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「TENET テネット」 クリストファー・ノーランの新作は劇場再開を待った甲斐があった見事な大作!

クリストファー・ノーラン脚本・監督の新作映画「TENET テネット」。香港でも2020年9月10日から公開になったので初日に楽しんで来た。

200億円かけた超大作。ノーラン監督が配信での公開を拒んだので、コロナ禍で劇場が再開するまで公開を延期していた。映画を見れば、その理由がわかる。ともかく大迫力なのだ。これは劇場で味わわなければならんじゃろう、という面白い映画だった。素晴らしかった。

満員の観客が公演を待つ、ウクライナのオペラハウス。そこへ、いきなりテロ集団が乱入。それを阻止すべく特殊部隊が突入してくる。(ここは、「ダークナイト」の冒頭の銀行強盗を大がかりにしたものに思える)

名もないアメリカ人の男(ジョン・デヴィット・ワシントン)は、その会場で、仲間を救うため身代わりになり捕らえられる。CIA職員が自殺を図るため仕込んだカプセルを噛むが、彼は死んではいなかった...

次の場面、彼は船の上で、〈TENET〉と呼ばれる、あるミッションを命じられる。それは時間を逆行して、第三次世界大戦を防ぐというもの。突然の巨大な任務。はたして彼はミッションをコンプリートできるのか?

Reference YouTube 日本版予告

感想と解説

時間軸がわからなくなる映画だ。だからこの場面は今なの?過去なの?と頭の中が混乱するものの、まぁどえらい迫力のアクション・シーンもあり、見終わって、すごいものを見たなという感覚になった。

世界諜報戦の話なので、全体のムウドは、007ジェームズ・ボンドだ。それに今回はマカロニ・ウェスタンのテイストも加味されているからたまらない。
クリストファー・ノーランは、大の007好きとして知られている。「インセプション」でも、「女王陛下の007」やってたし(笑)
ちまたで噂されている、ダニエル・クレイグの次のボンドは黒人だ、という説を先にやっちゃったから、本家007の製作陣は困ってるのではないか?
バシッと決まったスーツ(ブルックス・ブラザーズだとディスられるが・笑)、高級リゾート地の豪華なクルーザーやセイリング... そんなに好きなら本家のボンド・ムービーもまかせてあげればいいのにと思うよね。 

アクション・シーンは、本物のボーイング747を格納庫へぶつける大迫力。CG嫌いなノーラン監督はどうかしとるわ(笑)
時間が逆行するため、カーチェイスのシーンでは、BMWを追っかけて、アウディがバックで爆走する。(このシーンでは、20名以上の優秀なスタント・チームが参加した。その中には「ダークナイト」で大型トレイラーを縦に一回転させたジム・ウォルキーも含まれていた)

Reference YouTube 香港版予告「天能」

これはタイム・トラベルではない。時間を逆行するのである。銃弾は撃つのではなく、キャッチする。主人公たちは、呼吸ができないため、酸素マスクをつける。画面は、逆回転する映像と、普通に動く映像が合わさっている。
よくこんなこと考えついたなと思ったが、2004年の映画「プライマー」も時間が反転する話だった。

映画を見る前に、香港の地下鉄駅のポスターで、「TENET」という題名を見て、「うむ、これは『山本山』みたいな回文だな」とわかったが、調べてみると、古くはポンペイの遺跡まで遡る、5文字で作られた縦横ラテン語の回文だった。つまり
SATOR 
AREPO  
TENET  
OPERA  
ROTAS  
ということ。それぞれ、(ケネス・ブラナーの役名)、(贋作絵画師の名)、(主人公のミッション・題名)、(冒頭のシーン)、(オスロ空港の警備会社)として登場する。

主人公の「名もなき男」ジョン・デヴィッド・ワシントン(「ブラック・クランズマン」)は、元アメフト選手で、名優デンゼル・ワシントンの息子だが、この大役を見事に演じ切った。ロバート・パティンソン(「トワイライト」)は、役得と思うほどカッコいい役どころ。キャット(Kat)役のエリザベス・デビッキは、背が高すぎるがボンド映画を真似た本作にはぴったり。マイケル・ケインもロンドンの場面にすんなりハマる。演技派の重鎮ケネス・ブラナーは、ソビエトなまりの悪党アンドレイ・セイターを凄みをもって演じていてサスガ。

この作品は、IMAXの撮影も大変だったろう。カメラのホイテ・ヴァン・ホイテマは、「ダンケルク」「インターステラー」とノーラン作品以外にも、「007スペクター」があるから、ボンド映画っぽい絵作りはお手の物だったかも。
音楽は、ハンス・ジマーは「DUNE」(20年)で忙しく、はじめてノーラン作品から外れ、代わりにジマーの友人のルドウィグ・ゴランソン(「ブラックパンサー」)が参加。この音楽と、音響がまた素晴らしくて、だから劇場で見てよかったと思わされたのである。

最初は面食らうが、時間のパズルを解いていく2時間30分。8月28日に香港の映画館も再開となり、ぼく自身約8ヶ月ぶりの劇場体験は、満腹感でいっぱいになった。だけど、確認のためもう一回見ようと思っとります(爆)

日本では、2020年9月18日公開。

てなことで。

11-Sep-20 by nobu


最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました!