【日記公開】眼鏡はどこだ!
「ワタシのメガネ知らない?」と、カミさん。
「頭の上にあるのは何だい?」やまのぼは、質問に対して、意地悪く質問で応える。
カミさんは自分の頭の上を手探りして、自分の頭上にかけ忘れていた老眼鏡に気づき、笑ってごまかした。
やまのぼは、「大丈夫かい?」って、カミさんに言いつつ、『カミさんも、そろそろ認知症?』って疑ったのは、つい最近のことだ。
そして、今夜のこと。
やまのぼは、読みかけた本をひらき『さて!』と、老眼鏡をかけようとして、愕然とした。なんと!すでに眼鏡をかけていたのだ。
今夜は、自分自身に『大丈夫かい?』って、突っ込みを入れてしまった。
ところで、カミさんの頭上で発見された眼鏡には、特別な思い入れがあるらしい。度重なる紛失にもかかわらず、見つかり続けているからだ。
雨の日、車で訪れたコンビニの駐車場で、劇的な再会をしたこともあった。コンビニをあとにして、しばらく走ったあと眼鏡のないことに気づき、引き返したら、その駐車場の車止めのところに、転がっていた。
すんでのところで、車の下敷きになっていたところだった。
ある時は、引き返した山道の柳の木の下で、ある時は、あるカウンターで、ある時は、ホームのベンチで再会しているそうだ。
そういえば、どこだ!どこだ!と騒いだあげく、眼鏡のハードケースから、見つかった時もあった。
「ワタシ!この眼鏡と縁があるんだワッ!目に見えない絆で結ばれているんだワッ!」と、大切にしている。
ところで、大学祭での初対面で、ビビッ!と来た!カミさんとの衝撃的な出逢いは、すでに半世紀前の事件だ。
あの時、確かに見えた「赤い糸」は、どこへいったのだろう?
わが夫婦の絆は、ある時はもつれ、解く努力も忘れ、切ってしまおうとした時も幾度かあった。でも、あの時はまだ「赤い糸」が、ぼんやりとでも、見えていたということになる。
でもいまは、まったく見えなくなった。
多分、カミさんの縁も、絆もある、大切な老眼鏡をかけてみても、見えないんだろう。
かといって、あの「赤い糸」は、どこへいったの?って、カミさんに聞く勇気は、やまのぼにはない。
「とても簡単なことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」とは、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(著)『星の王子さま』の有名な一節で、やまのぼの座右の銘のひとつだ。