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配偶者控除、配偶者特別控除(その6):事例5

 配偶者控除と配偶者特別控除について、事例を通して理解が深まればと思います。今回は2か所から収入を得ている場合を見てみましょう。また確定申告についても触れました。参考にしてください。

 控除の要件については、こちらを合わせてご参照ください。

 合計所得金額の見積り方法は、こちらを合わせてご参照ください。

事例5

30代ご夫婦の例として
 ・妻(35歳)、A社とB社の2か所で働いている。A社では契約社員として年収100万円、B社ではパートで年収40万円。
 ・夫(37歳)、会社員で給与収入を得ている。年収700万円。
 ・夫婦は、一緒に生活している(同居、生計を一にしている)。
 ・共に給与収入以外に収入はない。
この場合、夫は、妻について配偶者控除が受けられるか。
結論:配偶者控除は受けられないが、配偶者特別控除が受けられます。

1.要件の確認

配偶者控除について確認してみましょう。
2か所で働いていて、どちらも給与収入の場合は収入額を合計します。
 100万円 + 40万円 = 140万円
この金額を年収として要件に当てはまるか、確認していきましょう。
(1)民法の規定による配偶者であること:OK
(2)納税者と生計を一にしていること:OK
(3)年間の合計所得金額が48万円以下:NG
  合計所得金額を計算してみると、
  140万円(給与)ー 55万円(給与所得控除)=85万円 > 48万円
収入の要件で、配偶者控除は受けられないですね。

配偶者特別控除についても確認してみましょう。
(4)年間の合計所得金額が48万円超133万円以下:OK
  合計所得金額:85万円は、48万円超133万円以下に当てはまる。
(5)配偶者が、配偶者控除を適用していないこと:OK
(6)控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下である:OK
以上から、配偶者特別控除の要件は満たします。次に控除額がいくらになるか、みていきましょう。

2.控除金額

(7)納税者の合計所得金額は、
  700万円 ー  (700万円x10%+110万円)(給与所得控除) = 520万円

給与所得控除額の速算表

配偶者特別控除の控除額の表から、配偶者の合計所得金額85万円、納税者の合計所得金額520万円を満たす控除額は、38万円とわかります。

配偶者特別控除の控除額

3.まとめ

 給与収入が妻140万円、夫700万円の場合、配偶者控除は受けられないが
配偶者特別控除が受けられる。控除額は38万円。合計所得金額を見積もることができれば、控除額がわかります。

4.考察

 最近は2か所で働く方も多くいらっしゃるようです。この時は、給与収入を合計します。なお、2か所で給与収入を得ている方は、翌年に確定申告をして年収を確定すると共に、多くとられすぎた所得税の還付を申請しましょう。

確定申告について

 給与が銀行口座に振り込まれる時、所得税が源泉徴収されて残りの金額が振り込まれます。一般に税率10.21%で計算されていると思います(国税庁No.2507)。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2507.htm
2か所から収入を得ている場合、
 <A社>100万円x10.21%=10.21万円(千円未満を切り捨てて10.2万円)
 <B社>40万円x10.21%=4.084万円(千円未満を切り捨てて4万円)
 合計10.2万円+4万円=14.2万円
が所得税として徴収されていると見積もられます。(実際の徴収額とは異なると思います)

 年収の合計140万円の場合、所得税を計算してみましょう。
合計所得金額は
 140万円 - 55万円(給与所得控除) = 85万円
課税所得金額は
 85万円 - 48万円(基礎控除)= 37万円
37万円に対して、税率5%をかけて所得税額を見積もります。

所得税の速算表

 37万円 x 5% = 1.85万円(千円未満を切り捨てて1.8万円)
源泉徴収された合計金額と比較してどうでしょうか。

 1.8万円(合計年収から算出) < 14.2万円(源泉徴収された税額の合計)

年収から見積もられた所得税額に対し、源泉徴収された金額の合計が上回っていますね。過剰に支払った分を払い戻してもらう申請が、還付申請です。具体的には、確定申告書に必要事項を記入することで還付金額が見積もられ、後日所定の口座に振り込まれます。この操作は、年末調整ではできませんので注意が必要です。所得税率が5%にある課税所得金額の場合は、確定申告をして還付されるでしょう。ご自身で確認してみてください。
 確定申告書の記入方法については、最寄りの税務署にお尋ねください。還付申請は、年明けから操作ができます。最近は、確定申告がスマホでも出来るようです。お手元にマイナンバーカードをご準備しておくとよいと思います。
 なお確定申告をすると、翌年の住民税の計算や社会保険料の計算にも申告した情報がリンクします。またお勤め先に、他で収入があることが伝わるおそれがあることは意識しておく必要があるでしょう。

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