◆「古屋 郁 銅版画展 ~ネコの時間~」開催前と後の為の予習復習note。
こんにちは、のぶちかです!
さて、2020年8月8日からは2年ぶり2回目となる古屋 郁さんの銅版画展をJIBITAにて開催します。
特に今回はサブタイトルに
~ネコの時間~
と銘打たれているだけあって、ネコ様の作品も多数登場です!
ネコ好きの方はどうぞお楽しみに♪
⇩古屋さんによる銅版画エッセイはこちらから
◆告知
「古屋 郁 銅版画展 ~ネコの時間~」
会期:2020年8月8日(土)~8月16日(日) 13時~18時
※期間中の14日(金)はお休みです。
会場:JIBITA
オンラン販売:8月8日22時スタート
銅版画の作り方
⇧銅版画ができるまでを超簡単に動画にしました⇧
さて、JIBITAの壁面には常設で古屋さんの作品が飾ってありますが、銅版画をあまり御存知ない方はデッサンによるイラストやデザイン画の様に見られる方も少なくありません。
特に古屋さんの作品には色が少なく、複雑な作業はしつつもパッと見の印象はシンプル。
それ故、価格を見てビックリされる方も少なくありません。
しかし!
銅版画はデッサンではありません。
あくまで版画なので、その工程は
「彫って彫って彫りまくる!」
事が基本になります☝
⇧彫りまくられた銅板(☝の子はJIBITAネコの『しらたま』君)
また作品によっては彫る前に切るところからスタートします⇩
⇧予め決めたアウトラインに沿って銅板を切り取ります。
それを彫ると・・・
⇧こんな感じ。
彫る工具も色々で、
⇧工具色々。
太い線、細い線、ワシャワシャっと入れる陰影(←ボキャブラリー…泣)等々、表現したいものによって工具を変えていきます(既出の動画ではピンクのカッターをよく使っていましたね☝)。
ちなみに木版画との大きな違いは、「彫った場所に色が入る」という点です。
⇧プレス機
彫った後に色を入れる作業風景は動画を参照して頂くとして(写真、無いんかい 笑!)、
彫った銅板に色を入れたら、次はプレス機で紙に色を映します。
ちなみにこのプレス機を初めてみた時、
「陶芸のたたらマシンと一緒やっ!!!」
と嬉しかったのは私です…。
ハンドルをグルグル回して送り込み、プレスし終わったら
⇧丁寧にペラリと剥がして
⇧完成!
ちなみにこの子の名前は「ミミ」ちゃん。
プレスするのでモチーフのアウトラインに沿って銅板を切り離した作品の場合、そのアウトラインに沿ってエンボスが入るのも魅力のひとつです☝
⇧「ネコの時間」 ←まね子の2作目です。
さて、
動画もこのnoteの記事もかなり端折ってますが(←なんで端折った?)、実際はテスト刷りをしては足りない線や影を描き足したり、色の微調整を繰り返したりとかなり煩雑な作業を繰り返すので、
「彫った!色付けた!プレス!完成~!」
⇧「しらたま」 ←オスです。
と単純にはいかないのが銅版画なのです(←ここ、知ってて頂きたいところ)・・・。
価格を知ってちょっと驚かれる方もおられますが、銅版画が完成までにどの様な工程を踏むかを知って頂ければ少しでも納得感が上がると思い、ここに記事にしておきました。
また、
鑑賞の際はぜひ以上を踏まえて頂くと、より鑑賞の充実度も高くなると思います~☝
⇧「わたあめ」 ←メスです。
価格のもう少し詳しいお話
せっかくなのでここではもう少し詳しく価格の話を深めてみます。
価格の問題は美術の世界独特のものがあり、ジャンル別にヒエラルキー(例:絵画であれば国内では日本画が一番高く、洋画⦅油彩⦆がその次、陶芸は更にその次、みたいな序列)的なものが存在します。
⇧「せなか」 ←古屋さんの猫「モグ」ちゃんの背中です。
例えば、
銅版画が美術としてカテゴライズされている事に対し、イラストやデザインが美術の枠から外れていると、どんなに素晴らしく見える作品でもその枠外扱いされてしまい、美術カテゴリーの作品に比べ値が付きにくい(※このあたり、かなり複雑な話になるので一般論として捉えて下さい)という事が起こります(※例外あり)。
⇧「窓(Vienna)」
その点、
古屋さんの作品は美術にカテゴライズされていながらも絵画部門の中では銅版画というジャンルの為、同じキャリアを持つ日本画家の作品と比べるとかなり価格は優しくなっているという訳です。
⇧「ペロペロⅡ」
更に価格は学歴でも変わります。
つまり、アウトプット(作品)のレベルが非常に高くてもどの美大を出ているかが、今の日本の美術市場における値付けの裏付けのひとつになっているのは実情です(良し悪しはともかく)。
⇧「黒猫(ミニ)」
現状では国立の東京藝術大学(通称『ゲイダイ』)はその最高位に位置し、武蔵野美術大学(通称『ムサビ』)、多摩美術大学(通称『タマビ』)が私立美大の双璧という見方があり、その3校を出ている事である一定以上の値付けを許されるというか、値付け裏付けとして納得してもらいやすいという実情があります(良し悪しはともかく)。
⇧「まえならえ」
余談ですが、
美術の世界はとかく「言い値(作り手、売り手の思った自由な価格という意味)」というイメージが持たれやすいのですが実は決してそんな事は無く、作り手、売り手共に専門性が高くなればなるほどしっかりとした美術界の秩序に準拠して活動する為、根拠のない雰囲気だけの値付けは行われにくくなっています。
⇧「しらたま」の銅板
それによる相場観を無視して好きな様に作者が値付けする事も可能ですが、美術品の購入者はやはりその多くが美術愛好家であったり、美術に朗るい方がほとんどの為、そんな彼らを前にあまりに高額な値付けをしても売る事は難しい、という現実があります。
話を元に戻します(⇧余談が長い)
「版画=複製を沢山作れる≒安い」
というイメージもあるかもしれませんが古屋さんの場合、1作品につき7枚しか刷りません。
⇧「1/7(ナナ分のイチ)」のエディション。1月7日に刷った、という意味ではなく、この作品は7枚刷ってますよ~☝という印。
理由は、それ以上刷るとプレスに耐えられず銅板の変形や、理想とする色の出方をしなくなる技法があるからだそうです。
その点からも「版画=複製を沢山作れる」という訳ではなくなり、そもそもイラストとは異なり美術にカテゴライズされている為、価格も安価にはならない事が分かります。
⇧「トラ」
以上から価格についてざっくりまとめると、
・美術品はイラストやデザインに比べ高価
・イラストやデザインは美術の枠外(一般的に)
・銅版画は美術、美術なので安価にならない
・銅版画は日本画、洋画(油彩)に比べると安価
・銅版画は複数刷れる事が安価となる理由になりにくい
⇧「コウモリ」
慣れない方にはとても疑問に思う点が多いと思いますが、価格に関してはざっとそんなところです。
陶芸でもよく聞かれる質問に、
「酒器は湯呑や鉢と比べて小さいのになんで高いのですか?」
というものがあります。
それをひとことで言えば、
「器の格」
という事になるのですが(←簡略し過ぎ!)、これもやはり慣れない方は不思議でしようがないと思いますが、業界では暗黙知として異を唱える人はほぼいません。
それでも難しいという方はそのあり方に納得いくいかないは取り敢えず置いておいて、「美術にはそういう見方や考え方があるんだぁ~」と知っておくだけでも良いと思います☝
⇧「アパルトマン」
古屋郁 略歴
1991年生まれ
2014年 武蔵野美術大学 油絵学科版画専攻 卒業
2016年 武蔵野美術大学大学院 版画コース修了
2016年-2017年 ヴィルニュス芸術アカデミー (リトアニア) グラフィック専攻
主な展示
2014 第39回全国大学版画展(町田市立国際版画美術館)
2015 ムサビ版画コースながさわゼミ「版画ベアーズ」(eitoeiko/神楽坂)
无界/TRANSITIONS Three Institutions, an International Exhibition of Prints
(中国版画美術館/深圳,中国)
2017 Sint-Niklaas 2017 Printmaking Biennial (STEM Zwijgershoek/Sint-Niklaas,ベルギー)
SHBUYA AWARDS 2017受賞作品 渋谷展(Bunkamura Wall Gallery/渋谷)
2018 AOMORIトリエンナーレ2017 Classical部門(青森県立美術館 コミュニティギャラリー)
SICF19 EXHIBITION(スパイラル/南青山)
賞歴
2017 Sint-Niklaas 2017 Printmaking Biennial 入選
SHIBUYA AWARDS 2017 天野タケル賞
AOMORIトリエンナーレ2017 Classical部門「棟方志功国際版画大賞」入選
2018 ホルベイン×ザ・チョイス「クロッキーメモの表紙を描く vol.3」 入選
◆告知
「古屋 郁 銅版画展 ~ネコの時間~」
会期:2020年8月8日(土)~8月16日(日) 13時~18時
※期間中の14日(金)はお休みです。
会場:JIBITA
オンラン販売:8月8日22時スタート
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