『フォードvsフェラーリ』 は車好きのおっさん世代必見「栄光のル・マン’66」だ!
マット・デイモン、クリスチャン・ベール主演の『フォードvsフェラーリ』”Ford v Ferrari” (2019)は、事実に基づいた感涙もののカーレース映画だった!
1963年、米フォード・モーターズは、イタリアのスポーツカー会社フェラーリを買収しようとしたがコケにされ、怒ったフォード2世(トレーシー・レッツ)は自前でル・マン24時間レースへ出場すると決める。副社長のリー・アイアコッカ(ジョン・バーンサル)は、ル・マンに出場経験のあるキャロル・シェルビー(マット・ディモン)を筆頭に、偏屈だが腕のいいケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)というレーサーを雇い入れ編成チームを作り「打倒フェラーリ」に向けて走りだす。
彼らがレース用に開発するのが、フォード・GT40。もう今やレトロなレースカーなんだが、そのエンジン音がシビれる。車ってのは加速する時のエンジンの「音」なんだよなぁ、と思う。敵対するフェラーリとの音の違いも聞き分けてほしい(そのイタリアらしい赤のボディカラーが美しいことも)。
レースで走ってくるケン・マイルズに「7,000RPM」と指示が出て、そこまで上げて上げて、トップにガーッと入れて、一気にビューンと出て行くシーンは鳥肌モノ!これは映画館の大画面、大音量で体感してほしい。
この映画は、車好きのおっさんにはたまらん映画と思う。ネット世代の若い人たちにはわからん感情だろうが、我々昭和のおっさん世代は子供の頃、スポーツカーや高級車に憧れて、「大人になったら金稼いで、カッコイイ車に乗りたい」という夢をみんな持っていたものだ。
劇中も、なぜフォードは若者受けしないのか?のプレゼンで、「ジェームズ・ボンドはフォードには乗りません」と言うと、フォード2世は「彼は堕落した男だからな」と笑わせるシーンがある。その『ゴールドフィンガー』(‘64)のアストンマーティンはいまだに007の新作映画に登場するアイコンである。
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この映画を観ていて、おっさん世代が必ずや思い出すのは、『グラン・プリ』(‘66)と『栄光のル・マン』(‘71)の2本だろう。
『グラン・プリ』は、ジョン・フランケンハイマー監督が撮ったカーレース映画の大傑作。60年代のF1グランプリを描いたもの。ジェームズ・ガーナー、イヴ・モンタン、それに我らが三船敏朗が出演。
『栄光のル・マン』は、スティーブ・マックイーン主演の、この映画と同じフランスのル・マン24時間レースを舞台にしたものだった。
『グラン・プリ』は映画としての出来も素晴らしいし、シネラマならではのレースシーンも見事だ。ソール・バスのタイトルバック、それにかぶさるモーリス・ジャールの音楽もぞくぞくする。
対する『栄光のル・マン』はドラマのシーンがちょっとね... というところもあるが、なんせ主演がマックイーンだしレースシーンも良いので、映画として残り知名度も高い。あの白服レーサー姿のマックィーンのポスターはぼくも部屋に飾っていた。
同時代ポール・ニューマン主演の『レーサー』(‘69)や、日本では石原裕次郎主演の『栄光への5000キロ』(‘69)もあったな。おっさん世代はそんなカーレースの映画を観て育ったのだ(子供の頃はアニメ『チキチキマシーン猛レース』や『マッハGO』を見てたし・笑)。
この『フォードvsフェラーリ』は、主演のマット・デイモン、クリスチャン・ベールがとても良い。ケンの奥さん(カトリーナ・バルフ)も鼻っ柱が強いがイイオンナだ。153分はちと長いと思うかも知れないが、後半のル・マン24時間レースは燃える。男同士の友情物語としても面白く、ラストは泣けた。
監督のジェームズ・マンゴールドは、前作『ローガン』とこの映画で、ロバート・アルドリッチあたりのクラスに近付いた感がある。
おそらく10年後、自動車産業はEV全盛の時代になっているだろう。香港では、毎年E-Prixという電気自動車のレースが開催されている。地球環境にもよいという謳い文句で良いことなのだが、F1のようなエンジン音が聞けないのがおっさんには物足りなく感じてしまう。
そういう意味で、この映画はギリギリ間にあったかもしれない。もうハリウッドはこんな本物のガソリン車でレース映画作れないかも。60年代、ヨーロッパ車が席巻していたカーレースにアメ車で挑んだエンジニア達の心意気。この映画はそんな「物作り」をする人々へのエールである。
映画館へ車で行った人は、帰り道スピードの出し過ぎに気をつけて(笑)
日本公開は、2020年1月10日。
てなことで。
最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました!