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#006 テヌートの奏法
はじめに
以下に記す奏法はあくまで私の思う基本的な考え方であり、すべてにおいてその奏法が正しいわけではありません。
なぜならば作曲者の記号に対する解釈の仕方、また、その国や地域、時代、音楽家の解釈等により奏法が変わるからです。
【テヌート】
tenuto テヌート(イタリア語)
テヌートは「音の長さを十分に保って」という音楽用語です。
言葉の意味はとてもシンプルで簡単ですが、具体的にはどのように演奏したら良いか理論立てて説明していきたいと思います。
そしてもう一つ、「テヌート」と付く、演奏するときによく出てくる用語が3つあります。
「tenuto(テヌート)」
「sostenuto(ソステヌート)」
「ritenuto(リテヌート)」
この3つ、一体何が違うの?
とよくわからずに演奏している人も多いでしょう。
この3つの「テヌート」についてもあわせて説明していきましょう。
【テヌートの考え方】
基本的に音の方向は「膨らむ」か、「減衰する」か、「同じ音量で持続する」か、大きく分けてこの3通りに分かれます。
テヌートの演奏方法、「音の長さを十分に保つ」ためには、「膨らむ」ではどこかで音量の限界が来てしまい、「減衰する」では音が無くなってしまい、どちらも同じ状態を持続することができません。
実はテヌートの演奏方法は、記号の形からも想像することができるのです。
「横一直線」になっている形からもわかる通り、「音を保つ」、持続させるためには必然的に横一直線に「同じ音量を持続させる」しか方法はありません。
つまりテヌートの演奏方法は、その音の立ち上がりから、その音の終わりまで、膨らみも減衰もせず、「一定の音量で演奏する」ということが原則なのです。(ピアノでの奏法はまた別の機会に説明します。)
少し難しい話ですが、「#001 フレーズってなに?」で触れた通り、演奏は常に膨らむか減衰するかを繰り返しており、基本的に一定の音量で音が鳴っていることはありません。なので、そのどちらでもない「音を同じ音量で持続させるテヌート」が、フレーズの中でとても効果的に音楽を浮き上がらせることができるのです。
【なかなか知らない3つのテヌート】
さて、次に楽譜によく出てくる3つのテヌートについて説明をしましょう。
「tenuto(テヌート)」
「sostenuto(ソステヌート)」
「ritenuto(リテヌート)」
まずはじめに、「テヌート」と「ソステヌート」ですが、基本的な演奏方法に違いはありません。
違いは、テヌートは一音に対しての指示であるのに対し、ソステヌートはそのフレーズ全体に対する指示であるということです。なので、ソステヌートの記号は基本的にフレーズの頭につくのです。
この二つは、どちらも音量に関する指示記号というわけです。
それに対して、音量だけではなく音価の指示記号も加わるのが「リテヌート」です。
こちらは「急に速度を緩める」、「ただちに速度を遅くする」という意味ですが、イタリア語で「リ(ri)」が付く場合、「再び」とか「強調」という意味があります。
「リテヌート」が付いた音は、付いていない音より時間をかけて演奏します。
つまり、「テヌート」、「ソステヌート」が、音量の指示記号であるのに対し、「リテヌート」は、音量の指示に加えて音価の指示記号となるのです。
【間違いやすいリテヌートとリタルダンド】
ちなみに、間違いやすい例として、リテヌートとリタルダンドの演奏方法はまったく異なります。
「リタルダンド」はだんだん遅くなって行くのに対し、「リテヌート」はその記号がついた瞬間すぐに遅くなりますが、付いている間は遅くなったままのテンポで演奏し、リタルダンドのようにだんだんゆっくりにはなりません。
【まとめ】
1.テヌートは音量の指示記号。
2.テヌートは膨らみも減衰もせず、同じ音量で演奏する。
3.テヌート記号( "-" や "ten." )は一音一音に対する指示記号。
4.ソステヌート記号( "sostenuto" や "sost" )はフレーズ全体に対する指示記号。
5.リテヌートは音量と音価の指示記号。
6.リテヌートがついた音は音価より長く演奏する。
今回は、「テヌート」についての解説でした。
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![奥村伸樹|指揮者](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51542144/profile_6b2f725a4bbea7adf318542fa5e0b713.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)