不意味文章「鐘の音」
ゴーーーーン……。
遠くから鐘の音が聞こえる。これで16度目。年に一度、この音を聞く。それが合図だ。奴らは目覚める。私達にとっての恒例行事
人々の憎悪が集まり、それが「厳鐘」によって刺激を与えられることで視認することができるようになる。
蚊のような弱々しい憎悪もあれば、熊のような獰猛な憎悪もある。私達が所属する「楼光神社会」では、各々がカスタマイズした武器を手に持ち、憎悪の討伐に向かう。
……というのがいつもどおりなのだが……。眼の前にいる憎悪は、どうも様子が違う。憎悪だが悪意を持っているようには見えない。いや、それが憎悪による精神的な攻撃の一種である可能性も否めない。私は、右手に持った巨大な三角定規を振り下ろせずにいた。だが、時は止まらない。17度目の鐘の音が鳴った。
ゴーーーーン……。
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