
配偶者控除、配偶者特別控除(その5):事例4(妻180万円,夫600万円)
「年収の壁」の相談事項のトップ10の中に、配偶者控除と配偶者特別控除に関する質問が多いですね。事例を通して理解が深まればと思います。今回は妻の年収180万円、夫の年収600万円の場合について見てみましょう。
控除の要件については、こちらを合わせてご参照ください。
合計所得金額の見積り方は、こちらを合わせてご参照ください。
事例4
30代ご夫婦の例として
・妻(38歳)、契約社員として給与収入を得ている。年収180万円。
・夫(38歳)、会社員で給与収入を得ている。年収600万円。
・夫婦は、一緒に生活している(同居、生計を一にしている)。
・共に給与収入以外に収入はない。
この場合、夫は、妻について配偶者控除が受けられるか。
結論:配偶者控除は受けられないが、配偶者特別控除が受けられます。
1.要件の確認
配偶者控除について確認してみましょう。
(1)民法の規定による配偶者であること:OK
(2)納税者と生計を一にしていること:OK
(3)年間の合計所得金額が48万円以下:NG
合計所得金額を計算してみると、
180万円(給与)ー 55万円(給与所得控除)=125万円 > 48万円
収入の要件で、配偶者控除は受けられないですね。
配偶者特別控除についても確認してみましょう。
(4)年間の合計所得金額が48万円超133万円以下:OK
合計所得金額:125万円は、48万円超133万円以下に当てはまる。
(5)配偶者が、配偶者控除を適用していないこと:OK
(6)控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下である:OK
以上から、配偶者特別控除の要件は満たします。次に控除額がいくらになるか、みていきましょう。
2.控除金額
(7)納税者の合計所得金額は、
600万円 ー (600万円x20%+44万円)(給与所得控除) = 436万円
配偶者特別控除の控除額の表から、配偶者の合計所得金額125万円、納税者の合計所得金額436万円を満たす控除額は、11万円とわかります。
3.まとめ
給与収入が妻180万円、夫600万円の場合、配偶者控除は受けられないが
配偶者特別控除が受けられる。控除額は11万円。合計所得金額を見積もることができれば、控除額がわかります。
4.考察
もし妻が翌年に年収220万円まで稼ぐようになったら、どうなるのか試算してみましょう。40万円収入が増えた場合です。合計所得金額は、
220万円 ー (220万円x40% ー 10万円)(給与所得控除) = 142万円
となり、配偶者の合計所得金額133万円以下を満たさないので、配偶者特別控除の要件を満たさない。結果、配偶者特別控除は受けられない。
この場合、前年で控除されていた11万円分も課税されることになります。
納税者の課税所得がおよそ440万円なので、税率20%から
11万円x20%=2.2万円
つまり控除が認められなくなる分、約2万円所得税が増えると予測されます。
まとめると、妻が180万円から220万円へと収入が40万円増えた分、夫の所得税が2万円増える。世帯所得としては、差し引き38万円の収入増になると思います。
控除に意識を向けるのもよいが、仕事をして積極的に収入を増やすことに意識を向けてもよいのでは?と個人的には思います。守りに入るよりも、攻めに行く感じでしょうか。稼げる時間があるのであれば、積極的に活動されてはいかがでしょうか。