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新米POが立ち上げた輪読会は、孤独なPOが頑張るための拠り所だった

「どんなに1週間が忙しくても、僕にとってこの輪読会はよいプロダクトづくりに励む仲間の存在を感じます。だからこそ、輪読会は心落ち着く時間であり場所なんですよね」
「単なる本のインプット以上に、コミュニティのような安心感、そして自分への問いと向きあう貴重な機会です」

そう語るのはプロダクトオーナー(PO)2年目に突入した杉浦と、今年の5月にPOになったばかりの後藤です。PO輪読会とは、この2名が立ちあげた社内勉強会の1つで、プロダクトマネジメントに関わる書籍を月1冊のペースで輪読しています。

とても盛り上がっていると噂のPO輪読会が始まった経緯や取り組みの詳細について、発起人の2人にインタビューしてきました。

杉浦 大貴(写真左):2018年7月に中途入社。経理として従事した後に、2019年8月に京都拠点へ異動し、『マネーフォワード クラウド会計Plus』のプロダクトオーナーに転向。

後藤 佑太(写真右):2018年4月に新卒として入社。『マネーフォワード クラウド経費』のセールスを経て、20年5月から『マネーフォワード クラウド債権請求』(2021年春リリース予定)のプロダクトオーナー。

新規プロダクト開発を任されたPO1年生の後藤とPO2年生を迎えた杉浦

----後藤さんはPOになってもう少しで半年ですが、担当している『マネーフォワード クラウド債権請求』は今どういったフェーズなんですか?

後藤:来年の春頃リリースを目指し、機能要件を絞っている最中で、開発も始まっているフェーズです。デザイナーの篠原さんと二人三脚で、ベトナム拠点にいるエンジニアと日々コミュニケーションを取っています。チームのオブザーバーには、執行役員の山田さんデザイナーの猪爪さんに入ってもらいます。

----一方で杉浦さんは、POになってどれぐらいになりますか?

杉浦:POになってちょうど1年経ち、2年生になりましたね。その間に無事に『マネーフォワード クラウド会計Plus』をリリースすることができました。

PO1年生あるある「ゴールは分かったけど進め方がなにも分からない」

----この記事、取材したのが半年前ぐらいで、懐かしいですね。当時、PO1年生としてどんなことが大変だったんですか?

未経験職種へのキャリアチェンジということもあり、はじめはエンジニアが話す単語すらわからない状態でした・・・。しかし、異動した時点ですでに会計Plusの構想はあり、スピーディーな開発スケジュールが引かれていました。
引用元:マネフォ経理からプロダクトオーナーに転身し、クラウド会計Plusを開発した話(プロダクトリリース当時、2020年2月)

杉浦:どんなプロダクトを作りたいかは経理だったからこそ分かっているし、現状も分かっている。なのに完成図に向かってどうやって進めていけば良いかは「全然なにも分からない」状態でした。

当時、外部からスクラムコーチを受け入れていて、「まずはユーザーストーリーマッピングからやってみましょう」と言われても、何を言っているのかよく分からないままとにかくやっていました。インセプションデッキも何故書くのかも分からないし、決まったフォーマットに埋めていくとはいえ、「これで何が伝わるの?」と全く納得できていなかったんです。

----その状態をどうやって乗り越えたんですか?

杉浦:もうとにかく「分からない」と周囲に伝えて、分かる人を自分から捕まえて話を聞きにいったんです。別の部署にいたデザイナーさんが「プロダクトの作り方」に関する勉強会を開いていたので、すぐに捕まえて「教えてください」とお願いしました。

プロダクトづくりの最初は、ユーザーインタビューで課題を引き出して、整理することが多いんです。これってPOなりたての僕よりもデザイナーの方がとても上手くすすめられるんですよね。だからこそ当時、「自分にPOとしての介在価値がないな」と感じていました。

とはいえ、このあとPOとして仕事が多く降りかかってくるんですよ、急に。ごっちゃん(後藤)にも言っていたんですけど、たくさんの要件やアイデアを削って決断していく時期がいきなり来るので、介在価値を感じるどころか、手探りでも責務を果たさなくてはいけなくなりました。なかなかにしんどかったですね。

後藤:杉浦さんと全く同じ轍を通っていますね。(笑)POなりたての時は、ゴールとしてどんなプロダクトを作りたいかの共有を受けて、なんとなくイメージを持てていたんです。ただ、今の地点から、ゴールまでの道のりが全く見えなさすぎて、とにかく困っていました。最初はひたすらプロダクトに関する解像度を上げることに注力したんですが、それでも進め方は全く掴めず、困りに困って杉浦さんに助けを求めました。

PO輪読会のきっかけ


杉浦:もともとプライベートで交流していたごっちゃんがPOになることを知って、僕から連絡をしたんですよね。PO仲間が増えた!と思って喜んでいたんです。

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(その当時のSlack)

後藤:杉浦さんから連絡をもらったときは、僕もなりたかったPOになれたので「いえい!」って盛り上がっていましたよね。やってみるとこんなに苦労するとは思っていなくて。だからこそ一番気軽に聞ける杉浦さんをPOの「兄貴」と慕って、ずっと相談していました。

もっと長期的な観点で行くと、やっぱり経費本部の責任者の今井さんみたいになりたいです。開発とビジネスの橋渡しをするような役割のジェネラリストを目指しています。
引用元:「何かを変えたければ、負けないで続けていくこと」そう感じた、新卒1年目の僕の学び(入社1年目を振り返った2019年3月の記事より)


杉浦:本当にざっくばらんに話していたので、下手したら3時間ぐらい話していたこともあったよね。

後藤:気付いたら22時になっていて、お腹空いたから「また明日。」という日々が結構続いていた気がします。

初めはPOやスクラムについての話が多かったのですが、たくさんのことを教えてもらったおかげで徐々にPOについての理解度が深まりましたね。そしてデザイナーの篠原さんが『マネーフォワード クラウド債権請求』チームにジョインしてくれたこともあり、段々と兄貴の講義の時間は減っていきました。
代わりにお互い本好きなのも相まって、本の紹介をしてもらう時間が増えていきました。紹介された本はすぐにAmazonでポチポチするも、読めていないまま積読が溜まっていく…そこで「この本、読みたいし、せっかくなら1on1じゃなくてもう少し人数増やしてみんなで読もうか」という話が発端になりました。

杉浦:兄貴の講義…(笑)
実際、ごっちゃんには伝えられる自分の経験は伝えきったので、あとはとにかくごっちゃんが業務で実践していくフェーズかなと思っていました。

合わせて、もっと自分の経験以上のインプットを増やしていかないと、今後行き詰まるだろうなという不安があったんです。自分はこの不安を読書で補うことが多く、ごっちゃんも読書好きということで「せっかくだったら、PO向けの定番本を輪読会で読めば強制的に学べるんじゃない?」という話で盛り上がり、PO輪読会をスタートしました。

京都拠点流「Give it a Try!」で始まったPO輪読会

----いつから始まったんですか?
杉浦:6月3日に最初のesa(社内の情報共有ツール)に書き込んでいるから多分、その次の週ぐらいに始めていたよね。

PO輪読会esaキャプチャ

後藤:最初は2人だけでやる予定だったんですけど、esaを見たメンバーが集まってきて新卒2年目のメンバー3人も含めた5人でスタートしました。

僕も杉浦さんも輪読会をやったことがなかったのですが、まずはやってみて、実施しながらやり方も変えていきたいねと話していました。

杉浦:ちなみに僕がいる京都拠点のスローガンが「Give it a Try!」といって「まずやってみる」なんです。まずはやってみて、そのあと振り返りをして、次またどうするかを決めていいく。京都拠点流のやり方ではじめました。

これはスクラムにも似ている部分があって、POとしてスクラムっぽさに慣れる意味もあったかもしれないですね。

後藤:1冊読み終わったら輪読会自体の振り返りを入れているんですよね。今後どうするか、次に読む本、やり方、時間帯をどうするとかまで全部話し合って改善しています。改善の具体例としては、参加者が増えて、お子さんがいる方も参加しやすいように、夜開催だけでなく朝開催が誕生しています。

杉浦:最初から変えていない点は、たくさんの本を読みたいから定期開催、かつ、本をいつまでにちゃんと読むという〆切りだけを設定していたことですかね。

自分たちの体験や経験という「文脈」を本の内容に足していくことで「彩り」のある輪読会に


----最近盛り上がっていると噂の輪読会の、実際の様子を教えてください。

後藤:PO輪読会のすすめ方としては、課題本を各自事前に読んできて、その本に関連することなら何でもOKのKPT形式で議論・ナレッジのシェアをする形です。

単に本の内容をみんなで話すのではなく、それぞれのメンバーの体験と本の内容を紐づけて話しています。「こないだ、自分のプロダクトではこんなことがあったよ」とか、「僕はいまこれに悩んでます」など。

杉浦:例えば「POなりたてのときはユーザーストーリーマッピングでチームの共通認識を作ったよ」、「デザイナーやエンジニアとの役割分担ではこんな工夫をしているよ」とかですね。

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経理出身の僕とセールス出身のごっちゃんのように、参加しているメンバーの経歴や、担当しているプロダクトの規模、フェーズはバラエティに富んでいます。同じ内容の本を読んでいても、それぞれが持つ「文脈」が違うので出てくるコメントが本当に様々です。

後藤:例えば、僕は今まさに機能を絞り込む段階なので、「要件を捨てる、絞るのに不安があって、なかなか絞りきれない」というProblemを出してみると、このフェーズを先に経験している杉浦さんのような先人達から「捨てることでうまくいくことがあった」などの話がKeepとして出てきます。各メンバーのKPTに対するコメントやFB等も様々で、議論が盛り上がりながら、各自の体験談が聞けるので、追体験をしている気分になります。

輪読会がPO同士の共通言語を作りあげた

----そんな輪読会を運営してきて、起きた変化や良かったことはありましたか?

杉浦:一番は同じ本を読んだことで、PO同士での共通言語が出来て、以前にも増してPO同士連携がスムーズに行き始めたことですかね。

POが連携することで、『マネーフォワード クラウド』ユーザーの方に届けられる価値を最大化できると思うんです。まだ明確な成果が出たわけではないのですが、以前よりもスムーズにPO同士のMTGを含めたコミュニケーションが円滑に進んでいます。

後藤:「Aという本読んだときの●●」ですぐにお互い意思疎通ができるようになって、コミュニケーションのスピードが格段に上がりました。

コミュニティであり、自らへの問いと向き合う機会でもある輪読会

----お二人にとってPO輪読会ってどんなものですか?

後藤:兄貴、先に言っちゃってもいいですか。「息をつける場所、ホッとできる場所」ですね。重要なこと/緊急なことのマトリクスの中で、日々どうしても緊急なことに埋もれがちです。それこそ次に開発する仕様をつめなくてはいけないなど。

その中で、輪読会が入っていると、例えば「自分のキャリア、どうしよう?」とか、「POってなんで必要なんだっけ?」といった、重要だけど緊急度が低いことについて強制的にゆっくり考えられる時間が確保されます。PO輪読会は、一息ついて、重要なことをじっくり考えられる時間だと思っています。加えて、同じPOの仲間と語れる時間でもあるので気分転換にもつながりますね。

杉浦:単なる本のインプット以上に、コミュニティのような安心感、そして自分への問いと向きあう貴重な機会ですね。

1つ目は自分も仲間と分かち合える場だと思っています。
今までは1人で本読んでインプットしてやってきたものが、地方拠点かつリモートだからこそ輪読会の場で頑張っている仲間がいる安心感を余計に感じますね。

PO輪読会インタびゅー2

杉浦:POは、とにかくいろんな人とコミュニケーションを取って調整して、時には矢面に立たされて一人で全部を受け止めることがあります。そういう意味で苦労するし、大変だからこそ仲間の存在がとても心強いです。

加えて、プロダクトマネジメントって「正解がない」ことが分かったんですよね。

後藤:分からないってことが分かりましたよね。

杉浦:そうなってくると、「何故これをやりたいのか」「どうやってやるのか」みたいな自分の衝動ようなものの方が大事だなと気づいて、前に進んでいく。

この輪読会は、各自の「自分はこういう思いでやってるんだ」を聞くことで、自分自身の思いも問い直すいい機会にもなっています。

プロダクト「自分」のPOとして、どう自分をマネジメントしていくか

----最後にPO輪読会の今後の展望について教えてください。

杉浦:本を読む輪読会とは別で、月に1回企画ものを実施しようと思っています。いま、ごっちゃんと企画中なのは「POスキルマップ」です。

今までは社内外のPOの方を呼んで話してもらう回を実施していました。次は自分たちがどういう方向に進んでどんなスキルを身につけたいのか、自分たちの強み/弱みを自分たちで客観視する場を作ろうと思っているんです。

最近考えているのが、POは、自分自身っていうプロダクトをどういう方向に進めるのかもきちんとマネジメントしないといけない気がしています。

POと一口に言っても、同じPCでも中身がwindowsとmacで得意な領域が全然違うのと同じで、この話に自覚的になっておかないと、どこにも活躍できないPOになり得てしまう。

だからこそ自分なりに何を強みとして、何を売りにするPOになるのかをみんなで考える機会を作りたいと思っています。僕やごっちゃん以外にも非エンジニアのPOも社内で増えてきました。


その中で、「自分がPOとしてチームでどう価値を発揮していくか」、そして「POとして私がユーザーに提供できる価値ってなんだろう」という問いを、輪読会を通じて仲間と一緒に向き合っていきたいなと思っています。

----ありがとうございました!!!

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Jun Osaki
本やマンガ、他クリエイターのサポートなどコンテンツ費用に当てるつもりです。感想はnoteに上げていきたいな。