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配偶者控除、配偶者特別控除(その4):事例3

 「年収の壁」の相談事項のトップ10の中に、配偶者控除と配偶者特別控除に関する質問が多いですね。事例を通して理解が深まればと思います。今回は妻の年収100万円、夫の年収1300万円の場合について見てみましょう。

 控除の要件については、こちらを合わせてご参照ください。

 合計所得金額の見積り方法は、こちらを合わせてご参照ください。

事例3

50代ご夫婦の例として
 ・妻(56歳)、パートをして給与収入を得ている。年収100万円。
 ・夫(58歳)、会社員で給与収入を得ている。年収1300万円。
 ・夫婦は、一緒に生活している(同居、生計を一にしている)。
 ・共に給与収入以外に収入はない。
この場合、夫は、妻について配偶者控除が受けられるか。
結論:配偶者控除は受けられない、配偶者特別控除も受けられない。

1.要件の確認

配偶者控除について確認してみましょう。
(1)民法の規定による配偶者であること:OK
(2)納税者と生計を一にしていること:OK
(3)年間の合計所得金額が48万円以下:OK
  合計所得金額を計算してみると、
  100万円(給与)ー 55万円(給与所得控除)=45万円 < 48万円
(4)控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下:NG
  合計所得金額を計算してみると、
  1300万円(給与)ー 195万円(給与所得控除)=1105万円 > 1000万円
以上から、配偶者特別控除の要件を満たさない。

配偶者特別控除についても確認してみましょう。
(4)年間の合計所得金額が48万円超133万円以下:NG
  合計所得金額:65万円は、48万円超133万円以下に当てはまる。
(5)配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと:OK
(6)控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下である:NG
以上から、配偶者特別控除の要件を満たさない。

2.まとめ

 給与収入が妻100万円、夫1300万円の場合、夫の年収が所得要件の上限を超えるので配偶者控除と配偶者特別控除は受けられません。

3.考察

 配偶者控除や配偶者特別控除が受けられないということは、どういう意味かお気づきですか。そう、妻はいくら稼いでも夫の税金は変わらない、ということです。相談を伺っていると、夫の年収が1000万円を超える方からのご相談が意外と多いですね。その時には「気にせずにどんどん働いて下さい」とお答えしています。
 ご相談される方の年代をみると50代の方が多いようです。子育てがひと段落して時間的に余裕ができてきたのでしょうか。このまま家の中にいてもつまらない、自分の経験が社会の役に立つのであればと思って、人とのぬくもりを求めて、なにか新しいことをやってみたい、などさまざまな思いをもってお仕事を始める方も多いのではないでしょうか。そんな時にいっぱい稼いでいる夫の方は、「これだけ稼いでいるのになぜ働くの?」という疑問を持つようです。「自分が帰った時には妻が家にいて、温かいご飯ができていて欲しい」と思っているかどうかはわかりませんが。
 あくまで私見ですが、働く意味は単にお金を稼ぐということだけではなく、自分が価値提供することを通じて社会の中で自分の存在価値を確認する、社会とのつながりをもつ、といった意味もあるのではないかと思います。「家事や子育てを妻に任せて、夫は働きに出る」という昭和的な考え方からの脱却して、一人ひとりが活き活きとした人生を送って欲しいと願います。わたくしは、これからも働く女性を応援いたします。

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