ストーブリーグ開幕!FA(フリーエージェント)についておさらいしよう!
各選手の年俸や移籍について球団との熱い交渉が行われることから名前がつけられた、第二のペナントレースと言っても過言ではない「ストーブリーグ」が、本格的に始まりました。
今回は、その中でも目玉であるFA(フリーエージェント)についておさらいしていきましょう。
FA(フリーエージェント)とは?
まずは、FAとはなんなのかについて。FAとはフリーエージェントの略語であり、自由契約選手のことを指します。
自由契約選手というと、その球団から戦力として見られなくなった戦力外選手や構想外選手を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、それとはまた毛色が違っています。その辺りの違いについてはまた後日出そうと思っています。
話を戻すと、FAが指す自由契約選手とは、一定日数一軍に帯同し続けた選手が、他の球団と自由に契約の交渉ができる選手のことを言います。
FAの権利、通称FA権を取得した選手は、任意でこの権利を行使することができます。この権利を行使することで全球団と交渉する権利が与えられ、金額面やオプション面、地元に近いなどより魅力的に感じた球団に移籍、または元の球団に残留という道を選ぶことができるんですね。
FA権を手に入れたということは、それだけ一軍の戦力として長く貢献してきたことを示すものなので、それだけでもプロ野球選手のかなり上位層に位置することになります。
FA権獲得の条件は?
では、FA権を取得するための条件を見ていきましょう。FA権にはそもそも国内FA権と海外FA権というものが存在し、双方で条件は異なっていますが、まずは国内FA権から。
国内FA権
続いて海外FA権。
海外FA権
となっています。ただし、シーズンの数え方については両方に共通したルールがあります。
シーズンの数え方について
こうしてみると、FA権って意外と取得するまでに年数がかかるんですね。高卒の選手だと国内FA権を最短で取得しても25〜26歳、大卒選手でも29〜30歳くらいになっています。
調べたところ、FA権の平均取得年数は約11年となっていたので、高卒選手でも30歳になっていますね。
FAのメリット
では、取得するのにこれだけ長い年数をかけなければならないFAのメリットとはなんなのでしょうか。ここでは、国内FAのメリットを考えます。メリットとして挙げられるのは主に4つ。
①自分の地元に近い球団や、優勝を狙えるほど強いチームに移籍するチャンスが生まれる
②複数年契約を結べば、しばらく安泰なプロ野球人生を歩むことができる
③FA権を行使することで、元の所属先の球団との年俸交渉で自分が優位に立てる
④他球団の評価を聞くことで、球界での自分の立ち位置、本当の価値が分かる
まず①について。これがFA権を行使するのに最も多い理由だと思われます。FA権を行使すると他球団との交渉の権利が得られるため、相手との合意されあれば理論上12球団どこでも行けることになります。そうすると、やはり選手もお金がいっぱいもらえる球団や、生まれ育った地元の球団や、戦力の整っている強い球団に移籍したくなります。なので、より自分を高みにもっていくためにFA権を使う選手は多いです。
続いて②。選手は契約をする際、球団から長期戦力として期待されていない限り、基本的には単年契約という1年ごとに契約金を交渉するシステムを取りますが、FAで移籍してきた選手や、逆に球団にとってFAで出ていってほしくない選手は複数年契約というシステムを取ります。新聞やニュースで見る「〜〜選手、○年○億で◻︎◻︎と契約合意」というのは、この複数年契約を指しています。
例えば4年20億なら「4年間で総額20億円をもらえる」という契約内容となるので、最低でも4年間は自身の身が保証されている状態になります。野球は1年1年が勝負のスポーツなので、誰しもが少しでも安泰に過ごしたいですよね。
ここでの注意として、FAで移籍した選手の移籍後初年度のみの年俸上限は昨季の年俸というルールがありますが、2年目からの年俸は自由なので、このルールは頭の片隅に置いていただければいいと思います。
そして③。ほとんどのケースでは、どの球団もFA権を行使した自分のチームの選手には残留してもらいたいという気持ちが強くなります。そうすると、残留してもらうために手っ取り早く出来ることは、年俸のアップ。契約金が物足りないと考える選手は移籍する気が無くともあえてこの権利を行使することで、球団側に年俸を吊り上げさせることもできるんですね。
ただし、やり過ぎると最終的には見放されてしまうので、オークションのような心理ゲームだと捉えていただければいいと思います。
最後に④。1つの球団とずっと契約していると、なかなか他の球団の首脳陣や幹部の声が入ってきません。FA権を行使することで他球団と交渉すること自体は自由なので、話を聞きにいくだけでも、自分が他球団にとってどれだけ必要とされているかが分かります。よく選手が行使する際に発言する「他球団の評価を聞いてみたい」というセリフは、こういう意味も含まれているでしょう。
FAのデメリット
すると逆に、FAのデメリットとはなんなのでしょうか。ここまで聞くといい制度のようにも聞こえますが、やはりいい事には悪いこともつきものですよね。主に挙げられるのは2つ。
①FA権を取得するまでにチーム内で相当のポジション(スタメンの常連など)を築いておかないと、交渉ではむしろ不利に働く可能性がある
②名目上は"自由契約"なので、下手をすれば来季はプロ野球選手でなくなるかもしれない
まず①についてですが、これは当たり前といえば当たり前のことかもしれません。FA権は出場選手登録さえされていればいいので、一軍の試合自体に出ていなくても理論上は取得することができます。今季の例で言えば、巨人・中山礼都選手は78試合の出場を果たしたものの、一軍にフル帯同していたため、出場選手登録日数で言えばさらに多くなります。
そのためスタメンでなくとも、ベンチの切り札的存在の選手でも行使することはできますが、他球団から必要とされていなければ行使しても他球団移籍で年俸が下がるケースもあります。
そして、デメリットというよりもリスクなのが②。FAというのは、冒頭にも書いた通り「自由契約」を意味する言葉です。そのため、行使してから他球団(もしくは自球団)と契約し直すまでは、一度どことも契約していない状態が続きます。すると、最悪なケースが、自分の球団からは残留を断られ、他球団とも契約ができなかったという事です。そうすると、戦力外選手と同じ扱いになるので、下手をすれば引退を余儀なくされてしまうんですね。
実際にそうなりかけた例があったのは、元広島・木村昇吾選手。木村選手は2015年シーズンオフ、守備要員からの脱却を目的にFA権を行使しましたが、35歳という高齢などの要因が重なり、他球団との交渉はままならなくなります。元いた広島からの慰留を断った上で宣言をしているのでもう戻ることもできず、移籍ができないという状況がよく年の春季キャンプ開始直後まで続きました。この状況を当時の野球ファンの間では「セルフ戦力外」と呼んでいました。
結果的に西武で、FA選手史上初となる入団テストを受けて入団という事になりましたが、同年に戦力外通告を受けると、育成で再契約という散々な1年を送りました。木村選手はその後2017年にプロ野球を引退すると、翌18年にはプロクリケット選手へ転向。同年3月には日本代表にも選出されたそうです。
FAのランクと人的補償
最後に、FAのランクと人的補償についてお話しさせていただきます。FA権を行使する際、その行使した選手には「ランク」というものが与えられます。簡単に言うと、年俸が高いか低いかです。
前年度までに球団と契約していた年俸の順位によって、選手は「Aランク」、「Bランク」、「Cランク」と言う風に割り振られます。具体的には、年俸の高さがチームの中で3番目以内であれば「Aランク」、年俸の高さが4位から10位までなら「Bランク」、年俸の高さが11位以下なら「Cランク」という具合ですね。
その中でも重要なのが「Aランク」と「Bランク」。この2ランクには、人的補償制度という、移籍先のチームから選手を1人連れてくることができるシステムが適用されます。もちろん一軍の強い選手を引き抜かれるわけにはいかないので、「プロテクト」と呼ばれる、移籍先の球団が「この選手はやめてくれ」という選手を明記したリストを渡した上で補償が行われます。
最近で言うと、元DeNA・梶谷隆幸選手が巨人に移籍した際、Bランクだったため、DeNAは元巨人・田中俊太選手を人的補償として指名しました。
もちろんこれは人的補償となる選手を獲得せず、高い補償金だけを受け取ることもできますが、やはり数的不利になるので個人的には積極的に活用していくべきシステムだと思っています。
まとめ
というわけで、今回はFAについておさらいしました。要点をまとめると、
・FA権は、選手が他球団と自由に契約交渉をできる権利。
・国内FAでも、海外FAでも、入団からかなりの年数を要するところが特徴。
・FA権を行使すると自分の生活がより豊かになる可能性も高いが、プロ野球を馘になる可能性も0ではない。
・FA選手はランクごとに分けられ、ランクによってはより高い補償金や人的補償制度を使用することができる
という感じでしょうか。いつかポスティングや戦力外など、ポストシーズン関係のワードについても触れていくので、よければまたお読みください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
出典・画像引用元
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?