10. 2022年所感
あけましておめでとうございます。
昨年、2021年は最悪な年でした。宇宙環境という意味においてです。
打上げ回数・打上げ衛星数ともに過去最高。世界のどこかで、2.5日に1回はロケットが打ち上がり、1,400機以上の人工衛星が軌道に投入されました。
宇宙業界は盛況で、おそらく宇宙業界以外の方でも多くの宇宙関係ニュースをご覧になったと思います。その一方、活動中の人工衛星とスペースデブリ(宇宙ごみ。以下、「デブリ」)は増え続ける一方です。
2021年10月末に発表された論文¹において「地球低軌道における、1ヶ月あたりの1km以内の接近(ニアミス)回数」がこの1年あまりで急激に増えたことが発表されました。
¹ Oltrogge D. et al. (2021). Evaluation of LEO conjunction rates using historical flight safety systems and analytical algorithms. IAC-21-A6.7x65213
図1:地球低軌道における1ヶ月あたりの1km以内の接近(ニアミス)回数
人工衛星は、衝突しそうになるとマヌーバといって推進力を使って軌道を変更し、衝突を防止することができます。衛星がマヌーバを行う機会は劇的に増えており、2021年10月の衝突回避マヌーバの数は毎週138回(1日約20回)であり、2020年12月に比べて2倍の数となっています 。マヌーバをすると燃料を消耗することになりますし、元の軌道に戻すまではミッションを遂行できません。
一方で、宇宙空間の物体の9割はデブリなので、デブリ同士のニアミスはこの発表よりも遥かに多くの数があると考えられます。デブリ対デブリの接近は避けることができません。「衝突しないように願う」しかできないのです。秒速約7〜8kmという猛スピードで飛んでいるデブリは衝突すると物凄いエネルギーで爆発します。その破片がさらに他の衛星に衝突するという連鎖反応的な衝突を防がなければなりません。ですので、デブリ化は防止しないといけないですし、デブリは除去しなければならないのです。
² Lewis, H. [@ProfHughLewis]. (2021, November 10). Twitter. https://twitter.com/profhughlewis/status/1458400509996457984?s=21
さらにひどいことが。上記分析の発表後である2021年11月17日に、ロシアが衛星破壊実験(ASAT)を実施して、大量のデブリが新たに発生しました。LeoLab社は宇宙環境の悪化の影響について分析 していますが、12月22日に「高度300〜800km(低軌道)において、衛星の衝突確率が2倍になった。この影響は今後長年に渡り続く」と発表しています。
宇宙環境が持続利用不可能な状態へ一直線に向かっています。そうすると、数百年間、宇宙空間を使用することができません。私たちの日々の生活は大きく宇宙に依存しています。宇宙が持続利用不可能になると、70年以上前の生活に戻るということです。さらに、それが20〜30世代くらいは続くということです。
アストロスケールは、宇宙の持続利用を実現するために存在しています。私たちがやらずして世界の誰がやるのか。
おかげさまで、11月末には新たな資金調達を発表し、合計調達額は$300M(334億円)に達しました。12月にはPopular Science誌より、弊社のデブリ除去技術実証衛星ELSA-d(エルサ・ディー)が、2021年航空宇宙部門のBest of What’s New Awardを受賞しました。
持続的な利用のためには、私たちの取り組む軌道上サービス(デブリ除去、燃料補給、修理、点検・観測など)が必要になってくるのです。軌道上サービスは宇宙の基盤インフラとなるべく、いよいよ市場が立ち上がり始めました。
³ https://leolabs-space.medium.com/part-iii-cosmos-1408-breakup-observations-one-month-later-1f7eb0955172
引き続き、先端技術開発と事業成長を続けながら、各国政府や国際的な組織等とルールづくりについて議論して参ります。
アストロスケールの取り組みに引き続き関心を持って頂けますと幸いです。
本年もよろしく御願い致します。