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翻訳記事:石油タンカーを方向転換する難しさ
涼しくなったかと思えば、夏日が来たり、そうかと思えばまた秋の寒さ。気づけば来週はもう11月!今年もあと2ヶ月!😱
気になった記事を訳そう、今回は、CiscoのSr. Design Managerで漫画家のTripさんの記事。
今や様々な企業でデザインシステム作っています。日本の大企業でも導入しているところは増えていますが、Philipsの事例のような複数サービスや複数プラットフォームにまたがる共通のデザインシステムや、複数事業部を包括的に管理する仕組みを作っているところは中々聞こえてきません(あるかもしれないですが、あれば是非聞いてみたい!)
そういった組織横断的なデザインシステムを推進するには、揺るぎない信念と計画、忍耐、努力以外に何があるのだろうか?と思ってた時のCiscoの記事です。
やはりカギは運なの?😆 …っていうと身も蓋もないですが、あえて言えば、運を呼び込む努力と継続性?
継続は力なり。(継続できる組織的体力も必要)
以下、翻訳(著者許諾済み)
石油タンカーを方向転換する難しさ
3年間のデザインシステム推進役で学んだこと
By Trip Carroll
Oct 9, 2024
1979年に建造されたノック・ネイビス号は、これまでに建造された中で最大の船でした。565,000トンを運ぶことができ、長さは458m。どの港でも収容するには分厚すぎたため、沖合に停泊させ、小型の船で荷降ろしする必要がありました。
ニュートンによると、動いている物体は動き続け、満載のスーパータンカーは信じられないほどの慣性を持っています。この大きさの船を止めるには8kmもかかることがあり、方向転換には数km必要になります。
コースを変更するプロセスはゆっくりです。それは意図的なものです。誤算は、特に狭い航路や運河での運航時には、深刻な結果を招く可能性があります(スエズ運河のエバーギブン号に起こった恐ろしいことを確認してみてください)
組織は大きな船
ビジョンを描き、大規模な組織の運営方法に影響を与えようとすると、時間がかかります。たくさんの時間です。
タンカーが混乱を起こさずに突然方向を変えれないように、組織はその規模の複雑さと確立された構造のために、適応と変化は遅くなります。企業の進路を変えるには、慎重な計画、調整、忍耐が必要です。
私は、CiscoのMomentum Design Systemチームを率いており、過去3年間は専任のエンジニアリングチームへの共感を得ようと努めてきました。それは苦しい戦いでした。私の議論が聞き入れられなかったことが何度もありました。しかし、私は忍耐強く、プッシュし続け、私たちのデザインシステムがどうなるのかについての私のビジョンを伝え続けてきました。
私は、自分のフラストレーションだけでなく、大きな組織に影響を与える能力を開発するために学んだことをここで共有したいと思います。
1: すべての会話はチャンス
人は、たった今交わした会話の約50%を覚えています。1週間後、その同じ人が10%(多分)を覚えているかもしれません。大規模な組織内で変化を推進しようとしている場合、すべての会議が重要です。一つひとつのインタラクションは、私たちの未来へのビジョンを売り込むチャンスです。変化は、単独で、または単一の決断で起こることはありません。それは、私たちが主張する価値を強化する一貫したメッセージを繰り返し続けることで、一つずつ構築されていきます。
私たちのゴールは、周囲の誰もがそれを理解し、明確に表現できるように、ビジョンを明確に伝えることです。
一貫性はビジョン構築の鍵です。私たちのメッセージが強化されているのを人々が聞く頻度が高ければ高いほど、それを内面化し、私たちが目指している新しい方向性に適応し始める可能性が高くなります。
すべての人の生活を楽にするデザインシステム
Ciscoでの職務が始まった当初から、私たちが社内向け製品を構築していることを共有していました。コラボレーションビジネスグループ全体でデザイナーとエンジニアの生活を楽にするための共有ツール群です。そのため、デザイントークンや共有アセット、UIツールキットを作成し、すべての製品やプラットフォームで誰もが利用できるようにしました。
私は定期的にそのメッセージをチーム、デザインパートナー、エンジニアリング協力者に対して出し続けました。可能な限りすべての会議で、デザインシステムに対する私のビジョンとチームが構築したい価値を共有しました。
志を同じくする友人を見つけたかったのです。
2: 人々が何を必要としているのか、そしてどのように支援できるかを理解する
私たちが何をしたいのか、何を作りたいのかを話すだけでは十分ではありません。より良い世界への私たちのビジョンを投げかけようとするだけでは十分ではありません。もし私たちのビジョンを人々に受け入れてもらいたいのであれば、それがその人たちにどのような影響を与えるかを知ってもらう必要があります。私たちがしていることは、彼らにどのように役立つのでしょう?私たちは、一緒に働く人々、彼らのペインや懸念を理解する必要があります。そうすれば、そのペインを具体的に語りながら、未来へのビジョンを投げかけることができます。
パートナーシップを構築する
私がCiscoで働き始めたとき、Ciscoがサポートするさまざまなプラットフォームのエンジニアとのパートナーシップを築き始めました。当時、Webex アプリはオペレーティングシステムとモバイル デバイス(Windows、MacOS、Android、iOS、Web)にネイティブに構築されていました。プラットフォームチームは、各プラットフォーム用のUIツールキットを構築していました。私たちデザインチームは、必要に応じてネイティブコンポーネントを含む別のFigmaライブラリをサポートしていました。
私は、各ツールキットの構築をリードするエンジニアと定期的に会い、ツールキットを知り、彼らが解決しようとしている最大の問題を理解しました。デザインシステムに何を期待しているのかを聞いてみました。そして、私は何か手伝えることはないか尋ねました。
他の人のニーズを正確に表現できることは、味方を作るための非常に強力な方法です。
エンジニアリングチームがなくても、ニーズを明確にして協力者を支援するシステムを構築することができました。私たちが最初に行ったことは、hex値をハードコーディングする代わりに、誰もが揃えれるトークンシステムを作成することでした。彼らのニーズに対応することで、特にWebエンジニアとの非常に強力なパートナーシップが生まれました。
トークンシステムでの共同作業は、私たちのデザインシステムの未来についての会話につながりました。そして、私がビジネスグループのすべての製品のためのユニバーサルWeb UIツールキットを作成することについて話し始めたとき、彼らは興味を持ってくれました。
3: 大企業が大きいのには理由がある
そして、私たちの破壊的なアイデアの実装は、船を揺るがす可能性があります...大きな時です。Ciscoのような企業が大きな存在であるのには理由があり、私たちは自分たちのアイデアを信じてはいても、すでに機能しているものを破壊することは大きなリスクです。そのマイナス面は、人々の生活の喪失を意味する可能性があります。
何かをするよりも何もしない方が簡単です。ですから、人々は、特にリーダーシップは、たとえ良いアイデアを目の当たりにしても、現状維持を奨励します。
変化を起こそうとするときは常に、自分たちがどれほど破壊的であるか、その変化によってどのようなリスクを冒しているのか、そのリスクにどのように対処しているのか、そして、私たちのアイデアがどれだけの価値をもたらすのかを考える必要があります。
エンジニアリングリーダーシップへのピッチ
デザインシステムのリーダーである私にとっては、専任のエンジニアリングサポートがなかったことが問題でした。彼らのプラットフォーム用に動作するUIツールキットを構築した後、私が関係を築いていたエンジニアたちは機能開発の仕事(※日本語訳補足:通常の業務)に移りました。時々彼らと連絡を取り合うこともありましたが、デザインシステムを変更する必要があるときはいつでも、実装するのが非常に困難でした。これにより、ソフトウェア製品間の不整合、問題に対処して修正できない、複数の製品チーム間でスケーラブルなソリューションが見つからないなど、多くの問題が生じました。
たとえば、私のチームのデザイナーが、ボタンのコンポーネントの アクセシビリティ問題を修正しているとします。その変更をFigmaライブラリにドキュメント化し、その後、5つの異なるプラットフォームの5人の異なるエンジニアに連絡を取り、彼らがコンポーネントを更新するキャパがあるかを尋ねる必要がありました。
通常、彼らは対応しません。機能開発の作業が常に優先され、変更はバックログに残る場合とされない場合があります。
私たちはハンディキャップを持っていました。そのハンディキャップは機能開発の作業に影響をあたえ、作業を遅らせます。デザインシステムの更新を担当するエンジニアがいなかったため、エンジニアが更新しなければならないときはいつでも、それは苦痛な中断でした。また、コードで実装されたソリューションはスケーラブルではなく、他のチームが活用できる再利用可能な方法で構築されていませんでした。
Cisco は大規模で、成功したビジネスであるにもかかわらず、デザインシステムのサポートモデルが私たちと革新的な製品を生み出す能力に悪影響を及ぼしているのを知っていました。(その後)私はWebチームのエンジニアリングマネージャーにパートナーを見つけました。彼はスケーラブルなエンジニアリングソリューションの構築、特にデザインシステム周辺に、情熱を注いでいました。私たちは協力して、エンジニアリングリーダーシップに専任チームへの投資を売り込みました。
1年半の間に、私たちは組織全体の様々なエンジニアリングエグゼクティブと会いました。私たちは、複数の製品チームで発生している問題、一元化されたチームを持つことで節約できる費用(年間1,000万ドル以上)(※日本語約補足:約15億円以上)、そして最初に実装する具体的なプロジェクトを提示しました。しかし、同意してうなずくにもかかわらず、誰もリスクを冒したがりませんでした。物事は「うまくいっていた」。エンジニアリングのリーダーシップは、Nathan Curtisが痛烈に失敗を語っている連合型オーナーシップモデルを推し進め続けました(※日本語訳補足:リンク先は以前翻訳した記事へのリンクです)
しかし結局、数年間のピッチが何かに変わりました...
4: 皮算用はするな
どんなビジネスでも優先順位は変わります。それは普通のことです。リーダーとしての私たちの仕事は、ビジョンを描き、組織の焦点を明確にするこです。しかし、どんなに健全な組織でも、たまには方向転換が必要です。不健康でビジョンのない組織は、一度にすべてのものに火をつけ、ガソリンに浸した毛布でそれらを消すように人々に指示するのが大好きです。
私の組織はもっと健康だったかもしれません...
些細なピボット(方向転換)
私たちのデザインリーダーシップのサポートにより、私たちはついにエンジニアリングリーダーシップに投資させることができました。彼らは私に共有ツールとUIツールキットを構築するための5人のWebエンジニアを提供しました。これがドリームチームでした!私たちは、昨年すでに小さなプロジェクトで協力し、投資を受けたらどのように協力するかを夢見ていました。
ついに実現したのです!私たちは大喜びでした!
最初の1か月半、FigmaからGitHubへのデザイントークンの同期を自動化するカスタムツールを構築しました。また、アイコンライブラリの変更をFigmaからGitHubにプッシュし、製品チームが消費できるようにNPMパッケージを公開できるカスタムプラグインも構築しました。
魔法を作りました!素晴らしい仕事でした。そして、それは信じられないほどの速さでした!!!
そして、爆弾が落ちました。
エンジニアリングリーダーシップは、リソースをピボットしました。全員が助ける共有ツールの構築だけでは十分な価値がありませんでした。彼らは、WebexのWebバージョンと同等の機能開発をする必要がありました。
私のチームは引き離され、私たちの仕事の優先順位が下がりました。私は押しつぶされました。
5: 時には運がいいこともある
計画が変更されました。予想外の、残念なことも起こります。これが仕事の現実です。計画に固執するだけでなく、障害を乗り越え、前進し続けるための根性が必要です。困難を乗り越えるには、決意、創造的な問題解決、そして他の人を鼓舞して忍耐強くなる能力が必要です。
そして、時には運がよいこともあります...
無私の贈り物
エンジニアリングチームがいなく、私たちは立ち往生しました。私たちは、デザインシステムのデザインを明確にし、リクエストに対応し、トークンとアイコンライブラリを維持し続けました。しかし、エンジニアなしでは何も実現できませんでした。
Ciscoのコラボレーションビジネスグループには30+の製品があります。私たちのデザインシステムを使用しているものは片手で数えることができます。残りは5年前のMomentumのブランチから構築されているか、独自のシステムをつなぎ合わせているか、またはまったくシステムを持っていません。
私は、これらの製品すべてのデザインリーダーと毎月定期会議を行っています。その会議で、彼らがどのような問題に取り組んでいるのか、私たちのデザインシステムチームがどのように役立つのかを尋ねます。
そのリーダーたちの一人、Cherlyは私の夢を叶えてくれました。彼女は自分の製品をMomentumに実装する必要があり、私が何を作りたいのかを知っていました(なぜなら、私は自分のビジョンとそれが彼女の組織にどのように役立つかを頻繁に伝えていたからです)。彼女の組織でいくつかのポジションが空いたとき、彼女はそれを私に譲ってくれました。
彼女はそれらをそのまま私に譲ってくれました...
それは信じられないほど無私無欲な行動でした。当時、公募は入手が困難でした。過去数年間、採用凍結が何度もありました。信じられませんでした。
私は、多くのエンジニアリングの友人の助けを借りて、採用プロセスを順にこなしていきました。また、元のWebチームのエンジニアの1人の助けを借りて、新しいエンジニアを採用することもできました。
私たちは2週間前にUIツールキットの構築を始めたばかりです。3年間にわたり取り組んできたデザインシステムの仕事が、ついに現実のものとなりました。この船を回すのに3年掛かりました。
どこに石棺するか楽しみです。
・・・
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やあ、みんな!Ciscoでデザインリーダー、そして漫画家を目指しているTrip Carrollです。
デザイン、リーダーシップ、ソフトウェア開発についての記事を隔週の月曜日に書いて公開してます。もっと僕の作品を見たかったら、Webサイトをチェックしたり、インスタで僕のイラストを見たり、Substackで僕のニュースレターを購読してね。
さぁ、仕事を楽しもう!
翻訳以上。