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戦略と組織、システムの整合性

少し前に献本頂いた本が企業経営における戦略と組織、管理システムについて包括的な考察がなされていたので、紹介したいと思います。

Re:Align

本のタイトルは
「リアライン」 副題:ディスラプションを超える戦略と組織の再構築
です。

著者はオックスフォード大学ビジネススクールで教鞭をとる
ジョナサン・トレバー准教授。
翻訳は大手IT企業のリサーチファーム・コンサルタントとなっています。

本書では、企業の戦略・ビジネスモデルを「戦略的アラインフレームワーク(SAF:Strategic Alignment Framework)」として大きく4つに分類し、そのタイプごとに組織や管理システム、カルチャーは異なるはず。

先進企業が始めているからと流行りの組織論や人事施策の安易な模倣は自社内の仕組み・文化と不整合を起こすと警鈴を鳴らしています。

代表的な企業が採る4つの戦略的アプローチとは
1)エフィシェンシー・マキシマイザー
2)エンタープライジング・レスポンダー
3)ポートフォリオ・インテグレーター
4)ネットワーク・エクスプロイター
となります。

Source: adapted from Trevor, J. (2019). Align: A Leadership Blueprint for Aligning Enterprise Purpose, Strategy and Organisation. Bloomsbury Publishing. Copyright © Jonathan Trevor, 2019

そして、それぞれで「企業パーパス」「事業戦略」「組織ケイパビリティ」「組織アーキテクチャー」「経営管理システム」の目的や方向性が少しずつ異なることを本書では章を追って、解き明かしています。

本書の翻訳チームとトレバー氏の対談記事が出ていますので、合わせて紹介しておきます。


関連する経営理論

組織は戦略に従う

戦略と企業活動を担う要素との整合性については、古くから言われていることです。経営学の古典として最も有名なものはアルフレッド・チャンドラー氏の「組織は戦略に従う」でしょう。

この本は1962年に発表されたものですが、それから約20年後の1979年、
こちらも経営学者として有名なイゴール・アンゾフ氏はその著作「戦略経営論」の中で、チャンドラーの逆である「戦略は組織に従う」と主張しています。時代背景や環境変化のスピードの違いもあり、どちらが正解とは言い切れませんが、相互に影響し合うことは明らかです。


マッキンゼー 7S

さらに1980年代初頭に、マッキンゼーは組織変革のためのフレームワークとして 7Sを提唱します。

  • Shared value (共通の価値観)

  • Style(経営スタイル)

  • Staff(人材)

  • Skill(組織能力)

  • Strategy(戦略)

  • Structure(組織構造)

  • System(管理システム)

戦略と組織から、価値観や経営スタイル、人材、組織能力、管理システムの要素を幅広く、整合性をもって組織を構築・変革していくべきだと唱えました。

両利きの経営

そして、数年前から日本でも話題になったのは「両利きの経営」の中でも、同様に組織改革の難しさ、企業経営の構成要素の整合性に関連する話が出ていました。

本書では「知の深化と探索」の話題が中心でしたが、解説・実践本として出された「両利きの組織をつくる」の中で、ナドラー/タッシュマンの組織診断モデル:コングルーエンス・モデルをフレームワークに組織変革を検討・実行する重要性が述べられています。
コングルエンス・モデルの構成要素は「経営のリーダーシップ」「戦略・目標」「KSF」「組織カルチャー」「公式の組織」「人材」の5つがあげられています。


「リアライン」
の著者トレバー氏は当然ながらこれらの理論を前提にしつつ、本書において戦略的アプローチ(SAF)の違いによって、企業戦略の構成要素となる7Sやコングルエンスモデルも異なることを指摘したところに、その独自性、慧眼があると私は考えています。

Strategic Alignment Model

自動車を好きな方は"Alignment"と聞くと、ホイール・タイヤの整合性、調整のことを想起されると思いますが、
私が "Align" という単語で始めに思い出したのは、戦略とITの整合性に関するフレームワーク Strategic Alignment Model (SAM)です。 

この理論は1993年Henderson, J.C. 氏とVenkatraman, N.氏が共同で
IBMジャーナルに寄稿し、その後、書籍化されています。(未翻訳のはず)


SAM
は簡潔に言ってしまえば、「ビジネス戦略」と「情報戦略」、「業務プロセス」と「情報システム」、相互の整合性を取るべき。ということに尽きます。

CIO Wiki より

まだ、私が駆け出しのコンサルタントをしていた頃、日本ではいまのDXブームのようにSIS(戦略的情報システム)の議論が花盛りで、戦略コンサル各社やIT企業が「情報システムをどう戦略的に活用するか?」をテーマに企業からコンサルプロジェクトや欧米先進事例調査を多数、受けていました。

ちなみにアクセンチュアが社名変更したのは2001年からなので、まだ、
アンダーセン・コンサルティングと名乗っていた時代です。
野村総合研究所と野村コンピュータシステム(株)が合併したのが1988年。
リアラインの翻訳をしたNTTデータ経営研究所が設立されたのが1991年です。当時、IT戦略や情報戦略を専門的に扱うコンサルタントやリサーチファームは少なく、日本での黎明期にあたります。

後年「SISは死す」とも揶揄されるようになりましたが、情報システム(SAMの右下)を導入することが目的になり、戦略や業務プロセス、情報戦略との整合性に欠けてしまえば、企業経営の武器として有効に働かないのは自明の話です。この辺の話は以前、noteに記しましたので、ご興味のある方はご覧ください。

では。

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