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新創刊『セオリーX(カイ)』at 3/22シラスコミュニティマーケット(序)
2個の者がsame spaceヲoccupyスル訳には行かぬ。甲が乙を追い払うか、乙が甲をはき除ける2法あるのみぢや。
序 本と音楽の引き裂かれ
2025年3月22日、東京都五反田にて第15期ゲンロン総会開催予定です。その一企画「シラスコミュニティマーケット」で、弊紙『セオリーX(カイ)』は「未知の学説/定義」を志向して創刊します。編者はわたくし沖鳥灯、寄稿者は社会人中心に、大学院生、大卒生、学部生となります。内容は、俳句、現代詩、短篇2、論考4~5、レビューという多彩な誌面を目指します。
さて、話は前後しますが、2024年7月10日、Discordサーバー「社会学研究会」が立ち上がりました。メンバーは沖鳥灯、広場沈、三千周介の3名。発足の経緯はわたくしの大学院社会人入学(社会学)のためで、該当専攻の大学生・広場氏と大学院哲学科卒の会社員・三千氏のご協力を仰いだというわけです。が、早々に志望大学の教授より大学院の厳しさを諭され大学院入学の夢は砕け散りました。昨夏わたくしはその挫折から夜の街へ流れて行きます。そこで出会ったのは酒と音楽でした。とはいえ服装の変化から家族にわたくしの「異常行動」は即座に見破られ、2週間にわたる「名古屋遊行」は余熱を残したまま終わりを遂げました。この体験は容易に読書会へみずからを引き戻さずにおりました。本読書会は『聖なる天蓋』『サブカルチャー神話解体』『思想地図〈Vol.5〉』などを取り上げました。次の課題書はモーリス・アルヴァックス『集合的記憶』の予定でした。が、参加者の院試や文学フリマの準備などで延期となりました。その後アルヴァックス読書会は有耶無耶のまま時が流れました。年明けてひょんなことで読書会再開の機運が高まりました。ところがわたくしの音楽活動の本格始動により、自身のDiscordアプリを落とし、これにより他二つのDiscord読書会、さらに読書メーター、フィルマークス、Instagramなども例外ではありませんでした。とはいえPCのDiscordは消えておりません。
ところで音楽への傾倒はわたくし自身を変身させたと思います。まず来るべきライブ活動のため身体を鍛え、毎日数時間リスニングで音楽を身体に沁み込ませる感覚があります。最近はおのれの音楽遍歴を再検討する機会も増えました。具体的には各種サブスクのプレイリストや本ブログの記事、DJXライブ(旧Twitter)などによってです。わたくしは1975年生まれのいわゆるロスジェネ世代。昭和末期の生まれで、少年時代にバブル景気を味わい、思春期のほとんどは「冬の時代」の平成でした。地方公務員と保育士の二男として育ち、物心ついたころには企業城下町(豊田市)の一軒家はモノで溢れ返っていました。戦後の物質的な豊かさを存分に経験した最後の世代なんだろうと思います。が、絶対的な価値はあらかじめ喪失しており、下剋上、天下布武、尊王攘夷、明治維新、富国強兵、大東亜共栄圏、戦後民主主義、高度経済成長などのイデオロギーは何もかも失効もしくは形骸化しており、「価値相対主義」が僕らの世代に伝染病のように蔓延していた印象です。ご多聞にもれずわたくし自身もそうでした。絶対的な善悪は存在せず(冷戦)、徹底した個人主義・核家族による共同体喪失、学歴・職歴・性歴の確固した昭和モデルの刷り込みなどが抑圧装置としてこの世代を規定していたように思います。おそらく平成・令和の教育モデルであろう「個性の尊重」の重視はあまりなかったように捉えております。吉本隆明は宇多田ヒカルの歌詞を「個性的」と評しました。社会的抑圧の最たる対象の「女性」が「ひとりの個人」として懸命に自由に生きることを歌ったということでしょうか。歌はしばしば商品の範疇から飛躍・拡張され、個人的・社会的・象徴的とされてきました。
わたくしは中学で不登校、高卒資格は大検、通信大学中退で、長らくひきこもりという半生です。ゆえに空き時間は存分にあり、その大半を音楽鑑賞・映画鑑賞・読書に充ててきました。なかでも音楽には特別な思い入れがあります。まず音楽との出会いはテレビからでした。特に『電子戦隊デンジマン』(1980‐1981 東映)の主題歌「ああ電子戦隊デンジマン」(歌 成田賢)は印象的な楽曲です。サビの「デン デン デンジマン デン デン デンジマン」は正直不気味で子供ながらに恐怖を覚えました。ところで2024年9月10日に音楽ユニット「電気椅子」を結成しました。主にAI音楽で制作しています。その代表曲のひとつ「電子の子」は『天気の子』『推しの子』のパロディとして命名しましたが、述懐すれば『電子戦隊デンジマン』の強い影響があるのかもしれません。
さて、本誌でわたくしは編者の務めとともに「盗用芸術時代の技術——ガールズバンドアニメ、B'z、ドッペルギャンガー」(仮)という論考を上梓予定。引き裂かれ気味の音楽と出版の統合が目標です。もともと弊版元は同人誌出版のサークルとして立ち上がりました。現在の出版と音楽配信という事業内容となったのは2022年12月の音楽ユニット「学年集会」結成が大きな転機となりました。そこからの派生ユニット「電気椅子」は、これまで1stアルバム「bay city in the dark」(2024年10月26日)、2ndアルバム「night walker」(2025年1月24日)の発表となります。26/27曲がAI音楽生成です。オリジナルのDTMは「go to the hell」(『night walker』)の一曲に留まります。これらの音楽活動と出版作業の両立は非常に難しいと思いました。
その点を踏まえ明日(2/16)の「定義/学説のカウンターとは何か」(仮)でお伝えできればと願います。
writer:沖鳥灯
illustrator:匿名潟嬢姫