相撲の世界をガチで描いた「サンクチュアリ聖域」が面白い
Netflix「サンクチュアリ 聖域」は相撲社会をかなりリアルに描いた全8話のドラマだ。
北九州の門司から「猿将部屋」へ入門した不良少年が、やがて四股名「猿桜」を名乗り、強くなっていく姿を描く。
リアルと書いたのは、練習という名の先輩たちの「かわいがり」や、番付順の理不尽な上下関係、「タニマチ」と部屋の関係、相撲協会内の嫉妬に満ちた足の引っ張り合い、それに八百長問題も描かれているからだ。
コメディ要素が強いのかと思ったが、本場所での立ち会いの場面は、ちょっとエグい描かれ方をしてて、正直“引いた“自分がいた。
それにしても、役者がそれぞれ本物の相撲取り然としているのは驚かされた。体型も大きさも申し分ない。
主演の一ノ瀬ワタルは、本当にワルそうで身体も張って頑張っている。他の相撲部屋のキャストもそうだが、全員ガチの練習風景を見せてくれて、出演者は一年前から肉体改造や相撲の稽古をしたという。現場の苦労が映画にリアリティをもたらしていて驚かされる。
映画「シコふんじゃった」のような相撲コメディではない、漫画「のたり松太郎」のような出世、人情話だけではない。
何か「あしたのジョー」を思わせる、人間が抱える苦悩と、乾いた令和の空気感が醸し出す絶妙なブレンドに、ぼくはハマってしまったのである。
だが、惜しむらくは8話のラストが「ここで終わり?」というもので、シーズン2があるかどうかは知らないが、もうちょっとスッキリと終わって欲しかった、と思うのはぼくだけではないはず。
久々登場のピエール瀧、女将さんの小雪、先代貴乃花を思わせる岸谷五朗、犬嶋親方の松尾スズキ、呼び出しの染谷将太、タニマチの笹野高史、ジャーナリストの田口トモロヲなど上手い俳優揃いで、ぼくは特に帰国子女の記者役の忽那汐里の生意気さがすごくハマってると思った。それと主人公の父親役のきたろうの惨めな演技はちょっとうるっと来た。
脚本の金沢知樹、監督の江口カンのコンビが生んだ傑作アクション。出来るならこれからこれをシリーズ化してくれたら嬉しい。