ボルボが中国事業を完全所有する?
おそらく、ロイターが伝えたこの記事を読んでも、多くの人は首をかしげることでしょう。
実は、中国では、自国の自動車産業を守り、さらに海外の先進技術や生産手法を取り入れるため、海外自動車メーカーに対して合弁事業を通じた自動車生産を義務付けています。
そのため、成都と大慶にあるボルボの生産工場、中国の販売会社、上海の研究開発施設は、中国企業との合弁事業だったのです。
実は、この合弁事業の義務化が2022年に撤廃されるとのこと。
なぜ、そんな規制緩和が許されたのか?
もちろん、一義的には、既に海外の自動車メーカーから学ぶことはもう無くなり、中国産メーカーが力をつけてきたことがあるでしょう。
さらに、今回のボルボのケースで言えば、もともと合弁先で弱い立場であったはずので浙江吉利控股集団が、実はボルボの株式を取得して、今や親会社になっていることが挙げられるでしょう。同集団は、ダイムラーの親会社でもあり、今や世界の二大ブランドを所有しつつ、自らもメーカーを営むホールディングカンパニーなのです。
つまり、子会社のボルボに、孫会社の中国事業の株を買い取らせて、シンプルな所有形態に切り替えたわけです。実質的な所有・支配関係は変えずに、ボルボ事業を統一して経営効率とブランド力を高めようと考えたのでしょう。もちろん、孫会社の株式売却で親会社はキャッシュを得ることができます。
さらには記事にあるように、ボルボの株式公開で、さらに上場益を得られれば、その資金でさらに他の自動車ブランドを買収するかもしれません。
あるいは、EV用電池などの主要部品の研究開発に資本投下した上で、グループ全体で共用することで、グループ全体のコストパーフォーマンスを上げる戦略かもしれないのです。
小さなニュースに見えますが、自動車産業の再編成が進む予兆となるような記事だったのです。