侠客鬼瓦興業 第20話 閻魔の娘
「パパ…、閻魔のハゲ虎がパパ…」
僕はあまりの驚きに、鼻血まみれの顔で茫然とたちつくしていた。
何とめぐみちゃんの正体は、無実の罪で指名手配にあっている悲しい美少女ではなく、鬼刑事、閻魔の虎三の娘だったのだ。
「そんな、まさか、だって…」
僕はあまりにもギャップのありすぎるハゲ虎とめぐみちゃん親子を、交互に眺めていた。
「あー、そうか、吉宗君知らなかったんだね、実はこのうるさいおじさんが私のパパなの…」
めぐみちゃんはそう言いながら、ハゲ虎を指さした。
「うるさいおじさん!?」
「このバカ者ー、父親に向かって、うるさいおじさんとはなんじゃー、うるさいおじさんとはー!!」
めぐみちゃんは、怒っているハゲ虎をフンと軽くあしらうと、僕の前に来てそっとしゃがみこんだ。そしてポケットからハンカチを取り出し、僕の鼻血を拭いてくれた。
「ひどい怪我、ごめんね、吉宗くん、パパのおかげで、こんな目にあわせてしまって」
「あっ、めぐみちゃん、ハンカチ、血がついちゃうよ…」
「いいの、ハンカチなんかより吉宗くんの方が大切なんだから…」
「えっ!!」
めぐみちゃんは、自分で言って恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしながら微笑んだ。
「め、めぐみちゃん」
僕は興奮から止まりかけた鼻血を、ふたたびぼたぼたたらしながら、めぐみちゃんを見つめた。
「あー、もう、また鼻血が出てきちゃたじゃない」
めぐみちゃんは、僕の鼻を拭いてくれた。
そして僕たちは頬を染めながら、じっと見つめ合った。
僕は幸せだった…。本当に幸せだった・・・。
しかし、僕は幸せのあまり、大切なことを忘れていた。それは、僕たちの光景を怒りに満ちた顔で閻魔のハゲ虎、めぐみちゃんのお父さんが見ていたことだった。
「離れろ…」
ハゲ虎は腹の底から絞り出すような、恐ろしいだみ声で僕たちに呟いた。
「フン!」
めぐみちゃんはハゲ虎の言葉を無視すると、僕の腕に手をまわした。
「ぐおあーーーーー!」
ハゲ虎は驚きとともに、丸い顔を膨張させながら怒りをあらわにした。僕はそんなハゲ虎の恐ろしいい形相に、背筋が凍る思いだった。
「あ、あの、めぐみちゃん、お、お父様が見てるから、こういうことは、ははは…」
めぐみちゃんは、僕の腕をにぎりながら、ぷうっと頬を膨らませると
「えー、なんでー、かまわないじゃん、パパなんか関係ないんだから…」
今までとは別人の、まるでだだっ子なようなしぐさで、回した僕の腕に身体をすりつけてきた。
(えっ!?)
めぐみちゃんの柔らかい胸が僕の腕に・・・
(いっ、以外に大きい!)
そう思ったとき、僕の節操のない下半身はうずうずし始めた。
(まずい、このままだと昨夜のように、ピンコ立ちしてしまう。)
僕は危険な下半身のうずきを、必死にこらえながら腰を後ろに引くと、目の前をチラッと見て、ギョッと震え上がった。
そこには、熱気球のように顔を膨張させながら、すさまじい形相で僕を睨んでいるハゲ虎の姿があった。
「ひぃ~ぃぃぃぃ!」
僕はその恐ろしさに、カタカタと震えながら、めぐみちゃんに訴えた。
「め、めぐみちゃん…、お父様が、お父様が…、まずい、これはまずいよ、ははは」
「えー!!ひどい、さっきは、私にどんな秘密があっても好きだって言ってくれたじゃない、あれはウソだったの?」
めぐみちゃんは両腕で僕の腕にしがみつくと、さらに彼女のやわらかい胸をすり寄せてきた。
(どわー、ダメダメ、そんなことしたら・・・)
僕の逸物は我慢の限界を迎え、ムクムク立ち上がり始めた・・・
(静まれ!静まれ!静まれー!)
僕は必死に耐えた、が、こんな危機的状況にもかかわらず、めぐみちゃんは僕の間近に顔を寄せると
「ねえ、ウソだったの?」
しっとりした声と、潤んだ瞳で見つめてきた。
間近に見る彼女の瞳、かわいいピンクの唇、花のような香り・・・
(もう、だめだ・・・)
とうとう僕の逸物は、完全にピンコ立ち状態と化してしまった。
(まずい、これはまずい!)
僕は、ピンコ立ち状態が彼女にばれないよう、必死に腰を引いてこらえようとした。
「好きって言ったのか?」
「えっ?」
憎悪に満ちたダミ声と異様な殺気に、僕は恐る恐る視線を前に向け、ぞっと震え上がった。
そこには、異名の通り閻魔大王と化したハゲ虎が、青白い顔でこっちを見ていたのだった。
「小僧、好きっていったのか?」
「いや、あの、それは?」
「あの、それは、じゃねえ、めぐみに好きっていったのか?」
「いや・・・」
僕は恐怖で言葉を失ってしまった。
閻魔大王化したハゲ虎は、冷めた視線を僕の下半身に移した。そして巨大化した僕の股間に目を止めると
「このエロガキが!」
顔を真っ赤にして怒りをあわらにした。そしてその背後には憎しみの炎がメラメラと燃え上がっていた。
「ぐぅゎー!」
僕は恐怖のあまり、逸物をおっ立てたまま、またしても金縛り状態に陥ってしまった。
「吉宗くん、あれはウソだったの?」
めぐみちゃんは、僕がそんな状態にもかかわらず、潤んだ瞳でたずねてきた。
「・・・・・・」
「ウソだったの?」
そう言いながら、今度はめぐみちゃんの表情がみるみるうちに変わり始めた。
(・・・えっ?)
なんと、めぐみちゃんの背後にもハゲ虎と同じ真っ赤な炎がメラメラ燃え始め、やさしかった彼女の顔が、「閻魔大王の娘」のようにに変わりだしたのだ。
(ひーーー!)
僕がめぐみちゃんの変化に青ざめたとき、彼女はいっしゅんハッとした表情をうかべた。
そして慌てて、「ふぅー!」とため息をついた・・・
するとめぐみちゃんの顔はもとの優しい姿にもどっていった。
(えっ!今のはいったい・・・)
僕は金縛り状態から、目だけをぱちくりさせ
(気のせい?今の 怖い顔のめぐみちゃん・・・、気のせいか・・・)
心でそう言いながら、じーっと彼女を見ていた。
「ウソじゃないよね・・・。さっきの言葉、信じていいんだよね・・・」
めぐみちゃんは悲しそうに僕を見つめた。
(うん、うん、あれはウソじゃない・・・)
そう言いたくても、僕は声を出すことができなかった。
そんな中、めぐみちゃんはハゲ虎の怒りに、さらに油を注ぐかのような言葉を僕に続けた。
「愛してますって言ってくれた言葉・・・、あれもウソじゃないよね?」
みぐみちゃんは目に涙を浮かべていた。
閻魔のハゲ虎は、彼女の悲しそうな様子を目にし、さらに怒りの炎を燃えたぎらせると
「こ、この小僧・・・。愛してますって・・・、ワシの娘にそんなウソをついたのか?」
(ち、ちがいます!ちがいます!)
僕はそう言いたかったが、言葉を発することができなかった。
「この詐欺野郎が、愛してますって、ウソをついてまで」
ハゲ虎は、僕の大きくなった逸物に目を移すと、背後の火炎をさらに巨大化させながら、鬼の形相で睨んできた。
「もう…、ダメだ…このエロスケコマシ詐欺野郎・・・」
ハゲ虎はそう呟くと、スーツの胸に手を入れた。
(えっ?)
僕は金縛り状態のまま、ぞっと寒気をかんじた。
そして、その数秒後、
「このスケコマシ詐欺野郎」
ハゲ虎はふたたびそう言うと、胸の中からさっとその手を取り出した。
(ぐえ?)
見るとその手には、38口径の銀色に輝くピストルがしっかりと握られていたのだった。。。。
つづき「吉宗くん愛の復活!」はこちら↓
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