所得控除について
「年収の壁」に関する相談をうかがっていると、配偶者控除、配偶者特別控除が受けられるか否かを気にされる方が多いですね。また学生さんがアルバイトをして随分と稼いでしまったが、親に迷惑をかけないか心配してご相談に来る方がいらっしゃいます。
ここでは、ざっくりと所得控除の全体像を理解しましょう。細かい適用要件については触れず、全体を大まかにとらえるようにします。個々の控除については、改めて詳しくご説明しますね。
1.原則、誰もが受けられる控除
基礎控除
納税者の税負担を軽減する役割で、所得に応じて適用される基本的な控除。
2.人関連の控除
配偶者控除・配偶者特別控除
一定の所得以下の配偶者がいる場合に適用される控除。
事実婚のパートナーは対象になりません。法律婚による配偶者が対象です。
扶養控除
扶養する親族がいる場合に、経済的負担を軽減するために適用される控除。
・一般の控除対象扶養親族(16歳以上18歳以下、23歳以上69歳以下)
・特定扶養親族(19歳以上23歳未満)
・老人扶養親族(70歳以上)
なお、16歳未満の子供は扶養控除の対象外となり、代わりに児童手当が支給されます。
勤労学生控除
働きながら学ぶ学生(年齢制限なし。所得制限あり)に適用される控除
障害者控除
障害者本人(本人が納税者の場合)や扶養家族(納税者が障害者である同一生計配偶者または扶養親族を有している場合)に適用される控除
寡婦控除
寡婦(夫と死別または離婚した後、再婚していない女性のこと)に適用される控除
ひとり親控除
子供を養うひとり親(子供の年齢制限はありません。同居が前提。親、子供の所得制限あり)に適用される控除
3.社会保険関連の控除
社会保険料控除
社会保険料(健康保険、公的年金、雇用保険など)の支払いに対する控除
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済法に基づく掛金等(例えばiDecoなど)の控除
医療費控除
年間の医療費支払い(一定額以上の場合)に基づく控除
4.リスクと保険関連の控除
生命保険料控除
生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料に対する控除
地震保険料控除
地震保険料(火災保険は含みません)の支払いに対する控除
5.その他
寄附金控除
特定の寄附(例えば、日本赤十字社、WWF、ユニセフ)に対する控除
雑損控除
災害や盗難による資産損失(例えば、令和6年能登半島地震)に対する控除
6.控除を受けるための注意
控除を受けるためには、それぞれ受けるための細かい条件があります。条件も原則と例外があったりします。良く適用を受ける条件をよく調べましょう。
年末調整、または確定申告で必要な書類と共に申請し受理されないと、控除を受けることはできません。ご注意ください。
7.まとめ
個別相談を受けていると、税額を知りたいというご相談が多くあります。このように、さまざまな所得控除があるので、個々人がどの控除を受けているのか、実は要件が満たされないので控除を受けられないのでは?といったことがあります。そのため、見積もった金額が妥当か判断も尽きません。
むしろ、ここで見ていただきたいのは、自分が支払った保険料やiDecoで積み立てている場合に、キチンと控除が受けられているのかを見ていただきたいですね。社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除は金額が大きく、全額控除されるので節税効果は大きいです。年末調整で書類が整えられなくても、確定申告できちんと申告すれば、恩恵を受けられるかもしれません。