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『アンドロメダ...』 “米タイム誌が選ぶ「伝染病を題材にした映画」ベスト10“にも選ばれた名作SF 【懐かし洋画劇場】

アンドロメダ...』(71年)は、SF映画の古典の一本であるが、その地味さゆえにあまりメジャーな作品ではない。だがこの冷たいまでの静かさが余計に感染恐怖を感じさせる映画である。

原作は、のちに『ジュラシック・パーク』を書くマイケル・クライトン。原題は“The Andromeda Strain”(アンドロメダ菌株)。監督は『地球が静止した日』(51年)や『ウエスト・サイド物語』(61年)『サウンド・オブ・ミュージック』(65年)の名匠ロバート・ワイズ
キャストは、今聞いてもあまりピンとこない面々であるが、それがためにドキュメンタリー・タッチが効いてくる。女性科学者役のケイト・レイドは、原作では男性だったが、脚色のネルソン・ギディングの提案で女性となった。当時のSF映画では『ミクロの決死圏』(66年)のラクウェル・ウェルチのようなお色気たっぷりの女性が出演するのが商売的にもよいのだろうが、ロバート・ワイズはそうしなかった。中年の小太りのおばさんを起用したのである。それによってよりリアルさが増した。
主人公は4名の科学者と医者。彼らが感染源と闘う4日間の話だ。

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(↑小学生の頃このポスターを見てぼくはトラウマになり大人になるまでこの映画が見れなかった。なんか怖かったんである😱)

ニュー・メキシコのとある村に軍用衛星が落下。回収に向かった軍人が死亡する。管制室は非常事態宣言を出し、ただちに4名の人間が招集される。
ノーベル賞受賞者のストーン博士(アーサー・ヒル)は家でパーティの最中に、高齢のダットン博士(デビッド・ウェイン)は就寝前に、女性のリービット博士(ケイト・レイド)は微生物の研究室で、ホール医師(ジェームズ・オルソン)は手術の最中に、それぞれ「火事だ(Fire)」という暗号で軍に連れて行かれる。

ストーンとホールは村へ行き「スクープ計画」の衛星を回収。ほとんどの村人は血液が凝固し粉状になるという不思議な死に方をしていた。その際生き残った生後6ヶ月の赤ちゃんと飲んだくれのオヤジも“回収”する。

砂漠の中にある「ワイルドファイア研究所」(Wild Fire = 野火)は表向きは農業研究所だが、実は陸軍衛生局の巨大な研究施設。地下5階のラボへ行き着くまでに16時間も要し何度も何度も消毒される主人公たち。

医師は赤ちゃんと飲んだくれのおっさんを診ながら、なぜ2人は感染しなかったのかを調査、ダットンは動物実験を、ストーンとリービットは衛星の中に何があるのかをそれぞれ調査する。

Reference YouTube

131分の上映時間のおよそ8割がこの真っ白なラボで展開される。それもあり退屈だと言う人もいるが、いやいやとても緊張する場面が続く。SF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』(68年)の特撮を担当したダグラス・トランブルの精巧に作られた遠隔捜査ロボットやコンピュータ解析は70年代初頭としては最先端で、見ていてとても興味深い。

感染が研究所内に広がると核自爆装置が作動するというスリルもあり、ぼくは最後まで面白く観ることが出来た。
こういうインテリが作る空想科学映画は、インテリではない自分の知的好奇心をくすぐってくれる。難解な言葉やバイオロジカルな専門用語らしきものもわけがわからんちんのため、見終わってなんか賢くなったような気がしてしまうのだ(笑)

結局原題の通り、アンドロメダ菌株は、宇宙からきた未知の微生物なのだが、これが拡散してしまう恐怖は現代のパンデミックにも通ずるものだ。だからタイム誌のベストテンにも選ばれたのである。
この映画で描かれる科学者や医者は地味だが、本当の意味でのヒーローはこーゆー人々なんである。表に出てきてペラペラ喋ってる奴らはまず間違いなく信用できないと思ったほうがいいだろう。
地下に潜って作業する人々の話なので(マジで)「縁の下の力持ち」の映画であったとさ(笑)

てなことで。“601”(←映画内のコンピュータのエラーコード)

Image Credit

Poster
https://www.limitedruns.com/original/movie-posters/science-fiction/the-andromeda-strain-1/image/

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