扶養控除:事例2(学生)
今日2025年1月19日は、大学入試共通テストの2日目です。受験生の皆さん、いろいろと思うことがあると思いますが、今、目の前の問題に集中して頑張ってくださいね。これまで積み上げてやってきたことは決して裏切らないと思います。最後まで気を抜かずにやり切って欲しいです。頑張って!
19歳以上~23歳未満の家族を持つ親の経済的負担を軽減する目的で、特定扶養親族に対する扶養控除があります。事例を交えてみましょう。なお「扶養控除ってどういうこと?」にも掲載した内容と重複する点がありますが、お許しください。
ポイントは、以下の3点。
・納税者の所得から控除される。
・扶養する家族の年齢と合計所得金額で、該当するか否かが決まる。
・納税者の所得金額によって、控除額が変わる。
1.扶養控除の対象となる人
どういう人が特定扶養親族となるのか、確認していきましょう。その年12月31日の現況で、3つの要件すべてに当てはまる人です。(国税No.1180)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
1)納税者と生計を一にしていること。(同居ではない)
2)19歳以上23歳未満
3)年間の合計所得金額が48万円以下(年収ではない)
ポイント
学生とは特に規定していません。年齢がその年の12月31日に19歳以上23歳未満であれば対象となる。働いている人でも年齢条件を満たせば、控除が受けられると解釈できます。
合計所得金額が48万円以下であることが必要です。例えば会社に勤めている人やパートやアルバイトなどで給与収入を得ている場合は、給与所得控除55万円を加味して
48万円(控除を受ける所得要件)+55万円(給与所得控除)=103万円
を超える年収があった場合、扶養控除の対象者からは外れます。業務委託や報酬として収入を得ている場合は、雑所得になると思われます。所得税が源泉徴収されていなければ受け取った収入の合計金額が103万円を超えていると、対象者から外れることになります。確認しておきましょう。
2.控除額
控除額は63万円です。一般の控除対象者に対して25万円多い点が特徴です。いろいろとお金がかかる年頃を考慮してという主旨と思われます。多くの場合、22歳ぐらいには就職しているだろうからということで23歳未満としているのではないでしょうか。
3.事例
いくつかの具体的な事例で控除額を見ていきましょう。学生さんからの相談も多く、親に迷惑をかけないか、といった声が聞かれます。これを機会にチェックしておきましょう。
1.19歳の息子がアルバイトをして、年収が70万円です。
この場合、給与所得控除額55万円を差し引くと15万円になります。
70万円(年収) - 55万円(給与所得控除) = 15万円(給与所得金額)
アルバイト以外に所得がない場合は、合計所得金額48万円以下なので、特定扶養親族としての要件を満たします。納税者(父または母)は、扶養控除額63万円を課税所得金額から差し引くことができます。
年末調整の時に、ご家族の名前と生年月日を入力する欄があると思います。こちらに記載をしていれば、12月末に源泉徴収票に控除した旨の記載があると思います。チェックしておきましょう。もし申告漏れがあっても、確定申告で申告すればその分を再計算して還付されるでしょう。慌てずに対応することができます。
ちなみにこの場合、息子さん自身の所得税もゼロ円です。
2.21歳の娘がアルバイトをして、年収が130万円です。
この場合、給与所得控除額55万円を差し引くと75万円になります。
130万円(年収) - 55万円(給与所得控除) = 75万円(給与所得金額)
これは、給与所得金額です。アルバイト以外に所得がない場合は、合計所得金額は75万円になり、合計所得金額48万円を超えるので、特定扶養親族としての要件を満たしません。
75万円(給与所得金額)>合計所得金額48万円
よって納税者(父もしくは母)は、扶養控除額63万円を課税所得金額から差し引くことができません。特定扶養親族の控除を受けられません。
娘さん自身に対しての所得税は、勤労学生としての要件を満たせば、基礎控除に加えて勤労学生控除(控除額27万円)が受けられます(国税庁No.1175)。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1175.htm
課税所得金額を見積もると、
75万円(給与所得金額) - (48万円(基礎控除)+ 27万円(勤労学生控除))=0円
課税所得金額はゼロ円のため、所得税はかかりません。
ちなみに勤労学生としての要件は、
(1)給与所得などの勤労による所得があること
(2)合計所得金額75万円以下かつ、(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
(3)特定の学校の学生、生徒であること
この場合の特定の学校とは、次のいずれかの学校です。
イ 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
ロ 国、地方公共団体、私立学校法の第3条に規定する学校法人、同法第64条第4項に規定する法人
ハ 職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの
勤労学生としての要件からわかるように、アルバイトの年収130万円を超えると、所得税がかかります。これは、130万円を超えると勤労学生控除が受けられなくなり、課税所得金額がゼロ円を超えるからです。仮に年収135万円の場合、所得金額は、
135万円(年収) - 55万円(給与所得控除) = 80万円(給与所得金額)
課税所得金額は、
80万円(給与所得金額) - 48万円(基礎控除)=32万円(課税所得金額)
課税所得金額32万円に対して、税金がかかります。
32万円 x 5% = 1.6万円
制度や仕組みを知っていると知らないとでは、受け止め方も対応策も変わる事でしょう。ここでお伝えしたかったことは、制度や仕組みは結果だけを見るのではなく、どのような条件がついているのか、までしっかりと見ておきましょう、ということです。1次資料(原本)を見ることです。解説は説明者の都合に合わせて適宜抜き出している、と疑ってみることも必要かもしれません。
4.まとめ
こんにちの学生さんは、奨学金を利用している方も多いと聞きます。親の収入で進学をあきらめる人も決して少なくないでしょう。隙間時間を使って、アルバイトなどで少しでも稼いで生活費に充てるという学生さんも多いと思います。ただ軸足をどこに置くのか、学生であれば勉強を中心に据えて欲しいですね。
若い人ほど、あきらめずやりたいことをみつけて、どんどん挑戦していって欲しいです。頑張ってください。応援しています。
今日という1日があなたにとって素敵な1日になりますように。