いに「邪魔だ」と感じる貧しい道路状況だ。
歩道を自転車が走る。自転車は歩行者を邪魔だと感じ、歩行者は自転車を危ないと感じる。自転車が車道を走ればドライバーにとって自転車は邪魔だし、自転車は車の存在が怖い。
すべての道に歩道と自転車専用道路があればどんなに幸せで安全だろう。
遊歩道の整備、自転車で安全に走れる道路環境の整備はすごく大切だ。そんな道路環境なら、家から出てすぐ散歩を楽しめる、自転車で出かける気にもなるだろう。
いま道路整備は国土交通省の管轄。彼らはフィットネスを真剣に考える立場にない。縦割り行政の弊害がそこにある。道路整備にもスポーツの価値観を反映できる体制づくりは重要だ。「勝手にスポーツ大臣」なら象徴の縄張り争いなんて関係ないから自由に提言できる。

政治家はスポーツ財源創出を考えてくれない

東京2020の時、僕は五輪強硬派のように見なされ、多くの人から白い眼で見られた。「コロナだからと実施に反対するのでなく、やれるかどうか、きちんと検証・議論しましょうよ」と叫んだにすぎない。それでも「強硬派」と見なされた僕は、「東京五輪後の財源確保に向けていち早く動きましょうよ」と、大会前から橋本聖子組織委員長に働きかけた。だって、「東京五輪が終わったら、五輪のために建設した施設の管理運営費で毎年約100億円の赤字が明らかだ」としきりに報道されていた。それでは五輪開催もスポーツそのものも非難の的になって仕方がない。だから、この赤字解消は急務だ。いや、この施設を有効に活用すれば、赤字どころか多額の収益が出てもおかしくない。それだけ立派な施設なのだ。ところが、組織委員長は財源創出にそれほど関心を示さなかった。役割外という認識だったのだろうか。
僕がスポーツベッティングに関心を持ち、国内でそれを推進しようと模索するグループと親しく交流(取材)を進めたのは、いまの政治家に期待できないとわかったからだ。

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