記憶にございません
三谷幸喜監督の『記憶にございません！』（19年）は、現代の政治家をおちょくってるコメディ映画。
当地香港でも三谷監督の人気は高く、本作も2020年1月23日に春節（旧正月）にあわせて公開された。だが、コロナ禍の自宅待機の時期と重なり興行的には残念な結果になったと思う。
史上最低の支持率の下品な総理大臣が、演説中に投げられた石で頭を打ち、記憶をなくしてしまう。その後、人が変わったように良い総理に変わっていくというお話。
題名の「記憶にございません」とは、若いネット世代の人たちは知らないかもしれないが、昭和51年に、時の総理大臣田中角栄が逮捕までされたロッキード事件の際、国会の証人喚問で小佐野賢治が何度も何度もこう答えて、当時流行した言葉なんである。
香港版予告編 Reference YouTube
シチュエーション・コメディ好きで、自身もかつてフジテレビで『HR』を作った三谷幸喜が今回選んだ「設定」が、政治家というのが面白い。
その設定を思い出すままに書くと、何かあると官房機密費を使おうとしたり、元総理の娘と結婚したので総理になれていたり、官房長官が「影の総理」と言われる実力者だったり、三流ライターにゆすられていたり、国会休んでフィリピンパブへ行く大臣がいたり、野党党首と男女の関係で「合併しましょ」と迫られたり、昔からの友人に国のプロジェクトの建設を任せようとしたり、「総理あれはああしましょうか」と腹芸使う大臣がいたり、アメリカ大統領とゴルフをしたり、総理の妻も税金使ってやりたい放題だったり、ただのセクハラオヤジだったりと、現実の政治家が日頃やってる事例をそのまま使ってるわけだ。つまり現在の政治そのものがコメディという事なんだろう(笑)
キャストは、総理役の中井貴一はじめ、佐藤浩市、草刈正雄、ディーン藤岡、石田ゆり子、小池栄子、吉田羊、木村佳乃、梶原善など芸達者揃いなので、安心して笑える。
その中でも英語が出来ないのに外務大臣になったという役の、お笑いコンビ ずんの飯尾は、アメリカ大統領とのゴルフでバンカーからなかなか出ない場面でも笑わせるが、実際は浅井企画のゴルフ部所属で、ドライバーはかなり飛ぶと関根勤が話していた。
佐藤浩市や中井貴一もゴルフの腕前は相当らしいので、この場面も面白い。ちなみにロケ地は、千代田カントリー倶楽部。
驚いたのは、こんな総理をおちょくった映画の試写会に安倍総理が来たということ。
記事を読むと「消費税を上げやがって」という場面に、ちょっとムッとしたみたいで、三谷監督「グッジョブ！」（笑）
テイストが、昭和のサラリーマン物のシリーズみたいで好感が持てる。音楽（荻野清子）も懐かしい感じで映画に合ってた。僕は気に入った。
てなことで。
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