侠客鬼瓦興業 第4話チェリーボーイ
めぐみちゃん……
銀二さんから聞かされたその名前は、スーツ姿でさっそうと働くという夢を打ち砕かれ、パンチパーマにされてしまった僕にとって、唯一の希望の光だった…
(めぐみちゃん、いったい鬼瓦興業とは、どういった関係なんだろう?…)
そんなことを時々頭に浮かべては、ホンワカした笑顔でポーッとなり、そのたびに銀二さんからどやされ…、それでもどうにか、僕のテキヤとしての第一日目はぶじに終わった。
僕は今日一日で起こっためまぐるしい事件の数々と、なれないテキヤの仕事にへとへとに疲れながらも、銀二さんの言いつけどおり、店のかたずけをしていた。
そこへ、今日の売り上げを高倉さんの下へ届け終えた銀二さんが戻ってきた。
「おい、おつかれさん、今日は売り上げよかったからよ、高倉の兄貴おどろいてたぞ、吉宗おまえなかなか才能あるかもな…」
「え?才能ですか?…ハハ…」
銀二さんの言葉に、うれしいような、悲しいような、そんな複雑な気持ちで僕は笑った
「そうだ、あっ、あの…銀二さん、さっき話してくれた、めぐみちゃんって、いったい?」
僕は思い切って尋ねた…がっ…
「ねえー、銀ちゃんー、終わったー」
僕の声をさえぎるように、金髪、へそだしルックにミニスカート姿のイケイケレディースという女性が現れた…。
「おー、ヤリ美か…、なんでえ、そんなに俺の真珠入りのマグナムが待ちきれないのか?」
銀二さんは、腰をカクカク振りながら、ニンマリと笑った…
「ばっかじゃないの、もう…、それにあたしはヤリ美じゃなくて、安美だっての・・・」
と少し怒りながらも、その女性は銀二さんの腕に手を回し、ベタッと寄り添いながら僕の方を見た…
「ねえ、銀ちゃん、この彼氏新人さん?」
「おう、吉宗ってんだ、」
「へー、すごいー、いい男ー」
イケイケレディースの安美はそう言うと同時に、銀二さんから離れて、今度は僕に身体をすり寄せてきた…、
「あっ、いやっ…ちょっと…」
僕はその色っぽさにドキドキしながら、顔を真っ赤にして後ずさりした
「逃げなくてもいいじゃない、ねえ、今度私とエッチしようよー、お兄さん~…」
そう言いながら、安美は僕の股間をタッチしてきた
「ひゃーーー!?」
僕は思わずそんな声をだしてしまった
「ぶあはははははは、ひゃーってお前、なんて声だしてんだよ…」
「本当~、ちょっとからかっただけなのに、可愛いー、この子ー…」
銀二さんは、股間を押さえて真っ赤になっている僕を見ながら、大笑いしていたが、ふっと何を思ったか真顔で
「お前まさか、童貞?」
突然超恥ずかしいことを尋ねたきた…
「えっ!?……」
僕は更に顔を真っ赤にしながら、無言で額から汗をボタポタと流しはじめた…
「うっそーーーーー、おまえその年で童貞なのー!?」
銀二さんと安美は信じられない動物をみるような目で、僕をまじまじと見つめた…
「今時いるんだな、こんな奴って…」
「い、いますよー、いっぱい、いますよー!」
僕は頭のてっぺんから出すような甲高い声で、一生懸命二人に答えた…
「そうか、おまえ、童貞だったのか…、それはすこし健全じゃねえなー、そのうち何とかしてやんねーとな…」
銀二さんは腕を組みながら、ニンマリ微笑んだ…
「ねえねえ、そんなことより仕事終わったんでしょー、銀ちゃん…、早く行こうよー」
「何だよお前、やっぱ俺の真珠入りが、恋しいんじゃねえかよ…」
「馬鹿じゃないのもうー」
そういいながらもイケイケレディースヤリ美、じゃなかった安美は銀二さんの腕にぴたーっと体を擦り付けていた
「吉宗、悪いけど、こんな訳だから、鉄と会社帰ってろな…、姐さんには少し遅くなるって伝えといてくれよ…」
銀二さんは僕にそう告げると、ヤリ美の肩を抱いて、暗がりの中へと消えていった…
「あっ、あの、銀二さん…、一つ聞きたい事が…めぐみちゃんって、いったい?…」
あわてて銀二さんを呼んだが、返ってきた答えは…
「いやーん、もう銀ちゃんったら、エッチー……、あ~ん、あぁ~ん…」
暗がりでもだえる、女性のあえぎ声だけだった…
「……だっ、ダメだ…」
結局、僕にとってめぐみちゃんという存在は、謎のままで終わってしまった…
と、その時、僕は背後から突き刺さるような恐怖の視線を感じた…
「!?」
振り返るとそこには、じーっと僕を見ながら、不気味な顔で突っ立っている、金髪の鉄の姿があった…
つづく
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