侠客鬼瓦興業 第8話、めぐみちゃんともっこり吉宗くん
「正負の法則」
人生は良いことと悪いことの繰り返し・・・
僕は以前そんな言葉を、金髪のすごい服の人が、テレビで話していたのを見たことがあった。その時は、何のことか良く分からなかったけれど、鬼瓦興業にもどった僕はそのことが、事実だったと少しだけ分かる気がした。
思いかえすと、朝の出社途中で、犬のウンチを踏んだところから、まさかのテキヤ就職に、パンチパーマ姿への変身、おまけに金髪の鉄のまきぞえを食って、おでん男たちにボコボコにされるありさま。それはまさに僕の人生にとって史上最悪の負のできごとだった。
しかし、今の僕は幸せだった…
それは僕の目の前に、やさしく傷の手当てをしてくれている、憧れのめぐみちゃんの姿があったからだ・・・。
「ひどい傷、ちょっとしみるけど、我慢してね・・・」
めぐみちゃんはそう言いながら、僕の傷口をやさしく消毒してくれた。
「あ、 痛たた!」
「あ、ごめん、大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
「もう少しだからね・・・」
めぐみちゃんはそういいながら、美しい指先に握られた脱脂綿で僕の顔を消毒してくれた。
僕は手当のために、何度も近づいてくる、彼女の可愛いすぎる顔に、すっかり見とれてしまっていた。
愛らしい瞳、美しいピンクの唇、そして彼女の甘い香りにとろけながら、
(何時までもこの幸せの時間が終わらないで欲しい、)
僕は、彼女の前にちょこんと座り、でれーんとした顔でそう願っていた。
しかし、そうはイカのちんちんタコが引っ張る、僕とめぐみちゃんの幸せの時間を邪魔するかのように、聞き覚えのある大きな声が、事務所の入り口から響いてきた
「わーはっははははは、若人よー、チンピラ相手に、派手にやったらしいなー!」
見ると、ど派手なセンスをパタパタさせながら、どしどし歩いてくる、ジャージ姿の社長の姿があった。
「鉄から聞いたぞー、驚いたなー、まるで鬼神のごとき強さだったそうじゃないか、弱々しいお坊ちゃんかと思ったが、人は見かけによらんもんだなー、若人よー!」
社長は笑いながら僕の傷口をその大きなグローブのような手で、叩いて来た
「びえー痛ーーーーー!」
僕は痛みから飛び上がってしまった。
「おー、すまんすまん若人よー、がはははははは!」
社長は大笑いしながらめぐみちゃんの方を向いた
「めぐちゃん、そろそろ飯にしないと、遅くなってしまうぞ。」
「でも、おじちゃん、もう少しですから」
めぐみちゃんは、そういいながら薬箱から絆創膏をとりだそうとした。
「あー、この程度のキズ、そんなもん、いらん、いらん、こんなもん、こうすれば治る!」
社長は、そのグローブのような手にペッとつばを吐きかけ、僕の顔のキズにぬりつけてきた。
「うわーひゃー!」
僕は目玉をおっぴろげて悲鳴を上げてしまった。
「なんじゃー若人、変な声だしおって、ほれ、もっとたっぷり、つけちゃるぞー」
社長は笑いながら、さらにつばを両手にぺっぺと吐きかけて、僕にせまってきた。
そのときだった、
「ちょっとーおじちゃんったら!」
あわてて、僕と社長の間にめぐみちゃんが割って入ってきてくれたのだ。
べっとりと唾のついた手を広げながら、社長は一瞬キョトンとした顔をしていたが、やがてニヤリと微笑むと
「あれー?めぐちゃん、やけに、この若人の肩をもつじゃないか?」
「え?」
「おー、そうじゃ、そうじゃー、あの面接の日以来、何時来るのかーなんて、楽しみにしとったからのー、おーおー、そうかそうか・・・」
「もう、おじちゃーん!」
そういいながら一瞬めぐみちゃんの顔がポッと赤くなったのを、僕は見てしまった。
「…………!」
僕は社長のつばきのべっとり付いた顔を真っ赤にそめ、心臓をばくばくさせながら、そーっとめぐみちゃんを見た。すると彼女も、恥ずかしそうに僕のほうをちらっと見て、一瞬、ふたりの目と目がぴたりとあってしまった。
「あっ!…は、はは…ははは…」
僕は恥ずかしさと緊張のあまり、まるで時代劇にでてくる、気味の悪いお公家様のような笑顔で彼女に微笑んでしまった。
「ぷー!!」
めぐみちゃんは急にふきだして笑うと
「もう、なんて顔してるのー!」
恥ずかしそうに真っ赤になって、僕の顔へ手にしていた消毒液をブシューっと吹きかけてきた。
「ぐわーーーいたたー!!」
僕は傷だらけの顔に消毒液をぶっかけられた痛みで、顔をおさえてぴょんぴょん会社中を飛びまわった。
「あー、ご、ごめん!」
「いや、だ、大丈夫です、これくらい…ははは」
「もう、おじちゃんが変なこと言うから…」
めぐみちゃんは、はずかしそうに社長を見た。
「ぶははははは~!」
社長は嬉しそうにしばらく笑っていたが、やがて
「それじゃ先にいっとるぞ!」
そう言うと事務所の外に向かってどかどかと歩き出した。
僕は消毒液まみれになりながら、これでまた、めぐみちゃんと二人っきりの幸せの時間を味わえる。と思った時、社長は振り返り、僕のある一点を見つめて一言つぶやいた。
「どうでもいいけど、若人よ、お前、わしが入ってきた時から、立ちっぱなしだぞ。」
「えっ?」
「だから、立ちっぱなしだぞ…」
社長はその大きな指で僕の股間を指さし、ニヤッと笑った
見ると僕のあそこは、みごとにピンコ立ちして、ズボンがもっこりと盛りあがってしまっていたのだった。
「ぶわー!?」
僕はあわててめぐみちゃんを見た、するとそこには真剣な顔で僕のもっこりしたあそこを見ながら、無言で固まっているめぐみちゃんの姿があった。
「あー、いや、あのこれは!」
「やだーもう!!」
めぐみちゃんは真っ赤になって顔をそむけながら、またしても持っていた消毒液を僕の顔にブシューっと吹きかけてきた。
「ぎゃーーーーーー!!」
「親父さん、何っすかこの騒ぎはー!」
こともあろうに騒ぎを聞いた銀二さんと鉄、おまけに社長の奥さんまで、来なくいていいのに、駆けつけてしまった。
「おう、お前らかー、見ろあの若人のイチモツ、すっげーだろ、がはははは」
「うわ!なんだ吉宗、めぐみちゃんの前でそりゃーまずいだろー、ははは」
「いやだよーこの子ったら、でもけっこう立派なもの、持ってるじゃない」
「…いやー…、さすが兄貴っす、…そ、そっちの鬼怒りも、半端じゃねえっす!」
真っ赤になっためぐみちゃん、その周りを見事なピンコ立ち姿で飛び回っている僕、そしてその姿をうれしそうに眺める、侠客鬼瓦興業のこわーい人たち…
入社初日、僕はとんでもない恥ずかしい醜態をみんなの前でさらしてしまったのだったのだった・・・。
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