僕の夢物語 理想の町1 ~序章 夢の始まり~
僕はこの町を理想の町にしたいと思っていた。
都会から遠く離れ「僻地」と言われ寂れゆくこの町を何とかしたいと考えていた。
高度成長期が終焉を迎え、バブルがはじけ、どんどん疲弊していく町を見るにつけ、何とかしようという思いは日に日に強くなっていた。
そんな僕に好機が訪れたのは、大学時代の友人との再会であった。
谷口吾一は、わずかばかりの資金を元手に会社を立ち上げ、今では全国に数十社をもつ経営者としてその名を馳せていた。
IT産業のせいか、田舎での会社運営も可能であると、中央から遠く離れた僕の町夢野市に会社を設立したいと話があった。
過疎の進む夢野市には雇用の場も少なく、彼の申し出はとてもありがたく感じた。
資金は潤沢にあるようで、めぼしい土地にあたりをつけ、すでにかなりの土地を買い上げているとのことだった。
会社の設立は急ピッチに進み、夢野市の中心部に会社と事務所を設け、更に、少し離れた市東部の広大な土地に製品を保管する倉庫を整備していた。
そもそも彼の会社は、インターネットを通じ、商品を全国各地に販売するもので、今でこそ盛んにテレビショッピングやネット通販が行われているが、それほど普及していないころから先駆けて行っていた。
驚くほどの売り上げを誇り、健康食品や化粧品・精力増強のサプリメントなど少しまやかしい商品もあるものの、地場産品や家電など幅広く販売し、瞬く間に会社の規模を拡大していった。
谷口吾一は、さらなる経営の拡大と彼の野望を実現すべく行動を始めていた。
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