不意味文章「フェイスレス」
僕には顔がない。もちろん、これは比喩表現。クラスでは浮いた存在。何かあったわけじゃない。むしろ何もなかったからこそだろう。クラスメイトで僕の顔を覚えてる人はいないだろう。やがて僕は「顔がない者」と名乗って活動を始めた。学校の裏サイトを立ち上げ、華々しい人たちの裏側をかき集めてばら撒く。それが僕の快感であり、復讐だった。
高校3年間はいろんな情報を掌握しながら、クラスでは上手く立ち回っていたおかげで、僕の活動が特にバレる心配も無かった。卒業の日、不思議と涙は出てきた。喜びでも悲しみもない、不思議な涙。窓際で電子化された卒業アルバムを眺めていたら、すでにクラスには僕だけとなっていた。
「金崎 ユウジンくん」
女の子の声がした。それは、僕の名前を呼んでいた。僕の顔は確かに存在していた。フェイスレスはいなくなった。
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