プロ野球によく起こる怪我について解説〜半月板損傷〜
今シーズンの試合の無い日などに更新する「プロ野球によく起こる怪我について解説」シリーズ。
様々な怪我の名前の指す部位や完治までの期間を調べ、選手の怪我についての記事が出た時に名前だけですぐ分かるような記事作りが出来ればと思っています。
第三回は、投手にも野手にも起こりうる怪我である、半月板損傷について解説します。
半月板とは?
半月板とは、両膝の関節部分にある軟骨組織のことで、1つの膝の中でも「内側半月板」と「外側半月板」の2つに分かれています。
半月板の周りには以前に解説した内側側副靱帯や十字靭帯が存在しており、スポーツにおいてはとても重要な部位が半月板の周りに集まっているためこの半月板も文句無しに重要な部位となります。
実際に、半月板には膝関節にかかる体重を分散させたり、関節の位置を安定させる役割を持っており、無ければ楽に歩けなくなってしまいます。
なぜ半月板を損傷してしまうのか?
では、なぜそんな半月板を損傷してしまうことがあるのでしょうか。
加齢による変性
1つは、加齢によって半月板が少しずつ傷ついていくからです。たとえスポーツなどをしていたわけではなくとも、椅子からの立ち上がりや歩行など日々の生活の中で半月板は劣化していきます。
老後になってから階段を辛くなるのは、もしかしたらこの半月板が少しずつすり減ってきているからなのかもしれません。
スポーツ時の膝の急激な捻れ
プロ野球選手にも多い原因がこれになります。特に野球では守備の時にジャンプをしたり方向転換をする機会が多いですが、その際に膝が急激に捩れることで半月板を損傷してしまうことがあります。
さらに、こういう場合に怖いのは損傷したのが半月板だけではないことが多いこと。先ほどの写真の通り、半月板の周りには十字靭帯や側副靱帯など大腿骨と脛骨をつなぐ靭帯が複数本通っているのですが、半月板を損傷した場合はそれに加えて前十字靭帯・内側側副靱帯も損傷していることが多くなります。
半月板の損傷は復帰までに長い期間を要する大怪我の1つであることが知られていますが、その理由は合併症のようなものを発症するからなんですね。
発症したらどうなる?
主な症状
①痛み
損傷時は痛みを伴うことが多く、膝を曲げ伸ばしした時や歩いた時に痛くなります。
②腫れ
損傷後に膝の関節内に水が溜まることで、腫れていきます。
③異音
半月板を損傷した場合、膝を曲げ伸ばしした時に「ゴキッ」という明らかな異音が鳴ることがあります。
④ロッキング
半月板を断裂した場合、それが関節に挟まってしまい、激痛を伴って膝が全く動かなくなる「ロッキング」という状況に陥る場合があります。
治療の方法と完治までの期間
①保存療法
損傷の程度が軽かったり、損傷した部位に血流がある場合にはこの方法が選択されます。
関節に溜まった水を注射で抜いたり、炎症をステロイドで抑えたりなど、半月板を直接治癒するのではなく関節を動かしやすくするためにこの療法を取ります。
②半月板縫合術
損傷し、裂けてしまった半月板を手術によって縫い合わせることで修復する手術です。ただ、修復には血液が必要なため、血流が豊富な部分の縫合しかできないという難点があります。
ただ、半月板をそのまま残すことができるので、後述する切除術よりも関節変形を起こすことなくプレーに復帰できます。
この縫合術を選択した場合、関節の可動域の制限を解除するなどし、スポーツに復帰できるのはおよそ6ヶ月後。ただ、これは他の靭帯を併せて損傷していない場合に限るため、さらに長くかかるケースもあります。
③半月板切除術
損傷した半月板を手術によって切除してしまい、形を整えます。
縫合術でも回復が見込めない場合はこの切除術となりますが、スポーツ復帰が早くなるというメリットがある分後々の関節変形などのリスクが高まるというデメリットも併せ持っています。
切除術を選択した場合、術後1〜2ヶ月後からリハビリを開始し、競技に復帰できるのはおよそ3ヶ月後。ただし、これも損傷したのが半月板だけだった時に限ります。
まとめ
半月板損傷は野球においては投手・野手のどちらにも起こりうる怪我であり、直近ではロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウト選手が半月板損傷による手術を決断したことが話題となりました。
一度損傷すると走力に大きな影響が与えられ、怪我の程度によってはそのまま現役引退も余儀なくされてしまうこの半月板損傷。こういう大怪我を未然に防ぐことは難しいですが、どんどん減っていくと嬉しいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。