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読書感想 「モチベーション3.0」
ある読書会に参加した際、紹介され、興味を持ったのが本書である。初版が2010年と10年以上前の書籍であるものの、”生産性”が求められる現在、そして、”創造性”が求められる将来に向けて、示唆の多い内容であった。
1.モチベーション3.0とは
本書の題名となっている「モチベーション3.0」とは何か。書籍の”そで”の部分に記載があるので抜粋したい。
「モチベーション3.0」とは何か
※コンピューター同様、社会にも人を動かすための基本ソフト(OS)がある。
モチベーション1.0:生存(サバイバル)を目的とする人類最初のOS。
モチベーション2.0:アメとムチ(信賞必罰)に基づく、与えられた動機付けによるOS。
モチベーション3.0:自分の内面から湧き出る「やる気(ドライブ)」に基づくOS。
所謂「内発的動機づけ」のことになる。
そして本書では、アメとムチ(モチベーションアップ2.0)はアルゴリズム的な仕事には効果を発揮するが、ヒューリスティックな仕事には、むしろマイナスに作用する恐れが多いことを説いている。そして、創造性を必要とされる仕事が増える昨今、内発的動機付け(モチベーション3.0)の有用性が高まっていると。
2.「アメとムチ」が創造性を失わせる
モチベーションを上げるための「アメとムチ」が、モチベーションを下げる結果を生み、創造性を失わせる。そういった研究結果が本書では複数挙げられている。その1つである「ロウソクの問題」(1940年代に心理学者カール・ドゥンカーが考案)について、ここで挙げさせていただく。
左の図のような状態で、「テーブルに蝋がたれないように、ロウソクを壁に取り付けてください」という問題を投げかける。画びょうで壁に取り付けようとしても出来ない。蝋をとかして壁に取り付けようとしても出来ない。
正解は右の図のように、画びょうを入れていた箱を違う目的で使うというものだ。つまり、発想の転換で解決する問題である。
この問題、報酬の有無によって解決時間に差異が生じるという結果を導いている。「解決時間が参加者全体の上位25%に入っていれば5ドル、一番早く達成すれば20ドルもらえる」という報酬があった場合と、何もなかった場合、報酬を提示されたグループの方が、無報酬のグループに比べて回答に3分半長くかかった、というのだ。なんと、インセンティブによる動機付け(モチベーション2.0)が、創造性が鈍らせてしまったのだ。
3.創造性を上げるには「自律性」が重要
では、創造性を上げるのに重要な要素は何か。本書では「自律性(オートノミー)」だと述べている。自律的なモチベーションは、全体的な理解を深め、成績が向上し、学校生活やスポーツで粘り強さが強化され、生産性が上がり、燃え尽きるケースが少なくなると。この項目についても、複数の事例が挙げられているのだが、私の印象に残った事例を1つ挙げさせていただく。それは、グーグルの「20%ルール」だ。
グーグルは1998年の創業当初から1週間に1日、主要業務とは異なるテーマに取り組むことを推奨している。そして、グーグルが提供する新サービスの半数以上が、この完全に自律性に任された時間から生み出されているという。グーグル・ニュース、Gメール、グーグル・トーク、グーグル・スカイなどがそれにあたる。この事実からも、自律性を重要視することが、創造性の向上に繋がることは明白だと感じた。
人の基本的な性質は、好奇心に満ちて自発的である。人はゲームの駒ではなくプレーヤーになるために生まれてきた。これが著者のスタンスである。故に管理型の「モチベーション2.0」では自律性を養うことには繋がらない。課題や時間、方法、チームを任せることが目的にいたる早道だという。つまり創造性を高めるには「モチベーション3.0」が欠かせないと。
4.モチベーションを目覚めさせるには
創造性を向上させる「モチベーション3.0」、つまり「やる気」を引き出すにはどうしたらいいか、具体的な手段についても記述があり、興味深い内容ばかりだったので、いくつか挙げたい。
1)自分のモチベーションを上げるには
・まず大きな質問から始める「自分をひと言で表す文章は?」と。そして毎晩眠りにつく前に小さな質問をする「昨日よりも、今日は、進歩しただろうか?」と。
2)組織の能力を向上させるには
・上司がコントロールを手放す。そのためのステップは「①目標設定を一緒に行う」「②支配的な言葉を用いない」「③時間を確保する(部下が自由に懸念事項を話せる時間を設ける)」。
・メンバー全員が「目的は何か?」と問い、オープンにする。
3)子供が内的満足感を得られる人間になる手助けをするには
・宿題が本当に学習のためになっているのか、単に子供たちの自由な時間を奪ってないか、確認する。
・お小遣いと家事の手伝いを結び付けない(行動の基準と報酬の違いを学ばせる)
・正しい方法でほめる(交換条件付きの報酬となって創造性の芽を紡いでいないか意識する)
5.おわりに
「内発的動機づけ」の重要性は昨今よく言われており、意識するところであったが、本書は各種研究結果などをベースに論理的に示す内容であり、体系的に理解の深まるものであった。そして、これが10年以上前の著書であることにも驚かされた。
話題となっているワードを表層的に捉えるのではなく、理論立てて理解することの重要性を感じると共に、ひょっとしたらすで「これから」の事態を打開する新たな学びが書籍によって得られるのではないかという気もし、時代に即した知識をインプットしていくことの重要性を感じさせられた。そんな書籍であった。
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![小寺伸明 | 会社員 兼 プロコーチ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51664226/profile_b400eb817bf86a31066cf71fbf30d992.jpg?width=600&crop=1:1,smart)