共感してくれる人に相談しても解決にはならないし、行動にもつながらない
どうも僕は情に薄い人間と思われているようで、僕に相談が来るケースは「集客」「部下への指導」「債権回収」などほぼ100%業務にまつわる内容です。
プライベートや身の上話をされることはまずありません。
そんな僕にある人から個人的な相談が来ました。
個人的な内容の相談を受けるのは苦手
今年1月、ある人(Aさん)から突然こんな連絡がありました。
Aさんはかつてのクライアント企業の社員(マネージャー)で、業務連絡でしか話したことがありません。プライベートで会ったことも一度もありません。
どこかのタイミングでFacebookでつながりましたが、数年間連絡を取っていなかった期間もあります。
前述のとおり、僕には業務的な相談しかこないので(文字にすると悲しくなるね)、集客施策についての相談かなと思って返信しました。
すると、こんな返信が。
個人的なこと! 人生経験豊富な延藤さん!?
一気に不安になりました。共感力が低く、正解がない事柄について相談されると途端に声が小さくなります。
相談内容「仕事をやめるべきか?」
個人の特定ができない範囲で書くと
中小企業のマネージャー職(30代後半)
学生時代にアルバイトで勤めていた会社にそのまま就職し、人生の半分を一つの会社で過ごす
上のポジションになり無理を強いられるようになった。経営の方針に納得できないことが増えている
時間外にも業務対応が発生し、家族(子供)との時間が十分に取れない
一定の年齢に達した、優秀な人に起こりがちな問題です。30代,40代のマネージャーで同じような悩みを持っている人もたくさんいると思います。
延藤の回答「さっさと転職、独立の準備をしましょう」
他にも細かい現状を訊いたのですが、解答を出すにはこの2点が検討事項でした。
家族との時間を大切にしたい
⇒今のポジションでなくなると、年収は下がるかもしれない。とはいえ、普通の企業(労働環境)なら今より時間はできるので副業(個人事業)で補填は可能。
一度も転職をしたことがない
⇒まずは転職サイト・エージェントに相談して、自分に値札をつけてみましょう。結果的に転職しなくても自分の状況を客観視できる。給与交渉の材料にもなる。
僕の平凡なアドバイスに対して、Aさんからこんなメッセージをいただきました。
僕の経験談「なるほど、じゃあ辞めますね」
僕は前職で「これはないよね」ということをされて、2日後に退職を申し出ました。その時に強く感じたのは「この会社にいることの方が僕の人生にリスクだろうな」と。
別の収入源を持っていたなど前提はありますが、やはり「この人たちと良い未来を作りたい」というのが失われると、途端に「ここに時間を投じてはならない」と思い、次の働き先も見つけずに退職しました。
↓Aさんにシェアした僕のブログ記事
以下の返事をして、相談は一旦終わりました。
社員の負担が増えることは会社の問題である
一方でAさんはこんな不安もあったそうです。
自分がいなくなると今いる社員にさらなる負担がのしかかるかもしれない。
僕はAさんの会社のことを知っているので(上長や部下にも会ったことがある)、「この人が辞めると会社は大打撃になるだろうな」と思いました。
よほどゆとりのある企業でなければ、マネージャーが辞めると士気が下がるし、他の社員に業務の皺寄せがきます。これは避けられません。もしかしたら残した社員に恨まれるかもしれません。
しかし、それは会社の問題であって、社員の問題ではありません!
詳しくは「誰もがかけがえの「ある」存在であり、あなたの替えなんていくらでもいますよという話」という記事に書いています。あわせてお読みください。
丁寧に回答しながらこんなことも考えた
転職、独立の方法についてしっかりアドバイスしたつもりです。いずれ辞めるなら早いほうがいいだろうと思いました。
しかし、2つの懸念はありました。
経験上、相談に来ても実際に行動に移す人は少ない。
その会社しか知らずに生きてきて、さらにお子さんがいる。転職未経験者には心理的ハードルは高そう。
転職・独立の可能性は50%くらい。起こるとしても年内かなと。
しかし、翌月には動きがありました。
1ヶ月後に転職を決めていた(早っ
あらためて思ったこと。
優秀な人は判断が早い
極めて平凡な僕の回答に対しても、ちゃんとお礼と報告をする
僕がアドバイスしなくても転職していたと思いますが、背中を押す一助となれたのでよかった
「辞める辞める詐欺」みたいにずっと会社の不満を垂れて何年も行動に移さない人がたくさんいる一方で、仕事ができる人は選択肢があり黙ってスッと転職していくんですね。
今度は僕が退職することになり
それから数ヶ月が経ち、今度は僕が退職の報告をすることになりました。
ひさびさに連絡すると、Zoomで話すことになりました。
Aさんの転職先は僕がよく知る上場企業でした。良縁に恵まれて、顔色がすごく明るかったです。家族との時間も増えたそうで、一番の目標も達成できたそうです。
あらためて「延藤さんのおかげです」と言われましたが、僕は淡白なので「おお、そうですか。良かったですね」くらいの返事しかできなかったです(笑
しかし、その次に「子供との時間が増えて、妻が泣いて喜んでくれました」と言われた。それでやっと「おっ。俺、いいことしたみたい?」と実感を得ました。
自分と同じような人に相談しても突破口は得られない
さて、ここからやっとタイトルについての話になります。
もしAさんが自分と似たような人に相談していたら・・・おそらく反対のアドバイスを受けていたはずです。
「転職して年収が下がったらどうするの?」
「まだお子さんが小さいのに」
「学生時代から1社でここまでがんばって来れたんだから、もう少し我慢すべきでは?」
「あわてる必要はないんじゃないの?」
と言われるのは容易に想像できます。
他者へのアドバイスに責任を持つ必要はない
失敗を回避したいという誰もが持つ心理的な傾向を「現状維持バイアス」と言います。これは非常に強力な認知バイアスの一つで、実生活を送るのに大事なバイアスでもあるのですが、変化が必要な時に大きな障害になります。
変化しないようにアドバイスする人たちは、実は「いい人」です。あなたが失敗する姿を見たくない、という気持ちはあるはずです。
しかし、同時に自分の失敗も認めたくないのです。実は彼らの多くは保身からアドバイスしていることに気づいていません。
ではアドバイスする側の失敗とは何か?
「Aさんに挑戦を促す⇒Aさんが失敗する=自分自身の失敗」と捉える人もいます。
たとえば子どもが挑戦的なことをする際に反対する親は多くいます。繰り返しますが、彼らはいい人です。子どものことを想っています。
しかし、アドバイスする立場としてはバイアスだらけで有害なことが多いです。少なくとも現状から大きく変わる判断についてアドバイスを求めてはいけません。
彼らは「自分事」として、相談者に寄り添います。共感もしているでしょう。だからこそ、自分の失敗も認めたくないのです。
一方、僕はAさんに対しては「他人事」です。実際、他人なのだから当たり前です。お話を聞いて共感は1ミリもしませんでした。
僕はAさんから相談を受けたとき、極めて客観的に情報を吸い上げました。
・考え得るリスク
・現在年収、転職可能な業種と想定年収
・Aさんのスキル
・今の会社に残った場合の立場と年収
・家族の状況(共働きか、子供は何歳で何人かなど)
それらを総合的に見て、自分の経験に照らし合わせて、キッパリと「会社を辞めるべきです。今すぐ準備を始めましょう」と伝えました。
(誰にでも同じことは言いません)
あるいは「そんな無責任なアドバイスをしていいのか?」「責任が取れるのか?」と言う人もいるかもしれません。
はっきり言いましょう。
Aさんがもし挑戦に失敗したとしても僕の失敗ではないのです。
僕には責任はありませんし、Aさんが転職に失敗しても悲しくありません。
これは無責任でしょうか?
僕はそうは思いません。結局、自分の人生は自分で決めるしかないのです。
また短期的な結果を見て、成功失敗を判断することもナンセンスです。
何かを得るには、別の何かを捨てていかなければなりません。
他人に相談して意見を聞くことは時に有益ですが、決定と責任を受けるのは自分だと原則に従えば、他人にアドバイスするときは責任を請け負う必要なんてないのです。
Aさんは僕に訊かずとも同じ道を辿ったと考える理由
とはいえですね。そもそもの話、Aさんは僕がアドバイスしようがしまいが、会社は辞めていたと思います。
というのも僕みたいな経歴・生き方が真逆の人間、しかも業務上の付き合いがない人に相談するというのは、「周りの人では言ってくれない回答を出してくるのではないか?」という期待があったからだと思います。
実際に僕がした「はぁ、なるほど。その会社辞めた方がいいっすね。で、その方法なんですけど」という具体的なアドバイスは、実はAさんにとっては耳障りの"良い"回答だったかもしれません。
もし近しい人のように「たしかに辛いよね。でもここまで頑張ってきたじゃない? この年齢になるとそういうことありますよね。でもいま焦って判断する必要はないよ」なんて無難なアドバイスを受けていたら、がっかりさせていたかもしれません笑
相談しようがしまいが自分で判断していくしかない
ある程度長く生きていれば、必ずどこかのタイミングで壁にぶつかりますし、大きな変化を迫られることがあります。
基本的には自分ひとりで判断して決めましょう。情報が不足して不安だなという場合、まずは同じ悩みを持ったことがある経験者に聞きましょう(あるいはその道のプロなど)。その次に共感してくれない人に聞きましょう。
最後はあなた自身の心の声に従うのです。結果も当然あなたが引き受けるのです。
この記事はがいま道に悩んでいる人の役に立てたら嬉しいです。
以上です。