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ボクがボクであること(活動記録104期第8話感想)

時間というのは誰にでも平等であり、残酷である。
沙知先輩が巣立っていったように。
今年度も。刻一刻とその時が迫る。

※この記事はLink!Like!ラブライブ!活動記録104期第8話『Not a marionette』のネタバレが含まれています。


【スクールアイドル】夕霧綴理


好きな言葉は「わきあいあい」
と、あるように夕霧綴理はスクールアイドルクラブの人数が増えることを喜び「賑やかなほうがいい」と口にしていました。

恵まれた体躯、すらりと伸びた手足、人の目を引く美貌とダンス。芸術分野に秀でており感受性が豊かでありながら自分の気持ちを言葉にするのがやや苦手。そんな彼女がまわりから一線を引かれて距離を置かれていたのは想像に難くありません。
___天才の言うことはわからない(注1)

「雨が止むまでここにいてもいい」と沙知先輩にスクールアイドルクラブという居場所をもらった。
同期の梢・慈は自分と対等にぶつかり親友でライバルと呼べるまでの間柄になった。
ユニットを組んだ後輩のさやかは幾度となく真正面から向き合い隣に立ち続けた。
花帆とは綴理いわく「かほと1番気が合うのはボク」と言うくらいで「チーム自由」を結成する関係になった(注2)
瑠璃乃とは期間限定ユニットを結成したなかで互いが互いに人に寄り添うことを学び合った。
それらの出来事が彼女にとってどれだけ嬉しいことだっただろうか。

104期になり9人になった部室は少し手狭ですが非常に賑やかで、梢と自分の2人しかいなかった頃を知る綴理は満足げでした。スクールアイドルとしてがんばるみんなのきらめきを1番近くで見ていられる。スクールアイドルクラブは綴理にとって大好きで大切な場所となっていました。
そんな大好きで大切なメンバーが、蓮ノ空がさいきょーだということを証明するために。ラブライブ優勝を目指して地区予選を突破し北陸予選へと熱が高まっていました。

ラブライブ優勝へ向けて日々を過ごしていた綴理ですが、ひょんなことから蓮ノ空から自分がいなくなることを強烈に意識してしまいます。

寮で隣の部屋に入っていた生徒が早期卒業したことを寮母さんから知らされます。

卒業と明日の進路と正しいこと


「珍しいことではない」
芸術系に秀でている蓮ノ空では在学中になんらかの結果を出して次のステップへ進むということがよくあるのかもしれません。高校在学中に宝塚に合格した人が高校を中退するように。
中を覗くと空っぽになった部屋。私物がなくなった寮の部屋はあまりにも広く見えました。その生徒が引っ越して掃除が入るまで気がつかなかったということはそれほど交流があったわけではないかもしれません。とはいえ隣の部屋ということはその生徒と顔を合わせる機会もそれなりにあったかもしれません。
「やほ」「おはよう、夕霧さん」くらいの挨拶もあったかもしれません。そんな「いつもの日常風景」が突然失われてしまい困惑します。

そんな折に綴理が進路希望調査票を提出していないことが発覚します。3年生の11月で?!AOや推薦でもう大学が決まっている人がちらほらいてもおかしくない11月に志望校選定どころか白紙なのはやばいよ。ということを思ったのは私だけではないらしくスクールアイドルクラブの面々も気が気でない様子。

卒業しなきゃ………ダメ?

赤裸々な綴理の気持ちが嘘偽りなく吐き出されその場にいた梢達も卒業すること、終わりがあることの寂しさを口にしました。卒業という区切りがあるからこそスクールアイドルを頑張れる。梢の言葉が非常に重く感じます。

ずっとここにいたいって思ってるけど
きっと旅立っていくってわかってるんだよ

WATER BLUE NEW WORLD

卒業とはお別れするということ。離れ離れになるということ。寂しいです。当たり前です。

そこで小鈴からオープンキャンパス(職業体験)してはどうか?と提案されました。卒業後にやりたいことを見つければ卒業したくないという気持ちが薄まり進路希望調査票も埋まる。
半ば押し切られる形で(弁当を人質にされる形で)職業体験へと向かうことにしました。

___それが正しいことなら。

正しいこと。それは綴理にとっては納得できないけどそれを飲み込む時に出てきた言葉。梢が振り付け本番でいきなり変えたことも。沙知先輩がクラブから去ったことも。雨が降ったらステージができないことも。
今回の職業体験もみんなが言うなら正しいことだから………

ボクはここにいたいのに

colorfulnessと才能とやりたいこと


かくして綴理は色んな人の協力もあり職業体験へと赴くこととなりました。まずは寮母さんの紹介で役所の事務仕事を。
作曲をPCで行い数学と情報処理が得意な綴理にとってはデータ入力自体は簡単どころではなかったのでしょう。しかし仕事の報告書を書くことで苦労してしまいます。報告、つまり誰かになにかを伝えるのが得意ではない綴理の弱みが出てしまいました。得意不得意がハッキリしている綴理らしいですね。
報告書を引き受けたさやかから「他の仕事も見てみてはどうか」と提案されほんのり落ち込みながらもこれを受け入れ様々な部署を見てまわり始めました。
子育て支援課へと案内した市民との会話をきっかけに行列のできる夕霧相談所が始まりました。
ひとりひとりに寄り添う
相手の気持ちを慮りみんなの悩みが解けたらいいなと願う綴理。
会話の中で綴理の家庭環境も少し明かされました。仕事が忙しく家を空けがちな親。そういった家庭環境から忙しい親を思いやり本音を飲み込みがちになっていったのかな。

事務仕事の報告はうまくいかなかった。
受付でみんなの話を聞いてあげることはうまくいった。

「誰かのため」それが原動力?

続いて吟子の紹介で染物の工房、その体験コーナーを任されることとなりました。

ボク、こういうの得意かもしれない。

その言葉通りアドバイスを求める声に時には自主性に任せ、時には抽象的ながらも的確なアドバイスをして大人気になっていました。これもまたひとりひとりに寄り添うことかもしれません。
綴理自身のデザインを求められ描いたものは吟子も絶賛する仕上がりとなりました。ここにいるみんなのおかげで描けた。いいと思ってくれたのは自分の気持ちが伝わったから。
ラブライブ全国大会で敗れた時もそうでした。蓮ノ空のことが大好きでさいきょーだと思っているのにその気持ちが伝わらなかったから負けてしまった。自分がいいと思ったものを相手もいいと思ってくれた時に綴理は気持ちが伝わったと実感できるのかもしれません。
芸術方面に才能を発揮し小鈴に「イキイキしてる」と評されこれもまたスクールアイドルと同じく「みんなで作る芸術なのかもしれない。」と感じます。

最後にれいかさんのもとで商店街のお手伝い。
その接客にれいかさんが驚きます。2年前とはまるで別人と。
れいかさんに「立派なスクールアイドルになった」と言われてどれだけ嬉しかったことでしょう。

さやか「立っているだけの綴理先輩が必要だった」
れいかさん「立ってるだけの綴理ちゃんじゃない」
この真逆の評価に最初は違和感を覚えていました。ですが少し考えてみたらそんなのは当たり前でした。
2年前の立っているだけの夕霧綴理との立っているだけの夕霧綴理は違う。
さやかは毎日綴理と一緒にいてその努力と成長の過程を見てきたのに対し、れいかさんは当たり前ですが学校の外の人間です。綴理が商店街に来る、もしくはれいかさんが配信を見ることでしか綴理を見ることはできません。
活動記録を見ればわかることですがさやかが入学してから1年半ほどの時間の中で本当にいろいろありました。ですがれいかさんは活動記録を見ることはできません
だから成長の「過程を見てきたさやか」と成長した「結果だけを見たれいかさん」の綴理に対する評価は真逆になったのでしょう。さやかは最初から本当はわかっていたのかもしれませんね。綴理にはできることが増えてるということに。

綴理はその突飛な言動に反して明確な理論を自分の中に持っているのだと思います。理(ことわり)を綴る(つづる)の名前の通り。
ただちょっと途中式を説明するのが苦手で飛ばしがちなのかな。
思えば活動記録103期第6話『あの日のこころ、明日のこころ』part4においても
(ラブライブ優勝が目標でそのために相談せず大丈夫だと嘘をついて本番で振り付けを変えてまで勝とうとしたのに蓮ノ空にいるより優勝が近づく)スカウトを受けないのはおかしい。
()内を全部省いて結論だけ伝えては誤解を生んでしまっても無理はないですよね。これに関しては梢の隠し事が大きすぎたことも一因ではあります。

また蓮ノ空2ndライブ幕張公演においても105期のスクールアイドルクラブの人数を40.5人と予想しています。おそらく数学が好きな彼女の中では人数の増え方に明確な法則があるのでしょう。が、説明がない。
※フォロワーからその法則についての考察をお借りしました。

途中式をすっとばして結論をいきなり出しがちな綴理に対して大学のオープンキャンパスに行かせるのではなく職業体験をさせるというのは効果的だなと思いました。
やりたいこと見つかった?ならこういう勉強をしてこういう資格が必要かもね。ならこの大学はどう?といった筋道の付け方の方が綴理が納得すると思ったのではないでしょうか。

式めっちゃ書いてたわ………


独りとDOLLCHESTRAと夕霧綴理


職業体験を通じて「できること」「できないこと」「やりたいこと」に少しずつ気づいていきました。そのなかで「できること」を続けていけば世界は夕霧綴理を認めて受け入れてくれることに気づきます。スクールアイドルではない夕霧綴理を。
卒業後に希望を見出し進路調査票に親のハンコを貰い学校へと戻りました。

しかしまたひょんなことがきっかけでここにいたいと思ってしまいます。
部室の大掃除でぺきんだっく(綴理がどこかから拾ってきたとりの人形)の処遇を巡って。

そう、なにも解決などしていなかった。というか問題点がズレていた。
スクールアイドルでなくなるのが嫌だったのではない。スクールアイドルかどうかなんて心の持ちよう一つであると沙知先輩に教わったから。この9人がいるところから出て行きたくなかったのだ。
「卒業後に希望が持てた」
「ここにいたい」
2つの気持ちは両立し得る。
ここからいなくなり独りになるということは
「みんなのなかから自分がいなくなる」
「自分の中からみんながいなくなる」
ということであると。
卒業を嫌がる綴理のために笑顔にするチャレンジと時間を止めるチャレンジをする小鈴。そのまっすぐさがあまりにも眩しい。どんなに難しくてもまっすぐ進んでいく小鈴が。
綴理は「できなそうだってわかると、みんなに申し訳なくなって指先まで凍るんだ」と言っていました。そんな綴理にとっては小鈴が何度失敗しても何度でも挑戦する姿が眩しかったし、尊敬していたのではないかと思います。お互いがお互いを尊敬し影響し合っているDOLLCHESTRAというユニットが私は大好きです。
小鈴の「時間よ止まれ!」という大きな声を聞きつけてさやかも綴理のもとへやってきました。そして衝撃の一言を口にします。

ガキか?!ガキです。高校生なんだから。
あまりにも極論ですが「明日のことなんて誰にもわからない」のは本当です。この一連のきっかけはなんでしたか?寮の隣の部屋の生徒が早期卒業していなくなってしまったことですよね。未来のことなんて誰にもわかりません。それは自分自身が作っていくものだから。
卒業した綴理の隣に居続けることはできません。それでも、一緒にいられなくても綴理には幸せで、笑っていてほしい。その気持ちだけはさやかも小鈴も同じです。2人とも綴理のことが大好きなのだから。
だからひとりでもこの大地にしっかりと足をつけて立ち、どんな困難も乗り越えていかなければいけない。夕霧綴理が夕霧綴理を幸せにしていかなければならない。
大声で気持ちをぶつけ合った綴理とさやか。それはこの2人の最初で最後のタイマンビッグボイス選手権だったのかもしれません。


自宅で親を待ちながら一晩ひとりで過ごす間、一緒にはいられずとも写真を見返すことで自分の中にみんながいることを再確認していましたね。本当はわかっていたんです。例えひとりになっても綴理の中にはみんながいることを。ひとりでも独りではないと。

今は一緒にいられなくとも


先輩と後輩

AWOKEで引きちぎりKNOTで再び結び直した鎖の先に繋がっていたのは未練という名の錨でした。
11月と少し早いですが卒業し巣立っていく人も遺される人も未練に区切りをつけるために。錨を上げて出航するために。

ビッグボイス選手権

八重咲ステージを使い各々が思いの丈を叫ぶ場が綴理の手によって用意されました。
「綴理先輩にあんな悲しい顔をさせるものなんて嫌いだ!」
「梢センパイとは一生一緒にスリーズブーケです」
「もっともっと最強のみらくらぱーく!をずっとずっと見ていたいんです〜!」
「離れていたって気持ちは同じだって信じてるから」
置いていくのと、置いていかれるの、どっちが辛いんだろうね。置いていかれる側の4人が思いを叫びました。みんなの3年生の3人が大好きなんです。3人もいなくなるなんて考えられない。俺もおんなじだよ。

そして主催者の綴理の順番となりました。
「ありがとう、大好きだよ」
最後の錨は自分のことをスクールアイドルにしてくれたみんなへの感謝の言葉。そう伝える綴理の表情は晴れやかでした。


そしてわがままにはわがままで返す。

ずっと言わずにいた胸の内を最大級のわがままをぶちまけました。
「わがままになっていい」あの日私にそう言ったのは他の誰でもないあなただから。


ビッグボイス選手権も終わり後片付けの最中に小鈴・花帆・瑠璃乃が綴理に感謝を伝えにきました。
たくさんのものを綴理に貰っていたと。
綴理のなかにみんながいるように、みんなの中にも綴理がいた。それは例え綴理が蓮ノ空を卒業してもスクールアイドルでなくなっても変わらないんだ。

【    】夕霧綴理

自分で決めて未来を作らなければならない。それは本当は最初からできていたんです。誰に言われるでもなくスクールアイドルクラブのドアを叩いたあの日から。

慈、ずっと綴理を気にかけてくれてありがとう

綴理のやりたいこと。誰かのがんばるきらめきを近くで見ること。それを助けること。
綴理の用意する舞台はなにかを強制されるわけでも、誰かに踊らされる場所でもない。そこに立った誰かが、時には綴理自身がやりたいことができる場所。

操り人形のマリオネットはどこにもいなかった。

Not a marionette 

AWOKE

蓮ノ空を卒業したら【】に入る文字は何になっていくのでしょうか。なにもそれは綴理だけの話ではなく梢も慈も同じです。来年には花帆とさやかと瑠璃乃も。その次の年は吟子と小鈴と姫芽も。卒業した彼女たちにはどんな未来が待っているのか。それが描かれることは無いでしょう。ラブライブ!は今を生きるスクールアイドルのお話ですから。でも見れないのならせめて蓮ノ空のみんなのこれからの日々の未来が幸せで笑顔に満ち溢れていることを願います。

もちろん沙知先輩にも幸せでいてほしいと願っています

綴理は沙知先輩みたいになりたいと言っていました。雨に降られていたところに傘をさしてくれたように自分も誰かにしてあげたい。
先輩にしてもらったことを後輩に返す。これは沙知先輩に言われたことでもありましたね。
でもそれはきっと、ずっと前から綴理がやっていたことなんだと思います。
クラブがバラバラになっても梢と2人でクラブに居続けたことも。
きらめきに憧れるさやかをスクールアイドルクラブに招いたことも。
自分のきらめきを見つけ直したさやかにフィギュアスケートに戻れると言ったことも。
梢の本音を引っ張り出して4人でDEEPNESSを完成させたことも。
まだ見ぬ来年の新入生のためにオープンキャンパス実行委員をやったことも。
クラブを離れた沙知先輩とのわだかまりが解けたことも。
慈と喧嘩した瑠璃乃と一緒にいたことも。
撮影ができなくなった小鈴に助言したことも。
ビッグボイス選手権をやったことも。

全部全部綴理自身が誰かのためを思ってしたことだった。それがまだ綴理自身の中では繋がっていないのでしょう。途中式が苦手だから。

正解が見えないせいで
心は負けそうになるけど
何回も立ち上がれたのは
誰かじゃない
誰かじゃない
他でもない
僕のため
走るよ ずっと

Proof


誰かのためにこんなに頑張れる夕霧綴理が自分のために、スクールアイドルではないただの夕霧綴理のためにがんばれるようになったら

___凄いことができそうだ

信綱


(注1)Link!Like!ラブライブ!FIRST FAN BOOK
HASU SHORT SHORT夕霧綴理編「マリオネット・ソロコンサート」
(注2)りんく!らいふ!ラブライブ!103期第54話

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