数々の名山を望む上高地、4日間の家族旅(2/4)
上高地旅行2日目は焼岳登山から始まり、そして夜は上高地帝国ホテルでの高級フレンチというギャップの大きい一日。
テラス席は見逃すな、絶景の白樺荘の朝食
白樺荘の朝食は6:45スタートと早い。登山口への移動の関係からその時間を狙うはずだったが、前日の疲れもありパッと起きられるわけもなく、7:00に朝食会場であるラ・ベルフォーレに到着。入り口でスタッフさんから確認、「テラス席は満席ですが、よろしいでしょうか?」。「え?7時で既に?」と思ったが、よくよく思い返せば、白樺荘のハイライトはこのテラス席からの眺望。皆こぞって朝から最高の席を狙ってくるのだから当然だ。しかし、私たちはケツカッチンなので仕方なく入店。ただ、テラス席の人たちがどうしても羨ましく、諦めの悪い私は、テラス席から人が抜け始めたところを見るや、すかさず座席変更をリクエスト!「先にお待ちのお客様もいらっしゃいますので少々お待ちください」と言われたのも束の間、ほんの数分でテラス席に移動することに成功。7:40頃には一巡し始めるので狙い目だ。景色は最高!そして何より空気が気持ち良い。白樺荘に訪れる際は、何がなんでもテラス席での朝食をお勧めしたい。
そんなこんなでのんびりしてしまい、結局、朝食会場を出たのは8:00。チェックアウトしたのは8:25。さあ、焼岳へ急ごう。
バスターミナルからタクシーに乗り込み、まずは、スーツケースなどの荷物を預けるべく上高地帝国ホテルへ向かった。今日から宿泊するというのは言うまでも無いが、焼岳の下山口からは徒歩で帝国ホテルにアクセス可能だからだ。
なお、バスターミナルのタクシーは、8時頃には数台待っており、早ければ6時頃には1台くらいは待機しているかもしれないとの事だった。予約はできない。
初級者にはちょっと厳しめ、新中の湯〜上高地ルート縦走
焼岳登山の詳細な記録は、下記YAMAPのコメントをご覧頂きたいが、そもそも焼岳はどの程度のレベルの山なのか。
活火山・焼岳北峰から望む上高地
https://yamap.com/activities/19580531
長野県山岳総合センターが作成した「信州 山のグレーディング」によれば、体力度は高尾山と同様の2(日帰りのレベルは3段階評価)、技術的難易度はB(高尾山はA=初心者OK、A~Eの5段階評価)で、「急な登下降や崖があり登山経験が必要」との評価。地元のネイチャーガイドからも、「新中の湯ルートの往復は多少の登山経験があれば問題なし、上高地ルートは険しく厳しいので十分気をつけるように」、とのコメント。昨年から始めた登山。これまでに、日向山、弥三郎岳、陣馬山、筑波山と低山中心で初級者向けの山をクリアしてきた。徐々にレベルを上げる時と考え、縦走することにした。
結果、踏破できたのだが、上高地ルートの下山には苦労した。両足の親指が水膨れ、翌日以降一週間近く、ひどい前もも痛で階段や下り坂はよちよち歩きと、想像以上にダメージが大きかった。昨年末から週2でジョギング、週1の筋トレで鍛えてきたが、まだまだ力不足。先輩曰く、「山の筋肉は山でしか鍛えられない」。
無事下山して、上高地帝国ホテルにチェックイン(17:15)。
約130年の伝統と格式を感じる、上高地帝国ホテルとそのディナー
上高地帝国ホテルは、特徴的な赤い三角屋根に丸太(栗)の外装で、「アルプスの少女ハイジ」に出てきそうな山の休息所を思わせながらも、さすが帝国ホテルという荘厳な趣もあり、山岳リゾートと呼ぶに相応しい佇まいだ。
一階のホテルロビーに入ってすぐ正面には、上高地帝国ホテルの象徴である大きなマントルピースが待ち構える。マントルピースとは、暖炉の焚き口の上部に設けられる装飾の事だ。普段であれば、17時から火入れ式があるそうなのだが、残念ながらコロナの影響で中止となっており、私たちはそれを見る事は出来なかった。
内装は、ダークブラウンの木材と白壁で統一されており、一階の床は石畳。エレベーターの押しボタンは、一階はGround floorで2階がFirst floorとヨーロッパ式になっている。もともと上高地帝国ホテルは、1890年に「日本の迎賓館」として建てられた建物(発起人の一人が渋沢栄一)であり、随所に海外を強く意識した作りが見られる。お部屋は、統一感のある素敵な内装である事は勿論だが、特徴的な点としては、暖房しか無い(でも快適)、家族の場合は2室の連携が可能、SDGsを推進しており歯ブラシは木製である事が挙げられよう。
ディナーは、19:45からダイニングルームでフレンチのコース。ここから、妻の家族と合流。なおダイニングルームでは、Tシャツ、半ズボン、サンダル、登山靴などでの利用は禁止されており、男性はジャケット、女性はドレスやワンピース着用の方が多い。ディナーコースはいくつかあるのだが、ローストビーフがメインの神河内コースを選択。上高地は、古くから神降地、神合地、神垣内、神河内とされ、神々を祀るに最も相応しい神聖な浄地だった事から、そのコース名が来ているようだ。コースメニューは偶数と奇数日で変わるようだが、奇数日の本日は、信濃雪鱒のタルタルと市田柿、海の幸のチャウダーと長野産南瓜のニョッキ、金目鯛のグリエ、国産牛のローストビーフ、信州産ブドウとフロマージュブランのヴェリーヌ仕立て、最後にコーヒーと小菓子。特に印象的だったのは、信濃雪鱒のタルタルとローストビーフだ。雪鱒は信州の綺麗な湧き水で育った長野特産魚で、適度な脂ののりと甘味が美味しい。
ローストビーフは、今や多くのホテルレストランでお馴染みとなっているローストビーフワゴンから提供されるのだが、実は、日本で初めてこれを行ったのが帝国ホテルだそうだ(1923年)。肉の表面は非常に薄く焼け目がつき、断面の大部分が綺麗な赤身のピンク色をしている絶妙な焼き加減で、程よいサシが入っている。信州産の林檎も加わった優しいグレイビーソースとよく合い、実に美味しい。そして、このローストビーフのテイストにマッチするワインとしてソムリエにおすすめ頂いた赤ワイン(ヴィニュロンズ・リザーヴ・メルロー 2019)を口に含めば、最高のハーモニーを醸し出す。この赤ワインも長野県産。知ったような口を聞くほどの経験も味覚もないが、ここまで美味しい日本産の赤ワインは初めてだ。ローストビーフを食べ終えかけたその時、「おかわりはいかがですか?」、「え?でももちろん追加料金掛かっちゃいますよね?」と、やや場違いな庶民丸出しの逆質問を繰り出してしまったのだが、静かに首を横に振った給仕さんを見てすかさず、「では一枚お願いします」とリクエスト。まさかのおかわり自由に内心歓喜。登山によって、基礎代謝含めて4,300kcal消費していた私にとっては、最高の栄養補給となった。さて、残りの客も少なくなり、私たちも21:30頃退出。翌日、私たちと同様に焼岳登山に挑むお義父さんと妻のお兄さんに登山ルートと持ち物のアドバイスをして0時過ぎに就寝。
そして明日3日目は、朝から一日、お義母さんと一緒に明神池ハイキングの予定だ。
(2/4 完)
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