
配偶者控除、配偶者特別控除(その8):事例7(給与+年金)
配偶者控除と配偶者特別控除について、事例を通して理解が深まればと思います。今回は働きながら公的年金を得ている方の場合を見てみましょう。
控除の要件については、こちらを合わせてご参照ください。
事例7
60代ご夫婦の例として
・妻(68歳)、パートで給与収入として年収90万円。公的年金が90万円。
・夫(69歳)、60歳以後も再雇用で給与収入400万円。公的年金250万円。
・夫婦は、一緒に生活している(同居、生計を一にしている)。
この場合、夫は、妻について配偶者控除が受けられるか。
結論:配偶者控除は受けられないが、配偶者特別控除が受けられる。
1.要件の確認
配偶者控除について確認してみましょう。
(1)民法の規定による配偶者であること:OK
(2)納税者と生計を一にしていること:OK
(3)年間の合計所得金額が48万円以下:OK
合計所得金額を計算する時、給与所得と年金収入をそれぞれ計算して結果を合計します。
給与所得は、
90万円(給与)ー 55万円(給与所得控除)= 35万円
年金収入(90万円)は、速算表からゼロ円。
よって合計所得金額は35万円となり、配偶者控除が受けられます。
公的年金の所得金額の速算表はこちらです。(国税No.1600)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

もし配偶者の年齢が65歳未満だと
公的年金等に係る雑所得は、
90万円(年金)ー 60万円= 30万円
となり合計所得金額は
35万円+30万円=65万円>48万円
よって配偶者控除が受けられなくなります。この場合は、配偶者特別控除の検討に入ります。どのような要件があるのか、よく見ましょう。
次に配偶者控除の控除額がいくらになるか、みていきましょう。
2.控除金額
(7)納税者の合計所得金額を見積ります。合計所得金額を計算する時、給与所得と年金収入をそれぞれ計算して結果を合計します。
給与所得金額は、
400万円(給与)ー (400万円 x 20%+44万円)(給与所得控除)= 276万円

年金収入(250万円)の所得金額は、速算表を用いて140万円。

合計所得金額は276万円(給与)+140万円(年金)=416万円。
配偶者控除の控除額の表から納税者の合計所得金額416万円は900万円以下なので、控除額は38万円とわかります。配偶者の年齢が70歳未満なので一般の控除対象配偶者になります。老人控除対象者は、70歳以上の人が対象です。

3.まとめ
妻(68歳)がパートで年収90万円、公的年金が90万円。夫(69歳)が給与収入400万円、公的年金が250万円の場合、配偶者控除が受けられる。控除額は38万円。
4.考察
65歳を過ぎて年金をもらいながら、働いている人も多いと思います。この場合、やや面倒ですが給与収入と年金からそれぞれ所得金額を見積もり、合計して合計所得金額を見積もることができます。
公的年金額は、受給を開始するとほとんど変わらないと思います。年金の所得金額速算表を見ると、65歳以上では110万円以下は所得金額がゼロ円です。よって、年金額が110万円以下の場合は、パート収入だけを見ていけばよいことがわかります。いくらぐらいまで働くと配偶者特別控除が受けられるのかについては、事例1も併せてご参照ください。
また、年金の所得金額速算表を見ると、65歳未満と65歳以上とで所得金額が大きく異なることがわかります。65歳より早く年金を取得することを考える場合は、課税金額の敷居が下がる(低額から課税される)ことも知っておくと参考になるかもしれません。