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米国企業の決算確認方法

割引あり

米国企業の決算確認方法についてまとめます。ウォール街の機関投資家も行っている基本動作となりますので、米国企業へ投資する際には必ず知っておかなければならない知識です。

ある程度年季の入った個人投資家さんであれば、ご自身で決算を確認する事もあり、周知の事実かと思いますが、そうではない初級~中級の個人投資家さんで決算にご興味のある方向けの記事となります。(情報はすべて2023年12月末時点のもの。)

使用しているサイト等は、あくまで私個人が使用しているものなので、もっと良い方法などがあればコメント頂けたら嬉しいです。




①良い決算とは?

①EPS②売上高③ガイダンスのすべてで、事前のコンセンサス予想を上回ったものが良い決算の定義です。ひとつでも取りこぼした場合は悪い決算です。


②コンセンサス予想の確認

では、さっそくコンセンサス予想の確認方法からご紹介します。私が主に利用している2つのサイト(無料で見れます)を取り上げます。

1)Seeking Alphaの場合

1.サイトへアクセスします。

2.検索窓にティッカーを入力して下さい。(今回はアドビをサンプルにして説明)

(Seeking Alphaのトップ画面)

3.Earnnings > Earnnings Estimates タブをクリックして下さい。(右上の「Annural」「Quarterly」 ボタンで通年と四半期の切り替えが出来ます。)

・四半期の場合
右上の「Quarterly」ボタンを選択した時にトップに出てくる数字が翌期のコンセンサス予想です。ここの数字を決算発表前にメモしておき、発表された数字と比較します。

Consensus EPS Estimates: 4.38
→ EPS予想

Consensus Revenue Estimates: 5.14B
→ 売上高予想

画面をスクロールすると、翌々期以降の予想を確認できます。「# of Analysts」はカバーしているアナリストの数です。5人以下など極端に少ない場合は比較してもあまり意味はないので、個人的には無視します。

さらにスクロールすると、翌々期以降の売上高予想が続きます。

・通年の場合
右上の「Annural」ボタンを選択した時にトップ出てくる数字が通年のコンセンサス予想です。

Consensus EPS Estimates: 17.93
→ EPS予想

Consensus Revenue Estimates: 21.51B
→ 売上高予想

四半期と同様、スクロールすると、翌年以降の予想を確認できます。

2)Yahoo Financeの場合

1.サイトへアクセスします。

2.検索窓にティッカーを入力して下さい。

3.Analysisタブをクリックします。

各コンセンサス予想は以下の通りとなります。平均値(Avg. Estimate)を使用します。

Earnings Estimate  → EPS予想
「Current Qtr.」= 翌期: 4.38
「Next Qtr.」= 翌々期: 4.38
「Current Year」=通年: 17.95

Revenue Estimate → 売上高予想

「Current Qtr.」= 翌期: 5.14B
「Next Qtr.」= 翌々期: 5.31B
「Current Year」= 通年: 21.47B

3)注意点

  • コンセンサス予想はその性格上(アナリスト達の予想数字を集計、平均したもの)事前に数値が動きます。なので、私は決算発表直前の数字を確認するようにしています。

  • 業者によって数字が異なります。データを提供する相手を証券会社の方が選んでいるからです。ものすごく古い数字を、そのまま平均値の算出に使ってしまっている場合もあります。個人的には、Yahoo Financeの予想値は低く出る傾向があるので、Seeking Alphaを使用しています。

  • Q4決算発表時に使うコンセンサス予想は年度に注意が必要です。例えば、2023年第4四半期決算時に2024年通年の会社予想が示されますが、上記サイトではCurrent Year=2023年、Next Year=2024年と表示されるので、Next Yearを見る必要があります。(これは次第に解消されます。)


③IRから決算数字を取得

1)サマリー

米国証券取引委員会(SEC)は、国内の全上場企業に、一定の具体的開示項目について示す年次報告書(Form 10-K)及び四半期報告書(Form 10-Q)の提出を義務付けています。加えて、Form 8-Kにより臨時報告書を提出し、各定期報告書の間において、具体的・ 包括的リストに示されている重要と推定される事象を開示する義務が課せられています。そのためウェブ上にIR(Investor Relations)というページが必ずあり、SECへ提出したものを含め決算資料の開示がされています。

(米国に上場している海外企業、例えば中国企業やイスラエル企業などは年次報告書(Form 20-F)及び四半期報告書(Form 6-K)になります。)

参考までに、決算発表時にIRで開示される主な資料を以下に掲載しますが、EPS、売上高、ガイダンスに関しては、Press releaseとPresentationを見ればほぼ対応できます。(中にはガイダンスをカンファレンスコールでしか発表しない企業もあります。例: マイクロソフト、ナイキ)

  • Press release プレスリリース資料

  • SEC filling 8-K 臨時報告書

  • SEC filling 10-K, 10-Q 有価証券報告書

  • Presentation 決算説明会資料(PowerPoint等のスライド資料)

  • 補足資料、Shareholder letter、Non-GAAP開示など

  • Transcript トランスクリプト(カンファレンスコールの文字起こし)

2)サンプルチェック

アドビ(ADBE)を例に、実際に資料を探してみましょう。

1.IRにアクセスする

Google検索で「ティッカー IR」と検索して下さい。

IRに入ると「Financials」や「Quarterly Results」などのタブがあるので、そこへ行くと四半期ごとに資料がまとまっていることが多いです。

2.EPS、売上高、売上高成長率を確認する

2023年第4四半期のPress releaseを開いてみます。

どの企業も冒頭部分にハイライトを載せていることが多いです。すると、売上高は$5.05B、売上高成長率は前年同期比+12%、EPSは$4.27と確認する事が出来ます。

EPSについては、GAAPとNon-GAAPの2種類ありますが、Non-GAAPを採用します。(コンセンサス予想についても原則はNon-GAAPで載っています。)

その他としては、売上総利益、営業利益、マージン、サービスKPIなど、企業にとって重要な指標や、CEOとCFOのコメントハイライトなどが記載されます。

売上高成長率をハイライト部分に記載しない事もあります。その場合、PL(損益計算書)から自分で計算する必要があります。PLはPress releaseに載っています。ない場合でも、8-Kや10-Q/10-Kに必ず載っています。

計算例
 5,048-4,525=523
 523÷4,525=11.558% → +12%

3.ガイダンスを確認する

Press releaseをさらに読み進めていくと、ハイライトの下にガイダンスについての記載があります。ガイダンスとは財務部長が今後の見通しについて発表する目標数値です。(先にご紹介した通り、Press releaseには記載せずカンファレンスコールで言及する企業や、Presentationでしか開示しない企業もあります。)

決算結果は過去の実績なので車の運転に例えるとバックミラーを見ているイメージ、対してガイダンスは今後の見通しなのでナビを見ながら目的地や現地の天気を確認する作業に近い気がします。マーケットは先へ先へと未来を織り込んでいく性質があるので、ガイダンスの良し悪しで株価が乱高下する事もしばしば起こります。

アドビの場合、Press release P2に「Financial Targets」として表記されています。企業によっては「Outlook」「Guidance」「Forecast」などと表記するところもあります。

■翌期(FY24Q1)ガイダンス

 EPS: $4.35~$4.40
 売上高: $5.10~$5.15B

FY24Q1ガイダンス(出典: Press release P3)

■通年(FY24)ガイダンス

 EPS: $17.60~$18.00
 売上高: $21.30~$21.50B

FY24ガイダンス(出典: Press release P2)

④GAAPとNon-GAAPの違いとは?

さきほどのEPSの様に、決算資料を読んでいくと、GAAP(ギャップ)とNon-GAAP(ノン・ギャップ)2パターンの数字が登場してきます。

「GAAP」は会計用語の「Generally Accepted Accounting Principles」の略で、「一般的に認められた会計原則」、つまり、「米国会計基準」を指します。米国の株式市場に上場する企業は、「GAAP」のルールに沿った財務諸表を作成する必要があります。

一方、「Non-GAAP」はGAAPに沿っていないという意味で、「GAAP」ベースの数値から一時的な損益などを除いた「調整後」の数値を、企業側が参考値として開示したものです。「基調の」あるいは「実力の」数値を示すことが目的です。

株式市場では、「Non-GAAP」の数値が重視されます。株価は、様々な社会制度の影響を受けた「会計上の利益」よりも「"経済学的な”利益」「実力ベースの利益」に沿って動くからです。GAAPでは予想外の赤字転落でもNon-GAAPが予想を上回っているケースでは、株価は堅調となることが多いようです。

株式市場は「Non-GAAP」の数値を重視して動きますが、市場で議論が生じることもあります。というのも、「Non-GAAP」は会社側の意見で、「「GAAP」による数値よりも当社の実力をより良く示すと考えますので、ご参考に報告します。」という意味合いのものだからです。

どのような調整を行うかはルールが決められているわけではなく、決算リリース等で「Non-GAAP」の数値に言及する場合は、「GAAP」の数値からどのような調整を行ったかを説明することが義務付けられているのみです。なので、アナリストによっては、会社が公表する「Non-GAAP」が同社を評価する上で適当でないとして、独自の「調整後EPS」を使用することも、ままあります。議論が生じる余地がある点には注意が必要です。

市場でよく話題になるのは、IT企業に多い「株式報酬」の扱いです。IT業界では、株式報酬費用を除いて「調整後EPS」を計算するのが慣例となっています。しかし、このような扱いは保守的でないとして、「GAAP」ベースのEPSで株価評価を考える市場参加者もいるようです。


⑤用語解説

EPS (イー•ピー•エス) / 1株当たり純利益

EPSとは、「Earnings Per Share」の略で、1株当たり純利益(当期利益や当期純利益など)ともいわれます。企業を評価する際に使われる指標のひとつで、1株当たりの利益がどれだけあるのかを示すものです。

EPSは、当期純利益÷発行済株式数の計算式で求めることができます。当期純利益とは、企業が1事業年度(通常は1年間)に上げた収益から、税金費用を含むすべての費用を差し引いた利益のことです。

EPSからわかることは、企業の稼ぐ力「収益力」と「成長性」の2つです。

EPSは企業の規模にかかわらず、1株当たりの利益の大きさを表すので、基本的に数値が高いほど企業の収益力は高いと見ることができます。また、同じ企業の当期EPSと前期以前のEPSを比較することで、企業が順調に成長しているかを判断することもできます。EPSが伸びていれば、前期に比べて成長していると考えられるからです。

EPSの値は企業の当期純利益が増えると上がり、減ると下がるのが基本ですが、発行済株式数の増減によっても変動します。ですので、EPSを使って銘柄の比較を行う際は、株式分割や自社株買いなどによる発行株式数の変動も考慮する必要があります。

なお、EPSには2種類あります。

・Basic EPS
・Diluted EPS

Dilutedは希薄化を意味します。違いは計算で使われている発行済株式数です。Basicは普通株の発行済株式数だけが考慮されているのに対して、Diluted は普通株のほかに潜在株式も考慮されているEPSになります。潜在株式というのは、将来普通株に変換することのできる転換社債やワラント債、ストックオプションなどのことです。Dilutedの方が本来の価値を表した数値になりますのでこちらを使います。


以上、基礎的な部分だけですが、米国企業の決算確認方法についてまとめてみました。細かいところまで書き出すと、かなりの長文になりそうなので、このへんで終わりにします。機会があれば、個別論点ごとの記事も出したいと考えていますので、取り扱って欲しい決算にまつわるテーマがあればコメント下さい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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