【人間観察】バス停にて
先日、あるバス停でのこと。
駆け足3分で、バスに乗り継げる電車が到着5分遅れで、予定していたバスに乗り損ねた。次のバスが来るまで20分近くもある。<やまのぼ>は、元来、どんなケースでも、列に並んで待つのが苦手な人間である。
運の悪さに、「チェッ!」と、久しぶりに舌打ちしてしまった。
ところで、そのバス停には、三人掛けの椅子が五脚ある。その先頭の椅子の端には、すでに先客のご婦人が腰掛けていた。<やまのぼ>は、ソーシャルディスタンスを遵守し、一人分空け反対の端に腰掛ることにした。
そうこうしている間に、残りの四脚もすぐに満杯になり、立って待つ人の列までできた。日本人は真面目な人が多い。五脚とも、ソーシャルディスタンスが守らているではないか。
そんな風景に酔っていたとき、事件が起きた。
年の頃なら30歳前後の男性が、バス停の時刻表を確認しに現れたのだ。その男性は、スマホ片手に次のバスの到着時刻を確認し終えたかと思うと、なんと、<やまのぼ>が堅持したソーシャルディスタンスを無視し、三人掛けの中央に腰掛けたのだ。
はじめは、『スマホに熱中するあまり、列の存在がわからないのだろうか?』とか、『自己中な人だなぁ~!』とか、『注意しようか!』とか、<やまのぼ>の心は、騒めき出した。
でも、思いとどまった。
最近、巷では殺伐な死傷事件が起きている。口論の末、グサリと刺されては困る。人相や恰好はごく普通ではあるが、むしろ、そんな人ほど危険だ!とは、最近改めて学習し直したところだ。
<やまのぼ>は、目を瞑る策にでた。
文字通り瞼を閉じて、一切合切を忘れることにした。以前の<やまのぼ>なら、後続の列の人のために、正義感を燃やし、「列の後ろに並んでください!」って、注意していたかも知れない。
でも、こんなシーンは無視することが、一番いいチョイスだ!
そんな<やまのぼ>の心の葛藤をよそに、幸運にも、次のバスが到着した。
すると、自己中のスマホ男は、われわれと一緒にスタンダップしたかと思うと、スタスタと、列の最後部へ歩き出したではないか。
自己中のスマホ男さま!あまり年老いた心を、弄ばないでくださいよ