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にぎやかな未来
ジョン・ケージの「4分33秒」の話を
坂本龍一さんにまつわる話の中で聞いた。
私が思い出したのは
筒井康隆の「にぎやかな未来」だった。
無音のレコードをお金を出して買わなくてはならない。
一時間の無音のために10万円。
町中にCMが流れ続け
ラジオを切ってはいけないという未来。
配られる無料のレコードには、10秒ごとにCMが入る。
お金を稼がなくても、生きてはいけるが、うるさすぎる。
そこで、CMの入らないレコードを買いに行く。
私の持っている文庫は平成7年のものだ。
その時点で65刷
初版は昭和47年である。
「お金を稼がなくても、生きていける」世界。
むしろそういう世界は来ると思っていたのか、と意外。
それから50年経った今、戦時中のように
飢えている子供もいるらしいのだ。
「にぎやかな未来」はショートショートに近い集である。
ショートショートは色々な人のを読んだが
「あれ誰のだったか」と思い出せないものが
筒井作品だったりすることがよくある。
この本の中に収められている
「帰郷」「怪物たちの夜」「腸はどこへいった」
神様のシリーズなど今読み返しても、楽しめるのである。
当時の10万円は今の何倍くらいの感じだろう。
何しろ、新宿下北沢間が30円の時代だから。
筒井康隆も、ジョン・ケージを聞いたんだろうか。
無音だけど。
そう言えば、山下洋輔のコンサートに来ているのを
見かけたことがあったかもしれないのだった。
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