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翻訳記事:デザインシステムの破られた約束;なぜルールに従っても優れた製品が得られないのに従うのか

「形態は機能に従う(Form follows Function)」という格言を残したのはアメリカ近代建築の巨匠、ルイス・サリヴァンです。

シカゴのウェインライトビル

サリヴァンの合理性と機能性を追求する機能美の思想は、その後の総合的造形教育機関「バウハウス」へと受け継がれていくわけですが…(以下省略

合理的機能美のロジックは輝きを失うことはなく、個人的に情報設計や企業戦略のロジックを考える歳、常に頭のどこかで考えてしまい、モデルの構造化に無駄に時間を費やしてしまいます(汗)

さて、「形態は機能に従う」といえば、「形態は感情に従う(Forms follows Emotion)」は、frogデザインの創設者のハルトムット・エスリンガーの弁。

そして「Form follows Feeling」と言ったのは、今回の翻訳した記事を書いたItai Vonshak。この夏までGoogleのVP of Designだった方です。Googleの前はFacebookの秘密組織「Building 8」でプロダクト開発ヘッド。さらにそれ以前はLGやPalmでwebOSのプロダクトデザイン開発を指揮していた方ですね。色々歴史を感じます。

そんなMaterial Design 3の開発を指揮していた彼が、昨今議論のたえないデザインシステムについての思いを書いた一説です。

Googleを辞めた後に書いているのに意味がありそうにもうけ取れますが、内容にネガティブさはないので、特に意味はないのだと思います。

ここで書かれてる内容は、デザインシステムを推進している人が常々思っていることでもあると思いますが、決してネガティブな意見ではなく、その先にあるべきこと;デザイナーとして何をすべきか?のミッションステートメントと捉えると未来は明るいのかもしれません。答えはないですが。

以下、翻訳(著者許諾済み)


デザインシステムの破られた約束;なぜルールに従っても優れた製品が得られないのに従うのか

By Itai Vonshak
VP, Design
October 11, 2024

私は過去5年間、おそらく世界最大であり最も知名度の高いデザインシステムであるGoogleのMaterial Designチームを率いてきました。素晴らしいリソースに支えられ、素晴らしいマインドの人たちと一緒にいました。それでも、デザインシステムは私たちを失望させた、という思いを払拭することはできません。取り扱い説明書に書かれているようにはなりませんでした。

話を巻き戻します。デザインシステムの公約は魅力的でした:一体感のある体験を構築するプロセスを加速し、高品質と一貫性を様々なスケールで担保する。私たちは、パターン、コンポーネント、モーション、コンテンツ戦略、さらにはマイクロインタラクションを包含するシステムを構想しました。楽しい体験を生み出すための総合的なガイドです。

しかし、道の途中でコンポーネント、トークン、ドキュメントといった茂みの中に迷い込んでしまいました。デザインシステムは、厳格なルールブック+美しいFigmaのステッカーシートとなり、創造性を抑圧し、デザイナーを終わりのない更新作業に埋もれさせました。そうして、いつのまにかそれを採用してもらうことが主なチャレンジになりました。デザインシステムの専門家なら誰でも、実際にデザインシステムを設計するよりも、人々にデザインシステムを使ってもらうように説得することに多くの時間を費やしていると言うでしょう。もしかして、デザインシステムのプロダクトマーケットフィットはまだ到達してないのでしょうか?

デザインシステムの残酷な真実はこうです:

  • 未読の小説。読む必要があるものはすべて死んだ状態。誰もマニュアルを読みません。パターンは無意味になっていて、パターンをコードに落とし込んでいないため、本来の目的を果たさず、ただの死んだテキストになっています。

  • イノベーションを潰す。デザイナーに力を与えるのではなく、あらかじめ決められた箱に押し込めることで、均質なデジタル体験の海が生まれます。デザイナーは、特定の問題をどのように解決するかよりも、どのパターンを使用するかを理解するのに多くの時間を費やすことがよくあります。

  • メンテナンスのブラックホール。巨大な組織全体で常に最新の状態に保ち、一貫性を保つことは、シーシュポスタスク(果てしない無駄な仕事)です。

  • AI時代の恐竜。AIがコーディングに革命をもたらしている一方で、デザインシステムは過去にとらわれたままで、私たちを前進させるのではなく、停滞させています。

  • スケールしない。長期的な視野で文書化する余裕がないようなプロダクトマーケットフィットを目指して努力している小さなチームを失望させます。同時に、一元化されたシステムが妥協点となり、単一のアプリケーションに対する有効性が薄れるような複数製品チームも失望させます。

そして、最大の嘘とは? それは、デザインシステムへの準拠は優れた製品を保証する、というものです。本当に優れたアプリは、一連のルールに従っているからではなく、思慮深いデザインによって使いやすく、望ましいものになっているのです。

そう、だからMaterial 3を使用しましょう。Material 3の素晴らしいデザインシステムは、素晴らしいリソースを提供しています。それで十分ですか?Material 3は、コードの再利用性も素晴らしく、デザインとコードを一致させることは非常に役立ちます。ですが、デザインとコードを一致させるような本格的なデザインシステムをフル採用することは高価な提案であり、ほとんどの組織にとって、コスト削減だけでは採用を正当化できません。

では、なぜ私たちはスケールが必要な大規模なデザインの解決策としてデザインシステムを推進し続けるのでしょう?デザインシステムは解決策の一部であるかもしれませんが、他のツールを開発したり他のアイデアがあることを考慮する必要がないのでしょうか?

では、私達の次の挑戦は何でしょう?AIの力をどのように活用したら、必要なときに一貫性を保ちながら、真にダイナミックでインテリジェントで適応性のあるデザインを作成できるのでしょう?

私はこのミッションに挑みたいと思っています…

#designsystems #AI #designthinking #innovation #futureofdesign


翻訳以上。

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