「ゴジラvsコング」 日米怪獣同盟の仮想敵とは何か? 【ネタバレありの考察】
「ゴジラvsコング」"Godzilla vs Kong" は、怪獣映画ファン必見の超ド級大作であることに異論はない。
かくゆうぼくも、香港の映画館で観賞後、気に入ったので配信になってすぐiPhoneに入れて眺めている。
そうやって観ていると、あることに気がついた。この物語に内包している仮想敵とはなんであろうか?と。
以下、ネタバレありの考察である。
まずはゴジラとキングコングの闘いの歴史を振り返っておこう。
1962年の「キングコング対ゴジラ」
東宝創立30周年記念映画は、米国RKOから"キングコング"使用権を買い取って製作した「キングコング対ゴジラ」だった。
だからなのか、題名もキングコングが先に来てゴジラが後だ。
アメリカのキングコングと日本のゴジラが戦う。これはあたかも当時力道山のプロレス全盛の中、日本人が一番熱狂するパターン(日米決戦)であった。
当時のポスターにも、"ゴジラが勝つか?コングが勝つか?世紀の大決斗"というキャッチコピーが踊る。
だが、本作ではキングコングとゴジラの対決は曖昧な形で終わっている。今観てもどっちが勝ったのかわからない。これは日米両国が自国のキャラクターに傷をつけないよう協議を重ねた上での結末であった。
そして、59年後の2021年に公開された「ゴジラvsコング」。
ハリウッド作品なので、今回はゴジラに敬意を表してか、ゴジラが先でコングが後だ。
日本版ポスターには、"地球最大の究極対決。映画史上最も壮絶なバトル!!最強はどっちだ!?"と、これも勝敗を気にさせるコピーが踊る。
果たしてどっちが勝ったのか?
結論から言うと、今回もまた引き分けである。
いや、引き分けというより最後は闘ってるもの同士が手を結び、他の強力な敵を倒しにかかるという展開になる。
その強力な敵とは、メカゴジラだ。
巨大テクノロジー企業エイペックスが、怪獣のエネルギーを注入して作った最強ロボット。
ギドラの頭蓋骨の中でレン・セリザワが操るが、やがて暴走するメカゴジラ。
日本が生んだ最強怪獣ゴジラ。アメリカの怪獣映画の元祖と云っていいキングコング。日米のスーパースター怪獣が手を組んで闘うのはハイテクロボット。戦場となるのは香港。
これはつまり、民主主義国家対共産主義国家の闘いではないのか?
現在中国では、ハイテク企業が力を持ちすぎて、国家が締め付けを行っているほどのIT国家になっている。つまりメカゴジラは、最先端の象徴である。
片や、キングコングはアメリカ映画が生んだ最高のモンスターである。ニューヨークへ行けば、いまだにエンパイアステートビルのお土産は1933年時代のキングコングだ。
ゴジラは言わずと知れた、1954年東宝が生んだ日本が誇る怪獣の代名詞。愚かな人間たちが作った水素爆弾により誕生したモンスター。
ゴジラとコングは本作の中で三度戦うが、あたかもそれは第二次大戦のそれだ。二大怪獣のファーストコンタクト、海上のバトル・シーンは真珠湾攻撃を描いた映画「パールハーバー」(2001)を思い出させる。
そんな両雄が再び並び立つのが香港。中国の一部であるが、2020年に施行された国家安全法により、2046年まで担保されていた一国二制度は風前の灯となっている。
香港が舞台になったのは、中国の観客動員を意識してのもの(ワーナーと共同製作のレジェンダリー・ピクチャーズは万逹集団に買収されている)だろうが、スポンサーとして露骨に画面の中で宣伝している巨大通販会社・京东の意向もあったのかも知れぬ。いずれにせよ「大人の事情」なんであろう。
だが、それがために日米怪獣同盟が戦う相手がはっきりしたというのは皮肉なことだ。あたかも本土決戦になってしまった。
バイデン政権になってからも、米中ハイテク摩擦は激化している。習近平も一向に振り上げた手を降ろそうとはしない。米中の冷戦はこれからも続く可能性が高い。
映画のように、民主主義国家連合が勝つのか?一党独裁の共産主義国家(ロシアも含む)が勝つのか?
はたまた(大人の事情で)曖昧な決着になってしまうのか?
これぞまさに"究極の地球対決"ではないだろうか。映画の予告編のように、「乞うご期待!」とは云えないが、結果は歴史のみが知ることになるだろう。人類にとって良い結末になるように、と心から願っている。
てなことで。
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