『5つの銅貨』 落涙必至の感動作 ジャズ音楽映画の名作 【懐かし洋画劇場】
ダニー・ケイ主演の名作映画「5つの銅貨」"The Five Pennies" (1959)
若い人には馴染みがないだろうが、50年代のジャズ・ミュージシャンの伝記ものとして、これは有名な「グレン・ミラー物語」「ベニイ・グッドマン物語」を超える大傑作なのである。
本作は1920年代に大人気だったジャズ・バンド 「ファイブ・ペニーズ」とリーダーのレッド・ニコルズを描いた音楽伝記ものであるが、同時に「家族ものの感動編」として屈指の出来なのだ。
(ストーリー)
ユタからNYにやってきたコルネット奏者のレッド・ニコルズ(ダニー・ケイ)は、バンド仲間のトニー(ハリー・ガーディノ)とサッチモ(本人出演)の出演しているクラブで、コーラス・ガールのボビー(バーブラ・ベル・ゲデス)と出会い結婚する。
やがてレッドは自らのバンドを結成、成功し、シンガーのボビーたちと巡業旅行をするが、幼い娘のドロシー(スーザン・ゴードン)の将来を考え家を構える。親が巡業で留守がちのため寂しいドロシーは、クリスマスの夜ラジオから聴こえるお父さんたちの楽し気な演奏をしり目に、大雨の中、庭で一人ブランコに乗る…。それがもとでドロシーは小児麻痺となり歩けなくなってしまう。
責任を感じた父レッドはバンドを解散し、娘の為に造船所務めをし、献身的にリハビリに付き合う。やがて成長したドロシー(チューズディ・ウェルド)のバースデイ・パーティで、娘の友人たちに侮辱されたレッドはカムバックを決意する…。
愛する娘のために成功しているバンドをやめる決心をしたレッドが、父からもらった大事な大事なコルネットを橋の上から投げるシーンが印象的だ。仕事も大事だが、愛する子のために親は犠牲にしなければならないことがあるということを教えてくれる。これは父親になった男が観るべき映画の一本。
音楽映画としては、楽曲も素晴らしいし、サッチモも、ダニー・ケイのアドリブも最高である。サントラを聴くだけでも楽しさがわかってもらえると思う。"Five Pennies" "Bill Bailey, Won't You Please Come Home" "Good Night, Sleep Tight" "Lullaby in Ragtime" "Battle Hymn of the Republic"等々、必ず聴いたことがある曲があるはずだ。
ダニー・ケイといっても若い人は知らないだろう。谷啓はここからとったんだぜ!?と云っても通じまい。ちなみに益田喜頓はバスター・キートンからだぜ!?といっても もっと通じまい(笑) せいぜい、ジブリの音楽を担当する久石譲はクインシー・ジョーンズの当て字だぜ⁉︎ くらいか。ん?それも古い?
あ、そうそうサッチモというのもルイ・アームストロングのことなので、念のため。
だが、ダニー・ケイは20世紀の偉大なエンタティナーの一人であることは覚えておいて損はないと思う。その彼の名演のベストがこの映画であるという(ぼくと同じ考えを持つ)人々や評論家も多い。
ぼくが初めてこの映画を観たのは、テレビの吹替版だった。ダニー・ケイは(もちろん!)羽佐間道夫がやり、大分カットされたヴァージョンだったが、夜中に一人で観て大泣きしたのを覚えている。
ビデオ時代には、家で小学生の頃トランペットを習ってた娘に見せて「リパブリック讃歌」を思いっきり吹くダニー・ケイとサッチモのシーンはかっこいいよなと話したりもした。
ちなみに、娘は「ベニイ・グッドマン物語」が嫌いだ。その理由はクラリネットを演奏するスティーヴ・アレンの指使いが無茶苦茶だから(笑)
レッド・ニコルズという主人公が、グレン・ミラーやベニー・グッドマンに比べて知名度が低いので、この映画を知らない人が多いのは仕方ないだろう。だが食わず嫌いでいるのはもったいない。ジャズ音楽映画としても一級品であるこの名作を一度味わってみてはいかがだろう。
てなことで。
最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました!